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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
3章 エルドリア王国
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70話 研究所所長からの呼び出し

「えっ……古代文明研究所から?」

「正確に言うなら魔法研究所だが、例の魔導具の解析で少し意見が聞きたいとの事だ」


 休暇明け、しばらくしてユリウスから言われたのは、ガルディア連合国で回収した洗脳の魔導具について国が解析を依頼していた、研究所からの要請だった。


「って言ってもさ、俺ら専門家じゃないし何も役に立たなそうだけど……」

「俺もそう言って断ったんだがな……これがさっき届いた」

 ユリウスは向かいに座るリュカに紙を渡した。リュカはそれを手に取って中身を確認する。


『ユリウス君のパーティへ

 どうもー。その節はダンジョン調査に協力ありがとう。

 あれからセラフィナ君はどうなったかな?精霊魔法仲間として何も音沙汰無くて気になっているよ。

 それと国が持ってきた魔導具、あれを見つけた君たちに色々聞きたい事があるから、魔法研究所までみんなで来て欲しい。

 まぁお茶ぐらいは出せるからよろしくー。

 後、リュカ君には僕の研究に協力もお願い出来たらいいけど。

 その辺もグスタフ君を通して指名依頼を出しておくから。ではまた。

 古代文明研究所所長 リシェル・アスラエル』 


 なんとなくふざけたような文章に、読み終わったリュカは複雑な気持ちになり、眉間に皺を寄せていた。

「……そういや、研究に協力して欲しい、みたいな事言ってたな……」

「そっちの協力はしなくてもいいと思うぞ。洗脳の魔導具については、あの時分かった事は全て報告してあるんだがなぁ……」 

「どうする?って言ってもギルドに指名依頼出されたら行くしかないかぁ……」

 気の進まない指名依頼になりそうだと、二人は揃ってため息をついた。



 昼過ぎにギルド前で待ち合わせていたセラフィナとライラにも同じ話をすると、二人とも揃って眉間に皺を寄せた。

「研究所かぁ……畑違い過ぎて行きたくないわね……」

「精霊の話は良いけど、協力とかちょっと怖い……」

「だよなぁ……何させられるか分からんのが余計嫌だ」

「それについてはギルドで説明を受けてから考えるか……」

「まぁそうね。まだ指名依頼は来てないだろうし、今は他の依頼受けましょ」

「そうだな。行こうか」

 四人は揃ってギルド内に足を踏み入れた。


――――――――


「皆さんにまた指名依頼が届いてます」


 掲示板に向かう前にマイアに呼び止められ、そう告げられた四人は揃って肩を落とした。

 応接室に案内され説明されたのは、やはりリシェルからの依頼だった。可能ならば今すぐにでも来て欲しいとの事。

「何をそんなに急いているんだ?」

「分かりませんがこちら、所長自ら足を運んで依頼を出されたんです。研究所からの依頼はいつも代理の方がいらっしゃるんですけど……」

「ふむ……あれに関してあまり関わる人物を増やしたくないように感じるな」

「まぁ危険な物だしそれは仕方ないだろ」

「そうよね……行くだけ行ってみる?もし変な協力させられそうになったら引っ張って連れて帰るわよ?」

「そうしてくれ」

 四人はギルドを出ると、そのまま古代文明研究所へと向かった。


 

