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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
3章 エルドリア王国
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67話 セラフィナと精霊

3章始まります!

まずはセラフィナ視点寄りからのスタート。

 ガルディア連合国からグレイスロウにようやく帰ってきた四人は、一週間休暇を取ろうということになった。


 セラフィナも、ガルディアに行ってからは怒涛の展開で、随分と気を張って、更に疲れが溜まっていたようだった。

 初日は泥のように眠り、起きたら既に夕方近くなっていた。重い身体を動かして何とか軽くご飯を食べ、またベッドに潜り込んでは眠りについた。

 

 二日目、昼前に目覚めると、ゆっくりとベッドから降り、放ったらかしにしていた旅の荷物の整理。夜には久しぶりに湯船にお湯を張って浸かり、身体を解してから、またベッドへ潜り込む。

 

 三日目の朝、頬に触れるモフっとした感触で目が覚めた。

 うっすら目を開けると、青い綿毛のような精霊、ラピスラズリがセラフィナの顔に張り付いていたようだった。

「……どうしたの?ラピス」

 セラフィナは顔からラピスラズリを剥がすと起き上がり、手に当たる綿毛の感触を楽しんでいた。

 触れるようになってからは、朝や寝る前にこうして精霊を撫でて話しをする事が増えた。

 そういえばここ二、三日、こうしてゆっくり撫でてやれて無かったかもしれないなと、指先で綿毛を撫でる。

 

 すると、何かを訴えるようにセラフィナの手の上でぴょんぴょん跳ねる綿毛の精霊を見て首を傾げる。

「……あ、魔力、とか?」

 そう言うと、セラフィナの手に擦り寄ったラピスラズリに、セラフィナは優しく微笑むと、水魔法で小さな球体を作る。

 ラピスラズリはそれに勢いよく飛びつくと、ふわっと風が巻き起こり、一瞬セラフィナは視界を奪われた。


「えっ!!?……ラピス?」


 目を開けると、セラフィナの膝の上に、ラピスラズリの色をした小さな猫が丸くなってセラフィナを見上げていた。


 あまりの可愛さに胸がいっぱいになり、そっと猫を持ち上げてみる。抵抗もせずに伸びる身体と嬉しそうに揺れる尻尾。

 セラフィナは誘惑に負けて猫の腹に顔を埋めた。

 すると、猫の前足で頭を叩かれたが、可愛い抵抗に口元が緩んでしまう。


 しばらくしてラピスラズリの腹から顔を上げると、他の綿毛が勢いよくセラフィナの顔に張り付いてきた。

 もしかして、他の子も何か動物の姿になるかもしれないと、好奇心が抑えられないセラフィナは、順番に魔力を与えてみる事にした。

 

 まず顔から剥がしたのが黄色い綿毛、シトリンだった。土魔法で球体を作ると、綿毛がそれに飛びついた。

 同じように風が巻き起こり、目を開けると、黄色の小さな兎がそこにいた。

「シトリンかわいい……!」

 

 セラフィナは兎を撫で回し満足すると、次に緑色の綿毛、ペリドットに風魔法で球体を作ってやった。

 風が巻き起こり、ペリドットを見ると、小さな薄緑色の狼へと姿を変えていた。

「リドは狼……かわいい……!」

 

 狼も頭から尻尾まで撫で、滑らかな毛並みを堪能した。そして最後、赤色の綿毛、ルビーへ火魔法で球体を作る。

 球体が消え、ルビーを見る。そこには尻尾が九本ある、小さな狐がセラフィナの目の前に浮いていた。

「ルビー、尻尾モフモフ……かわいい……!」


 セラフィナは狐の尻尾にモフっと顔を埋め、フカフカした感触を楽しんでいた。

 みんな可愛い動物に姿を変えて、嬉しくて仕方がないセラフィナは、しばらく精霊を抱きしめてベッドで横になっていた。


 ふと我に返り、セラフィナは紙に何かを書き込むと魔力を込め、赤色の伝書鳥を飛ばした。

 しばらくすると、白色の伝書鳥がセラフィナの下に降り立った。それを確認をしたセラフィナは身支度を整え、足取り軽く部屋を出ていった。


――――――――


「セラフィナー。こっちこっち」

 広場に着くと、リュカがベンチに座って手を振っていた。いつもの服ではなく、ノーカラーの白色のシャツに黒い緩めのパンツと 魔法鞄だけのシンプルな装いだった。

「休みなのに連絡してごめんね」

「いいよ、何時でも連絡して。……今日、いつもと服が違うな」

 セラフィナも、ライラと出かけた時にライラが買ってくれた白のワンピースを着て来ていた。

 何となく落ち着かなくなってセラフィナは自分の服へ視線を落とす。

「……変?」

 

