第一章(五) それは死と呼ぶべきか、奇跡か。
光が見える。
淡い光。
眩しくはない、どこか優しい光がレティシアを照らしていた。
『汝よ、貴方には、やらねばならぬ事があります。』
なんでしょうか、とレティシアは思った。
『汝よ、貴方はレティシアではありません。貴方は、此処とは違う、別の世界で生き、そして死んだ者でした。』
優しい光がレティシアを包んだ気がした。
『貴方は死んだことにより、魂が体から離れ、輪廻へと旅立とうとしていたのです。』
「私が、死んだ⋯⋯?」
『そうです。そして、貴方が死んだ時と、レティシア・ダンドアが頭を打ち、気を失ったのは、まさに同時でした。しかし、レティシア・ダンドアの方は、まだ死んでいなかったにも関わらず、魂が身体から離れてしまいました。』
レティシア・ダンドア⋯⋯いや、彼女の身体にいる、レティシアではない『魂』は、分かった。
今までレティシアの姿をしていた『魂』は、ぐにゃりと姿を変え、小さな光を放っている『魂』へ戻った。
ーーー私はレティシア・ダンドアでは、なかったのですね。
『そうです。私が輪廻へと旅立とうとしていた貴方の魂を、レティシア・ダンドアの身体へ入れました。』
ーーー何故でしょうか?
『レティシア・ダンドアはまだ死ぬ運命にありませんでした。身体はまだ生きていましたから、早急に魂を戻す必要がありました。』
ーーー本当のレティシアの魂は何処へ?
『既に旅立ってしまいました。』
『魂』は分かった。
この柔らかくて優しい光は、神様と呼ぶ存在なのだろうと。
その光のそばにいると、温かくて心地よいと思った。
『貴方は、レティシア・ダンドアではありません。けれど、これからは、その者として生きねばなりません。為さねばならぬ事のために。』
ーーー神様、何を、私は何をすれば良いのでしょうか?
『それは、言えません。しかし、これだけは言っておきましょう。⋯⋯生きなさい。貴方は、レティシア・ダンドアとして生きて良いのです。』




