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【完結】キミと手を繋ぎたい。オリーブの香る島で。  作者: 咲山けんたろー
第4章 最終章。私が選んだのは――
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第28話 私が出す答え②


 3月の小豆島は温かい。春の柔らかい風がふわりと吹いてきて、生き物たちも、とっくに冬眠を終えているだろう。




 そんな季節の中、私は、翔月(かづき)くんに、恋の答えを出そうとしていた。





「私ね、翔月くんのこと、すごく、大好きだよ。今も、ずっと。」





「うん。オレもひなこちゃんのこと、ずっと大好き。ボトルメールでやり取りしていたときから。」





「………うん。」






 彼は、私のことを真剣に、まっすぐに、じっと見つめている。






 私も、決して目を逸らさなかった。







「会えない時も、連絡をマメに取り合ったり、いつでもまっすぐに気持ちを伝えてくれて、ありがとう。」





 自分の気持ちがちゃんと、彼に届いてるのだろうか。話しながら、自分でも何言ってるかわからなくて、心臓がずっとバクバクうるさい。




 それでも、彼はちゃんと丁寧に頷きながら、話を聞いてくれた。『急がなくていいよ。』と言っている気がして、自然と楽になっていく。





「私ね、翔月くんにたくさんのありがとうを貰ったよ。ボトルメールを拾う前は、高校生活なんて本当につまらなくて、正直辞めたいって思う時もあった。だけど、あの時、翔月くんが鎌倉の海にメッセージを流してくれた日から、少しずつ変わっていって、毎日が楽しくなったの。」





「今こうして、ここに来れて、笑っていられるのは、翔月くんがいたお陰なんだ。私と、出会ってくれてありがとう。今、すごく幸せだよ。」











「…でも、私が翔月くんに思ってる『大好き』は、恋愛的な意味じゃなくて、人として大好きっていうことで――。」












「……恋愛的な大好きとは、ちょっと違うかなって思った。これが、今の私の気持ち。」






「本当にごめんね。ごめんなさい……。」




 自分の気持ちを全て出し切った時には、声が震えていた。




 心が痛い。私は、翔月くんの気持ちに答えられなかった。







 衝動で手が震えていると、彼の大きな手がそっと触れた。






 彼は、優しく笑った。いや、儚く笑っていた。






「ひなこちゃんが謝らないでよ。何も悪いことしてないのに。」




「でも……」




「『でも』じゃない。こちらこそ、ちゃんと、答えを出してくれて、ありがとう。」






「気持ちが違うのは仕方のないことだよ。」










「オレ……ひなこちゃんを好きになって、本当によかったと思ってるよ。」








「気づいてないかもしれないけど、オレと兄ちゃんを1度も間違えたことがなかったじゃん? ほら、顔がこんなにそっくりなのに。」




「そうだけど、性格が全然違うじゃん。だから、わかるよ。」









「うん。そうやって、オレたちを別々に見てくれるところ、めっちゃ好き。」







 私はこの時、初めて目をそらした。彼の瞳に涙が浮かんでいたから。





「……なんて、そうやって言ったら、またひなこちゃんを困らせちゃうか。ごめんごめん。」





 なんで、私も泣きそうなんだろう。翔月くんのほうがずっと辛くて、やけになるはずなのに。自分の今の感情に、腹が立ちそうだった。





「さーてっと! 暗くなっちゃったし、何か明るい話しようか!! はい、じゃーひなこちゃんは、このあとはどこ観光するの?」




 彼は自然と涙を拭いた。私は、わざと、見ていないふりした。




「えっと……オリーブ公園と、寒霞渓と、あとは、エンジェルロードかな。できる限り歩きたいところだけど、厳しそうだったら、バスを使おうかな。」




「うんうんうん!! どれも王道でいいね!!ここからだとね、エンジェルロードが1番近いかな。10分くらい。だけど、今干潮じゃない気がするな……。で、寒霞渓が1番遠いね。ロープウェイが通ってるはずだよ。あ、オリーブ公園はバスかな。」




 彼のいつものテンションに、私は笑みを浮かべる。




「やっぱり詳しいね。」




「えっへん! なにせ、島民17年だからね!!」




 私にVサインを見せる。その無邪気な笑顔に、また笑った。





 ※ ※ ※





 時刻は14時を過ぎていた。楽しい時間は、あっという間だ。


 私は、この後も小豆島の観光を続ける。そのため、ずっとお店にいるわけにもいかないのだ。




 お店の外まで、翔月くんが見送ってくれることになった。カラン、とベルがまた鳴る。この音が行きの時より、なんだか切なく、心に染みるような気がした。




 瀬戸内のさざなみの音が、かすかに聞こえてくる。その穏やかな音に、浄化されていくようだ。




 遠くから鳶のような鳥の鳴き声も聞こえる。やっぱり小豆島は、自然あふれる場所。


 




 ドアを閉めると、彼はヘラヘラと笑いながら話す。




「本当はオレもついていきたかったところだったんだけどね〜、ちょっと、父ちゃんに頼まれ事があって。」




「元々はご両親のお店なんだもんね。いろいろ大変だ。」




「そそ!じゃあ、気をつけて観光してきてね!」




「うん! ありがとう! 翔月くんもお店頑張ってね!」




 彼は、満面の笑みでグッドサインを私に見せる。私もそれにならって、サインを返した。









 背を向け、再び、観光へと足を踏み出す。




 タン、タン、と地面を踏む音。それが突然二重に重なり、瞬時に後ろを振り向く。




 目線の先には、翔月くんが私を追いかけているのが見えた。








「待って!!!」








 彼の姿が大きくなる。短い距離なのに、その距離は、思っているよう以上に長くも見えた。




 そして、距離は縮まり、彼は私をじっと見つめた。一回り小さい私に、腰を曲げながら。




「……っと! やっぱり何でもないや。」




「ええ!? どういうこと!?」




「髪にゴミついてるかなって思ったけど、気のせいだったみたい!!」




「あはは! なにそれ〜。」





「オレらしいっしょ! じゃ、今度こそ気をつけてね!」





 私は、笑顔で頷いた。




 また、進行方向へ振り向いて、歩き出す。




 彼の本当の今の気持ちを聞き出したかった。多分、何かを隠している。私に言いたいことが、もっと伝えたいことが山ほどあるはずだから。




 だけど、2度目はもうない。




 翔月くんの方へ振り向くことなく、私は歩きだした。





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