第30話 私の恋
翔月くんと別れて、私は、小豆島の色んな所へ観光へ行った。
まず、始めに行ったのはオリーブ公園。バスがなかなか来なかったから、少しだけ焦った。予定していたのを逃すと、なんと次のバスは1時間半後。都会に住んでいると、10分くらい待てば、次が来るのが当たり前になので、この感覚は慣れなかった。
そもそもオリーブ公園は、道の駅である。魔女の宅急便の聖地にもなっていて、ほうきを借りて写真を撮ることができる。1人旅だったので写真を撮ってくれる人がいなかった。他の観光客に写真を頼むということもできるが、内気な性格な私にとって、その行動はハードモードだった。
雲一つない青空に、穏やかな海。景色は200点満点だった。その間に挟まれたホワイトの建物との相性もバッチリ。まるで、おとぎ話の世界に迷い込んだ気分にさせてくれる。
次に、寒霞渓に向かった。片道約5分間のロープウェイに乗り、空・海・渓谷を1度に一気に楽しむことができる贅沢コースだ。秋には、紅葉がなり、上から眺望できる景色は何とも絶景なんだとか。
他にも、ずっと食べたかった醤油ソフトクリームや、小腹がすいたのでミニ讃岐うどんも食べれた。満足満足。
私の旅行は、非常に充実したものになった。
※ ※ ※
一通り観光を終えて、ふと携帯の電源をつける。時計が示していたのは、17時30分だった。
本日、最後の観光。
私はこれから、エンジェルロードへ向かうとしている。
今日の潮見表を確認したら、17時51分から道ができるそうだ。
今は、土庄港付近に戻ったので、20分もあれば間に合うだろう。
私は、思い出を噛みしめるように、ゆっくり、ゆっくり向かった。
今日は夕日が綺麗だ。本当いい日に旅行しに来たと思う。はっきりと見えるオレンジ色の太陽のような夕日は、私の心に染みるものがあった。
歩いてると、バックの中に入っている鈴の音が聞こえてくる。
フェリーで買った、おりーぶしまちゃんとミモザのりくちゃんのストラップ。
2人はお互いを見つめ合うように笑っている。
結局、渡せなかった。
しょうがないことだ。『彼』がどこにいるかも分からない。今さら『食事処・ウェーヴ』に戻るわけにもいかないのだ。エンジェルロードの時間に間に合わなくなってしまう。
もう、『彼』のことは考えるのは、やめよう。
きっと、嫌われてしまったんだ―――。
※ ※ ※
徒歩約15分。Googleマップの『案内終了』のバイブが鳴り、私は辺りを見渡す。
いきなりエンジェルロードに着くというわけではなく、駐車場や売店、天使のベンチや天使のポストと言った撮影スポットもたくさんあった。ピンクの羽根のベンチだったり、白いポストだったり、若い人は喜ぶだろうと思い、そのまま素通りした。
そして、先へ進むと―――
何度もインターネットで見た光景が、そこにあった。
時計を見ると、17時55分。
本当に道ができている。これが時間が経ったら、道がなくなってしまうなんて考えられなかった。魔法のような道だ。
私は、少しずつ奥の繋がっている島・中余島へと足を運んだ。
静かに、静かに近づいていく。
なんだか、ずっと行きたかった場所なのに、寂しくて、辛かった。
海のさざなみの音は、なんだか切ない。
今、私の隣には誰もいない。手を繋いでいない。
繋ぎたかった。
ボトルメールで出会った、貴方と。
『オリーブ、めっちゃあるよ。公園にもあるしね。俺の店も、地元の名産品を使ったメニューがいっぱいあるし。』
『俺の店だから。うまいに決まってる。』
貴方は、翔月くんのフリをして、私とやり取りをしていたよね。
でも、バレバレだったよ。私、気づいてたもん。
2人で1人じゃない。
書き方が全然違うから。
字が、本当は綺麗なことも。
誰よりもお店のことを考えていて、将来のことをしっかり考えていることも。
不器用だけど、誰よりも優しくて。
誰かのために、咄嗟に行動できるところも。
全部、全部、好きです―――。
だけど、エンジェルロードには、彼の姿はなくて。
私は、こんなに、こんなにも好きなのに。
想いは、通じ合わない。
映画のようなロマンスなんて、起こらないことぐらい、わかっている。だけど、もしかしたら、もしかしたらって期待をしていた。
ねえ―――どこにいるの?
今日はずっと、貴方のことを探してばかり。
※ ※ ※
中余島について、私は静かに深呼吸する。
空気が美味しい。景色一面中海で、ここに住んじゃいたいくらい、気に入ってしまった。
なんだか、落ち着くな。
うん。落ち着くよ。1人でいると。
ね……1人でいるとさ―――。
ポタリ。涙が零れ落ちる。
ねえ、今だけ素直になっていい?
私、わがまま言っていい?
エンジェルロードは、私の恋を実らせてくれないのかな―――。
「陽樹くんっ…………陽樹くんっ………。」
全身が、彼を求めていた。もう、止まれなかった。
何度も、彼の名前を呼ぶ。呼び続ける。ここにいるはずないのに。
会いたいよ。たったそれだけなの。
彼を想うといつだって涙が出る。ずっと苦しいよ。幸せなれる保証なんて、ないのに。
でも、きっとこれが恋なんだと思う。
その時、足音がだんだん近づいてきて。
背の高い男性の姿だった。
目を丸くする。
胸がドクン、高鳴る。
確信は持てないけど、この人は、多分―――。
お願い。
もしも、願いが叶うなら。
話したいこと、伝えたいことが、いっぱいあるよ―――。