 研究所へ着くと既に話が通っていたようで、直ぐに所長室へと案内された。

 案内係だった研究員は送り届けるだけでそのまま去っていく。

 少し戸惑ったような顔をしたユリウスは、そのまま所長室の扉を叩いた。

「指名依頼を受けてきた。所ちょ」

 そこまで言うと扉が中から勢いよく開き、目の下に濃い隈を作ったリシェルが出てきた。


「よく来てくれたね!さぁ、入って入って!!」


 妙に高いテンションで中へ促され恐る恐る中へ入ると、そこにいたのは来客用ソファに座り、肘掛けにもたれながらビーカーに入ったお茶を飲んでるレンティスだった。

「お、ユリウス以外は久しぶりだねぇ、元気だった?あれから半月ぐらい?」

「え……なんでレンティス兄さんが?」

「そりゃ仕事だよ。あの魔導具ここに運んだの僕だから」

 まぁ座りなよ、とレンティスに促され、四人もそれぞれソファに腰掛けた。

「今彼と有意義な魔導具談議をしていたところなんだよ。グランスロット家の兄弟は皆優秀で僕の研究も進みそうだ。グレイスロウは当分安泰だね」

 ビーカーに入れた人数分のお茶を配りながら、寝不足なのか少し血走った目でそう言ったリシェルもソファへと座った。

 

「いや本当はセリオン君にも来て欲しいぐらいなんだけどね流石に領主代理を呼びつける訳にはいかないからさぁでもレンティス君も博識だねぇもう話してると煮詰まってた研究の改善点が色々見えてきて今すぐ」 

「あー、止まってリシェルさん。ユリウス達来たんで」

 

 苦笑いを浮かべ、リシェルに向かって手のひらを向けたレンティスを見て、止まらなかったリシェルの言葉がピタッと止まる。

「あぁ、ごめんごめん。楽しくなっちゃってついね」

「うん、話終わったら一旦寝ましょうね」



 ソファに座り直し、ビーカーに入ったお茶を一口飲んだリシェルが息をつき、改めて口を開いた。

 

「早くに来てくれてありがとう。早速だがあの魔導具について、手に入れた経緯から君たちが関わった全てを話して欲しい」

 

「内容は報告書と変わらないがいいだろうか?」

「うん。それで構わないよ」

 そう言われ、ユリウスが魔導具を発見に至るまでのガルディア連合国であった出来事について話していく。

 ライラやリュカも時々口を挟み、ファイフに魔導具を手渡した所で話は終わった。

 

「俺達が魔導具に関与していたのはここまでで、他に話せる事はないぞ?」

 

「いや、収穫はあった。この魔導具は()()で研究員の男が作った物だと言うことだったね。報告書には『アストレアの研究員の男から渡された』としか書かれていない」


「……心当たりが?」

 レンティスが腕を組んでリシェルに聞いた。


「……ちょっと待っててくれるかい?」

 リシェルは所長室机に向かうと、引き出しから冊子を取り出した。そして来客用の机に置くと、それを開いていく。


「……姿絵?にしては鮮明だな。魔導具か?」

 ユリウスが中を見て感嘆の声を上げた。


「うん。これはね、『写真』と言うんだ。紙にそのままの姿を映し出す魔導具なんだよ。今は写す方の紙が無くなっちゃって絶賛ホコリ被り中だけど」


 中に綴られていたのは研究員が集合した姿を写したものだった。

 それが何枚もあり、捲る度に少しづつリシェル以外の研究員が歳を重ねているのが分かった。


「洗脳の魔導具と聞いてもしかしたら…と思っていたんだけど、君たちに話を聞いて確信したよ。……あ、あった」

 リシェルは一枚の写真の中の人物を指差した。


「赤茶色のボサボサの髪の毛で、黒い瞳の眼鏡をかけている痩せ型の男性研究員。おそらく彼があの魔導具を作った人物だ」


 指差した先の写真には、赤茶色の髪で黒い瞳の若い研究員が写っていた。笑顔ではなく少し仏頂面で、髪はボサボサではなく後ろにオールバックで流しているものの、特徴は一致している。


「これはちゃんとしてる時の写真だけど、普段はボサボサ頭そのままだったんだ」


「……この人、ここの研究員なんですか?」

「……“元”……ね。二十五年前に突然姿を消したんだよ」

「そんなに前に!?」

 リシェルは小さく頷くと写真から手を離し、視線を落とした。

 

「彼の名前は『イグニス・デザスター』とても優秀な研究員で、闇魔法の使い手だった男だ」

久しぶりの登場、リシェル所長(19話、20話振り)

イグニスはただの研究員なのかそれとも……?


そして何処にでも馴染んでるレンティスお兄ちゃん。

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