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【完結】キミと手を繋ぎたい。オリーブの香る島で。  作者: 咲山けんたろー
第4章 最終章。私が選んだのは――
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第29話 オレの恋


 ひなこちゃんを送り出して、オレ・翔月(かづき)は、パタリ、とお店のドアを閉めた。


 それと同時に、力がスッと抜けてしまい、その場で座り込んでしまった。








 心に穴が空いたような感覚。






 なにも考えられなかった。




 オレ、ひなこちゃんといたとき、いつもの笑顔で笑えていたかな。




 少し泣きそうになったの、見られてないかな。




 告白の返事を言われるとき、なんとなく、断られるんじゃないかって思ってしまった。彼女の空気からそう察せたのだろうか。




 申し訳なさそうに、ずっと辛そうに話していて、オレまでもっと苦しくなっていった。






 初めてボトルメールを流した日のことを、多分、オレは一生忘れられないだろう。




 田舎での生活が窮屈で、咄嗟に思いついたアイディアで、現実的なことも何も気にせず行動したこと。あの時は、とにかく誰かと繋がりたい一心だった。






 それで、ひなこちゃんと繋がって、何度もボトルメールでやり取りをしたよね。






 初めて都会の人の暮らしが知れて、同世代と繋がれて、他愛の話をたくさんして、すごく楽しかったな。










『この手紙を見た人へ、




 はじめまして。




 これを見たということは、どこかの海へ流れ着いたってことですよね!




 あなたのことを教えてください。




 知らない世界を知りたいんです。





 お返事、待ってます。




 田舎の男子高校生より』









 初めて送ったメールの内容も、ずっと覚えている。彼女から来た返事は、今も机のなかに大事にしまってある。









『あなたのことを知りたいんです。』









 ひなこちゃんのことを、もっと、もっと知っていきたかった。




 もちろん、今だってある程度は知ってるけど、これからは、オレだけに見せる顔とか、弱みとか、そういうのも全部見せてほしかった。







 彼女が帰る時に、咄嗟に呼び止めたのは、髪の毛にゴミがついてたわけじゃない。






 嘘をついた。







『オレ、まだ諦めたくないよ。』





『叶わないのは、わかってる。だけどさ、まだ、好きでもいてもいいかな?』






 言いたいことなんて、たくさん、たくさんあった。




 簡単に諦められるわけ、ないよ。




 だって、ずっと好きなんだもん。顔も名前も知らないときから、ひなこちゃんのことが気になってたんだよ。




 いつだって、兄ちゃんより先に行動して、まっすぐに想いを伝えてきたよ。




 彼女との思い出は、誰よりもある自信がある。





 本当は、3人でいるときも、2人でいるときの方が何倍も、何百倍も嬉しくて、側にいるだけで、それだけで幸せだったよ。






 初めてだった。こんな気持ちになるのは。






 彼女は、自分の顔に自信がないっていうけど、オレにとっては、自慢してもいいくらい、可愛く見えた。




 少し不安そうな姿も、全部、全部見せてほしいよ。




 オレのほうが年下だけど、絶対守ってみせるよ。怖い思いなんて、させないよ。









『ねえ………今日、陽樹くんは??』









 店に来て、彼女がそうオレに言ってきて。




 ひなこちゃんは、無意識に兄ちゃんのことを気にしてるって思った。






 そりゃ、オレの顔とかそっくりだから思い出すのかもしれないけど、それとは違う気がした。自然と。





 本当は、兄ちゃんがどこにいるか、知っていた。






 あの日から、オレと兄ちゃんは冷戦状態だ。話すには話すけど、必要最低限のことしか話さない。店のこととか、家のこととか。本当にそれだけだ。






 喧嘩をすると、彼は、エンジェルロードに向かう。






 彼にとっては、頭を冷やすために、そこへ向かうのだと思う。干潮の時間に合わせて、そこへ行って、いつか道がなくなるから誰かが来ないように、そうやって、1人の世界を作るんだ。いつも。




 だから、きっと今も、そこで頭を冷やしている。




 でも、ひなこちゃんには言えなかった。兄ちゃんがエンジェルロードにいるかもしれないって。




 それを話したら、きっと彼女はすぐさま向かうから。




 有名観光地だから、確実にそこには行くと思う。でも、行かせたくなかった。そしたら、兄ちゃんとひなこちゃんが再会して、なにか発展したら―――。






 オレは酷い人間だ。




 うまくいってほしくないから、わざと言わなかった。言おうとも思わなかった。








 オレを、オレだけを見てほしかったから。












 ねえ、ひなこちゃん。




 オレ、駄目なところなんて、全部直すよ。




 ひなこちゃんのためなら、理想の男になってみせるよ。






 オレじゃ、なんでだめなの?






 もしかして、ひなこちゃんが見てたのは、最初から兄ちゃんだったのかな。











 ひなこちゃんがオレに思う、『大好き』を、オレがひなこちゃんに思う『大好き』の意味に変えてみせるよ。








 …………変えてみせたいよ………。










 でも、あの目をみたら、そんなことできなかった。




 覚悟が決まっていて、揺るがない心を持っていたから。





 思い描いていた理想のシチュエーションが、すべてガラスのように壊れていく。




 付き合ったらこうしたいとか、ああしたいとか、勝手に自分で考えて、準備して、一体何をしていたんだろう。





 何を根拠に、結ばれると思ったんだろう。




 胸が痛くて、今にも破裂しそうだ。




 涙が浮かんできて、視界が少しずつぼやけていく。そして、涙は、静かに地面に落ちた。




 そのあとは、信じられない嗚咽と涙を流した。




 感情が、抑えられなかった。止まらなかった。





 いつものオレの笑顔は、どこへ行ったんだろう。





 目頭が熱い。心が苦しい。まともに話せない。呼吸さえも、辛い。







 叶うなら、オレが、ひなこちゃん幸せにしたかったよ―――。










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