第一章(一) 目覚めの時
それは、冬の寒さが厳しい日のことである。
外には雪が降り、領民達は本格的な冬の訪れを感じていた。
太陽が隠れているグレーの空から、雪がパラパラと落ちてくる。
冬の厳しさを知っている者達は、こうした雪に喜ぶことはなく、冬が始まろうとしていることに、むしろ憂鬱な気持ちになっていた。
はしゃいでいるのは、小さい子供達だけである。
そんな風景の中、領主であるダンドア家の城では、今まさに、ある重大な出来事が起きていた。
「⋯⋯⋯⋯⋯。」
レティシア・ダンドアは、ぼんやりと目覚めていた。
ベッドで寝ていた彼女は、起き上がろうとしたが、体の痛みに耐えられず、また伏していた。
(なんだっけ、⋯ここは、私の部屋⋯⋯?)
周りを見渡してみると、豪華な内装である。
また、自分が横になっているベッドも、一人分とは思えぬほどの大きさである。
(ここ、私の部屋⋯?⋯⋯違うような気がする。)
(え、頭に包帯?怪我をしてる?)
頭を触ると、何かが付いている。おそらく、包帯が巻かれていると、推測した。
(なんで、こうなったんだっけ⋯⋯⋯。)
誰もいない静かな部屋の中で、レティシアは考えた。
昨日は何をしていたのか。
どうも寝る前の記憶が定かではない。
ゆっくりと考えてみたが、全く何も思いつかなかった。
昨日何を食べたかさえも、⋯⋯いや、そんな小さな事よりも、此処が何処なのかさえも、さっぱり分からないのである。
(ゆっくり起き上がろう。なんで、体がこんなに痛むんだろう?)
レティシアは、徐々に体を起こしていき、なんとか上半身を起き上がらせることに成功した。
そのままベッドから立ち、部屋の中を見てみる。
机。窓。花が飾られている。クローゼット。椅子。暖炉。化粧台⋯⋯⋯。
(ここ、私の、部屋⋯⋯?)
ゆっくりと化粧台まで行き、鏡を見てみると、そこには金髪のゆるいウェーブのかかった髪に、整った顔立ちの女性が映っていた。
頭には、やはり包帯がぐるぐるに巻かれている。
(⋯⋯⋯⋯!?)
レティシアは、驚愕の表情になり、何かを言おうと、口を開きかけた時に、扉が開いた。
「⋯⋯⋯あ、れ?
!? レティシア様、起きましたのね!すぐにお医者様を呼んで参ります!」
侍女がベッドにレティシアの姿が無いことに驚き、さらには化粧台の前でぼんやり立っていたことに、慌てふためく。
バタバタと走っていく音がしていく中、レティシアは侍女の言葉を聞く余裕がない様子で、信じられないといった表情で呟いた。
「私は⋯⋯⋯誰?」




