第7話 私の新学期
夏休みが終わって、新学期。
今年の夏は、1番早く過ぎ去った気がする。
それは、多分―――
1ヶ月ぶりの教室に入り、席に着くと、携帯のバイブ音がなる。
公式アカウント以外に通知が来ることがなかったから、まだこの感覚が慣れない。
通知の相手は、翔月くんからだった。
翔月くんは、私が初めて受け取ったボトルメールの男の子。無邪気で陽気な可愛らしい人。
『おはよ!! 今日から新学期だよね?? オレは明日から!』
メッセージを受け取る媒体が、ボトルでもラインでも変わらない。彼は、テンポのよい陽気な文章を送ってくる。
それが、嬉しくてしょうがなかった。
時計を見ると、始業式までまだ時間がある。私は、周りの目を気にしながら返信を返した。
クラスメイト達は、久しぶりの再会で笑い合う声が飛び交っている。今年は特に暑かったもんだから、日に焼けた生徒も多くいた。
私は、当然話す生徒もいない。それは、小豆島の2人に出会っても変わらないことだ。
『おはよう! 私はこれから始業式! お互い新学期頑張ろうね!』
こんな文章でいいだろうか。
友達はもちろん、恋人もいたこともないから、異性になんて返せばいいか分からない。
もっと疑問形で送ったらいいとか、面白いことを送れたらいいのにと思うのに、何一つアイディアが出てこない。
「七海さん。」
送ればいいか、消すべきか悩んでいると、背後から声聞こえた。
「七海さん。」
どうせ自分ではないだろうと、無視して、思考が停止する。
ん、今、自分の苗字が呼ばれたような…。
そのまさかである。声のもとに振り返ると、学級委員の 砂部 澄空 が目の前に立っていた。
彼女は、まさかに『委員長』という言葉が似合うしっかり物で、ちょっとのズルも許せないタイプの人である。
あと、ちょっと変わった人で、いつも教室でぶつぶつ念仏のようなものを唱えてる。
だからなのか、私と同じように友達がいない。なんだか、彼女に近づけないようなオーラがあるからだ。話しかけないでください。とい言っているような。
「な……なに?」
話すのが初めてだったため、震えながら口を開く。
「……始業式……。遅れる。」
まるで、お化けのように耳元でふっと囁かれる。
その衝動で、鳥肌がぶわぁっと立ち、勢いよく立ち上がった。
「ごめんなさい!! すぐいきます!」
そして、その瞬間。
私の勢いで、私のスマホが彼女の足元へ転がり落ちた。
まずい!! 見られる!!
だが、取ろうとしたときには、もう遅い。彼女のほうが物理的に距離が近いため、ヒョイッとスマホを取られてしまった。
そして、案の定私の携帯画面をじーっと見つめる。
「……」
もう、固まるしかなかった。
もしかしたら、その前の翔月くんとのトークも見られているかもしれない。自分の心の中を全部見られたようで、恥ずかしい。
彼女はそんな事を気にすることなく、静かに呟く。
「……………彼氏??」
「ち…ちがっ…!! 」
「…………電気消さないといけないから、すぐ出てね。」
あっさり彼女から携帯を受け取り、電気を消しに行ってしまった。
思わず口をぽかんと開けてしまう。
な…なんなんだ??
不思議な人だな。砂部さん…。
※ ※ ※
始業式後。教室へ戻ろうとしていると、後ろから気配がした。
「七海さん。」
「わっ!!!!」
砂部さんは、突然ぬんっと出てくる。予測のできない登場に、思わず変な声を出してしまった。
まさか、2回目も話しかけてくるとは思わなかったので、今度は何の用かと身構える。
「さっきの………彼氏??」
「違うって!! はぁ、ビックリした……。」
彼女は長い黒髪を垂れ流し、ボソっと低い声で呟く。
「……七海さんが恋してるって………なんだか、意外。」
「だ…! だから違うってば!! なんでそうなるの…」
「……朝入ってきたときから、前と違うなって………思ったから。」
「生き生きとしてる……。恋の予感ね………。」
「えっ!?」
「私の占い……当たるって評判だから…。放課後、七海さんのこと……占ってあげる。」
「へっ? 占うって…どういう………」
そういうと、彼女は私より先に教室に入ってしまった。追いかけるのも、なんだか違う気がして、その場で立ち止まる。
…な、なんなんだ…?
思えば、こうやってクラスメイトと会話をちゃんと交わすのも久しぶりだ。普通に話せていたか、不安になる。
それに、私のこと朝から見ていたって…
考えただけで、ゾワッとする。
もしかして、砂部さんはクラスメイト全員を観察していて、勝手に占ってしているのかな…?
噂に聞いた通り、変な人。
だけど、自然と嫌な気はしなかった。
今日の放課後、私のどんな事を占ってくれるのかな―――。
まだ誰に恋してるか、自分でもわからないのに、自然と放課後が楽しみになる。
私の、この小さな気持ちはどこへ行くんだろう。