「いや、すごく似合ってる。可愛いよ」


 そう言ってリュカは柔らかく笑い、ベンチから立ち上がると自然にセラフィナの手を取った。

「じゃあ行こうか。とりあえず飯食いながら話聞かせて?」

「う…ん」

 あまりにも自然に手を繋いで歩き出すリュカの優しい笑みに、セラフィナの鼓動が跳ねる。

 ふいにあの夜のリュカの言葉が浮かぶ。

 

『出来るだけ、抑えるけど……二人でいる時は俺、遠慮しないから』


 (あれって、こういう事、なのかな?)


 恋人になる前はとても慎重に、セラフィナに意思確認を取って触れて来ていたリュカが、こうして手を繋ぐのが当たり前のようにセラフィナに触れる。

 それが嬉しいような、恥ずかしいような、なんとなく浮かれてしまうような、不思議な気持ちになっていた。


 セラフィナもリュカに近づきたくて、少しだけ、繋いだ手に力を込めた。


 入った店はいつも行く、ギルド直営店“深層の灯”だ。昼の忙しい時間は少し過ぎていたためか、二人がけの半個室に座ることが出来た。ベンチに並んで座り、昼限定ランチプレートを頼む。

 今日の限定はクリームソースのベーコンパスタにサラダ、鶏の揚げ物が二個、小さなプディング付きだった。

 二人はゆっくり食べながら、ガルディア連合国であった事を話していた。ライラの実家であった出来事、レンティスの訓練の話、レンティスが昼は訓練してたのに夜は舞台を観に来ていて二人で驚いたり、舞台に立ったライラの舞踊に感動した事。

 でも、レンティスがライラに好意を寄せている様子の事は何となく言えなかった。

 

 そして今朝、精霊達が動物の姿になった事を、目を輝かせながらリュカに報告した。

「へぇ、すごい大成長してるな!今もその辺にいるのか?」

「うん。……実は何故かリュカの肩にラピスが乗ってるの」

「えっ!?そうなの!?うわー!なんか嬉しいな。ラピスって事は猫かぁ。俺も精霊が見えたら良かったのになぁ」

 自分の肩に手を当てて、キョロキョロとするリュカを見て、セラフィナは吹き出してしまった。

「本当、みんなにも見て欲しいぐらい可愛いの」

「セラフィナ、動物好きだし良かったな」

「うん。すごく嬉しい……」

 少し頬を染め、小さく微笑むセラフィナを、リュカは横から優しく見つめていた。

 

「魔力もずっと安定してるし、セラフィナもライラと上級冒険者の試験、受けるんだろ?」

「うん。リュカとユリウスと並んで活動するのに、その方がもっと色んな依頼受けれていいよねって話になったの」

「二人だったらすぐ受かりそうだなぁ。筆記もあるし、何かあれば聞いて。いや……筆記に関してはユリウスの方が覚えてそうだな」

「記憶力いいもんね、ユリウス」

「そうそう。まぁでも、ユリウスん家がみんな規格外すぎる気がする…」

「そうだね…」

「……俺もセラフィナに負けてらんないなぁ」

「?」

 

「セラフィナが守られるだけじゃないって分かってるけど、もう二度と、あんな危険な目に遭わせたくないから」


 リュカは眉を少しだけ下げそう言うと、セラフィナの頬を人差し指の背で撫でる。


「俺も頑張らないと、な」


 優しく頬に触れられ、見つめられたセラフィナの頬が一気に真っ赤に染まってしまった。

初っ端からデート回です。

セラフィナは初々しいけど、リュカが手馴れてる感じがしちゃうのは何故だ……

精霊も成長しました。動物で可愛いね。


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