閑話 第一王子の違和感
第一王子であるアルカは、無口である。
あまり喋らないため、人によっては侮られることもあるが、それは大きな誤解である。
彼は観察力が鋭い。例えば、人の話し方、声のトーン、目の動き、顔の表情、仕草など。
アルカは物心ついた時から、それらを観察する癖があった。そして、なんとなくであるが、他人が嘘をついていると、そう分かる時がある。
「え、兄上、なんですか急に。」
そう。例えば、目の前にいる弟が嘘をついていると分かる時もあるのだ。
アルカは弟であり第二王子であるセムルに、突然聞いたのである。
『誘拐を指示したのか?』と一言だけ。
そう言われた時のセムルの反応は、一瞬だけであったが、違和感をアルカは感じた。
「ダンドア夫人が先日誘拐されたが、何故か怪我一つなく、無事に帰されたらしい。身代金の要求もなく。」
「あ〜、そうらしいですね。私も聞きました。」
「命令したのはセムルか?」
「⋯⋯⋯。」
単刀直入な聞き方にセムルはきょとんとすると、ケラケラと笑い出した。
「違いますよ。そんな事を疑うのは止めて下さい。」
「⋯⋯そうか。急に悪かった。」
アルカはそう謝り、自室へと戻る。
しかし、アルカには分かっていた。セムルは何かしらの嘘をついていると。
(嘘は上手いが、突然の言われた時の一瞬の違和感。⋯⋯調査するか。)
その後ろ姿を見ていたセムルは何てことない顔をしつつも、内心焦っていた。
(やっば。兄上にバレちゃったかな〜。嘘見抜く時あるんだよなぁ⋯⋯。)
そして、アルカは、侍従にレティシア・ダンドア辺境伯夫人の誘拐について調査するよう指示した。




