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悪女の引きこもり生活  作者: sano


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エピローグ レティシア・ダンドアの生涯




それからしばらくして、国王は発表をした。


「次の王は、第二王子セムルとする。そして、隣国の姫と婚約を結ぶこととなった。」




それは、一部の大臣を除き、皆を驚かせた発表となった。


第一王子であるアルカでも特に問題はないという認識もあったため、今までの慣例に反した決定に、貴族を中心に人々はざわついた。

しかし、アルカ自身がそれを望んだこと、自らは裏方として王となる弟を支えたいという話が一気に広まり、人々は兄弟仲の良い二人の王子を褒め称えるようになった。

また、隣国の姫が嫁ぎにくるという発表も、人々は歓迎した。



そして、それらの発表は、ノーサレア地方にも届いていた。


新聞の一面に書かれている内容を見て、レティシアは言った。


「ついに発表されたのね。」

「そうだな。」


レティシアの部屋で、今日もまたジンと共に午後のお茶の時間を過ごしていた。

公爵家の来訪以降は、実に静かでのんびりとした日々を過ごしていた。ジンの方で、誘拐の犯人は見つかったということにして、捜索の終了を宣言した。静かにダンドア夫人の誘拐事件は幕引きとなった。




「旦那様、あの、私⋯⋯。」


レティシアは少し躊躇いながらも、続けた。


「ずっと考えていたんです。⋯⋯こないだの話を聞いてから。過去に色々あった私が、これからどう生きれば良いのだろうと。」

「⋯⋯⋯。」

「記憶喪失とはいえ、許されないことをしてしまった私が笑顔で生きてしまって良いのかと、今も悩んでいるんです。」

「⋯⋯。」


ジンがレティシアをじっと見る。レティシアは緊張しているのか、少し顔が強張っていた。


「でも⋯⋯。」


意を決した。


「でも、私。許されるなら⋯⋯旦那様と此処でこれからもずっと暮らしていきたいんです。

だって、私にとって、旦那様は⋯⋯もう大切な人だから。」

「レティシア⋯⋯。」


ジンは、そっとレティシアの手を握った。



「好きだ。俺と結婚してくれ。」

「ふふ、もう夫婦でしょ。⋯⋯はい。」





















レティシア・ダンドアは、生涯ノーサレア地方を出ることは無かった。


王都にいる頃は『悪女』として有名な女性であったが、ダンドア家に嫁いでからは、その噂は全く聞かなくなった。


人々は噂する。

レティシア様は、夫であるジン・ダンドア様の献身的な愛によって、心を入れ替えたのだ。

いや、実は第二王子セムル様との結婚が嫌だったから、わざと悪女のフリをしたんだ。

どうやら、兄のアルカ様を慕っていたらしい。

それらは全部嘘だよ。レティシア様は記憶喪失になったと聞いた。

記憶喪失?そんな事あるわけないだろう。


本当と嘘が入れ混じった噂を、人々はしていた。


確かなことは、レティシアとジンは仲の良い夫婦だったということだ。

夫婦二人で散歩しているのが、長年よくある光景であった。

子宝にも恵まれ、五人の子供が産まれた。

その子供が大きくなり、二人が老いた姿になっても、よく散歩をしていたのを使用人達は見かけていた。








そして、レティシアは、六十七歳でこの世を去った。

先に夫を看取ってから二年後のことであった。息子、娘、孫など沢山の家族に囲まれて、レティシア・ダンドアはその生涯を終えた。


結局あのお告げのような夢をまた見ることは、死ぬまで無かった。

自分は本当にレティシアではない魂なのか。それとも、もしかしたら、そう思い込んでいるだけなのか。

本人は、レティシアとは別人の魂であると信じていたが、その真相は分からないままであった。

そして、お告げの時に言われた『為さねばならぬこと』もまた、結局分からないままであった。






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