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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
3章 エルドリア王国
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68話 証

デート回の続き。

 真っ赤になってしまったセラフィナを見て、リュカは笑みを深めると、セラフィナの髪を一撫でした。

「……無防備過ぎて心配になるな」

「えっ……?」

「……触れるの、嫌だったらちゃんと言ってな?」

 セラフィナは目を丸くしてリュカを見る。

 

「セラフィナが嫌がる事はしたくないから」


 リュカはセラフィナの髪をひと房摘んで指先で遊ばせていた。その手にそっと、セラフィナは頬を寄せる。


「……リュカにされて、嫌な事なんてないよ?」


 セラフィナが真っ直ぐ目を見てそう言うと、ぐっと息を詰まらせたリュカは天井を見上げ、大きく深呼吸をした。

「本当に無防備すぎる……」

 そう呟くと、リュカは隣に座るセラフィナの肩をそっと抱き寄せる。


「……俺、今全然余裕なんて無いから、あんまり煽るような事言わないで……」


 抱き寄せられたリュカの体温に少し安心するセラフィナだったが、胸元から響く彼の鼓動が異様に早い事に気づいた。

「……外だし、これでも頑張って抑えてる方だからな?」

「うん……」

「本当に分かってる?」

「分かってる……」

「はー……セラフィナがたくさん笑ってくれるのは嬉しいけど、心配事も増えたな……ライラ(保護者)にも言っとかないと」

「……どういう事?」

 

「……セラフィナが可愛すぎて困るって事」


 リュカはそう言うと抱き寄せたセラフィナの髪に口付けを落とした。

 

 店を出ると、二人は自然と手を繋いで歩き始める。

 広場に並ぶ露天商を覗いたり、屋台で甘味を買い、食べながら笑いあった。

 ふと、ある露天商の前でセラフィナの足が止まる。

「どうした?」

「……ルビーとラピスがアレの前で動かないの」

 視線を移すと、そこは銀細工の露天商があった。ネックレスやバンクル、指輪、髪飾り、ブレスレットにピアスやイヤリング、更にはカラトリーも置いてある店のようだ。 

「…そういやキラキラしたもん好きな精霊だったな」

「そうだけど、どうしたんだろ…」

 二人は店に近づき、覗いてみる。

「いらっしゃい。うちは結構良い品揃ってるよー。ゆっくり見てってね」

 商人の女性が二人を見てにっこり笑う。

 リュカは装飾品については全く分からないが、細かい細工や美しい意匠が彫られ、小さな宝石が付いている物もあったりと、とても良い品だということは分かった。隣を見ると、セラフィナは真剣な表情で銀細工を眺めていた。

「何か気になる物ある?」

「……これ?」

 セラフィナが指さしたのは、細身の対になっているバンクルだった。

 それには蔦の意匠が彫られ、それになる果実のように小さな宝石が何個か埋め込まれていて、とても美しいバンクルだった。

 

「お、彼女、お目が高いね!それ、すごく人気があるんだよ。対になってるから夫婦や恋人同士でそれぞれ持つやつでね。『あなたのもとに帰ります』って意味が込められてるから、冒険者や兵士がこぞって買ってってくれるのさー」

 

 セラフィナは、ルビーとラピスラズリが前足でタシタシと、このバンクルを叩いていたから指さしただけだったので、少し気まずくなってしまう。

 

「あ、じゃあこれください」


 後ろからリュカがそう言って手に取ると、サッとバンクルを購入した。

「まいどー」

「えっ……!?」

 セラフィナが驚いている間に買い終わっており、リュカはセラフィナの手を取ってその場を後にする。

 

 二人は広場のベンチに座り、リュカはさっき購入したバンクルの、華奢だけど宝石が多く付いているバンクルをセラフィナの腕にはめた。そして対のシンプルなバンクルを自分の腕にはめる。

「えっ……リュカ、これ……」

 セラフィナは腕にはめられたバンクルとリュカを忙しなく見ていた。

 

「……俺のワガママだけど、これはセラフィナに貰って欲しい」

 セラフィナの手を取ったまま、リュカは真っ直ぐセラフィナを見た。

 

「……俺の居場所はここ(グレイスロウ)で、帰る場所はセラフィナの所だって、証として」


 その言葉に、セラフィナは目を丸くした。

 

「邪魔だったら外しててもいい。でも、持ってて欲しいんだ」

 

「……邪魔なんかじゃないよ。嬉しい……大事にする」

 セラフィナは優しく微笑んで、嬉しそうにバンクルを撫でる。


 その様子を見て、リュカは大きく安堵のため息をつき、ベンチにもたれかかった。

「良かった……ちょっと重いかなって思ったんだけど……」

「ううん、嬉しい。リュカが、ここにいてくれるっていう気持ちだもんね」

「……まぁそうだな。……あ、後、これも良かったら貰って」

 そう言うと、リュカは小さな紙袋をセラフィナに手渡した。

 

 開けてみると、さっきの銀細工のお店にあった髪留めだった。ジャスミンの花をそのまま髪留めにしたような精巧な造りで、シンプルだけれどとても可愛らしい物だった。

「えーっと……こっちはセラフィナに似合いそうだなって……休みの日とか、なんでも、使えるかなって……俺、あんまり装飾品とか詳しく無くて…」

「貰っても良いの……?」

「もちろん。そのために買ったし、貰ってくれるなら嬉しい」

「ありがとう……!すごく可愛い!」

 頬を染め、嬉しそうに笑うと、セラフィナは早速髪留めをこめかみ辺りにつけた。

 

「……リュカには貰ってばっかりだね。これも大事にする。ありがとう」


「うん。喜んでくれて俺も嬉しい。……そろそろ暗くなってきたな。家まで送る」


 辺りを見ると夕暮れ時になっており、街の灯りが灯り始めていた。

 リュカはセラフィナの手を取ると、指を絡めて手を緩く握った。

 セラフィナの指先がリュカの手を軽く握りかえしたのを感じ、彼女の手を包み込むように握り直した。

 そのまま、セラフィナの家までポツポツと話をしながら歩き、彼女の部屋の前まで手は離れなかった。


「今日は色々ありがとう。たくさん、嬉しかったよ」

「こちらこそ。呼んでくれて嬉しかった」

 リュカは髪留めをつけたセラフィナの髪にそっと手を添えた。

「また、一緒に出かけような。……これ、似合ってて良かった」

 そう言うと、セラフィナの額に口付けを落とした。

「……じゃあまた、ギルドで」

「うん……あ…の…」

「ん?」

 

 消え入りそうな声に、少し屈んでセラフィナに顔を寄せたリュカの頬に、セラフィナが軽く口付けをした。


 予想外の出来事にリュカは目を丸くして固まってしまう。

 

「き…今日、楽しかった……!ありがとう!おやすみなさい!」

 

 顔を真っ赤にして、セラフィナは慌てて部屋の中に入って扉を閉めた。

 残されたリュカは処理が追いつかず、真っ赤になってその場にしゃがみ込んでしまい、頭を抱えることになってしまった。

 

「…は?…それ反則だろ……何あれ……ヤバくない……?」


 しばらく呻いて、よろよろとその場を後にした。

重ためな想いを込めたプレゼント。

だけど最後全部持っていったのはセラフィナでした。


しかしMVPはルビーとラピスです。


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