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【完結】キミと手を繋ぎたい。オリーブの香る島で。  作者: 咲山けんたろー
第4章 最終章。私が選んだのは――
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第27話 私が出す答え①



 フェリーで約1時間ほど。アナウンスが鳴り、ついに小豆島についた。




 降りて、ゆっくりと息を吸う。うん。いい天気。瀬戸内の穏やかな風が海から吹いてきて、気持ちがいい。東京より温かいから、本格的な春の訪れを感じた。






 2度目の小豆島。





 ここにくると、やっぱり陽樹(はるき)くんと翔月(かづき)くんの顔が頭に浮かぶ。




 ボトルメールを拾って、やりとりをしたこと。初めて小豆島に行って、会いに行ったこと。




 あの時は、今度は私の地元・鎌倉で会おうということになったけど、いろいろあって、またここに来ることになった。




 2人には、たくさんの幸せと思い出をくれた。彼らのお店・『食事処・ウェーヴ』でオリーブソフトクリームを食べたこと、小豆島の海に行ったり、東京の修学旅行で、また再会したこと。




 陽樹くんからもらった、Tシャツとタオル、翔月くんからもらった、ピンクの貝殻と温泉のお金。






 その1つ1つが、私の大切な宝物になったよ。







 だから、私ね――――








 ※ ※ ※



 念のため、Googleマップでお店の行き方を調べ、行くことにした。当たり前だが、初めて行くときよりも緊張しない。身体も軽くて自然と前に進む。 私は、ステップしながら目的地へ向かった。




 翔月くんには、今日、小豆島に行くと言ってある。メッセージを送ると、すぐ既読がついて、『ひなこちゃん、受験本当にお疲れ様! お店空けとく!!』と言っていた。修学旅行の日以来会っていないから、会えるのが楽しみだ。




 見覚えのある『食事処・ウェーヴ』と書かれた看板を目にし、私はGoogleマップの案内を切る。




 なんだか、店の外観が前より少し変わった気がする。前は歴史あるレトロな雰囲気で、風情があるなと感じたが、今はなんだか落ち着いた現代風な見た目になっていた。




 観葉植物がたくさん置かれていて、看板の側には『おりーぶしまちゃん』の人形が置いてある。




 多分、この外観にしようと言い出したのは、陽樹くんだろう。翔月くんだったら、もっと派手なデザインにしそうだからだ。カラフルで、もしかしたら、店のロゴまでポップにしちゃいそう。ふふっ。





 私は、店のドアを握りしめながら、店内へ入った。




 カラン、とベルが鳴り、足を踏み出すと、知っている顔がお出迎えをしてくれた。






「ひなこちゃーーーーん!!!! おかえり!!!!」




「わっ!!」





 子犬のようにキャンキャン吠える翔月くんは、私の姿が見えた瞬間、勢いよく飛びついた。




 まるで、尻尾がついているようだ。上下にブンブンと激しく振っているようにも見える。




「か……づきくん……。 ちょっと……」




『重たいかも』と言おうとすると、彼が察したかのように手を離した。





「ん? あー! ごめんごめん!!」





 少し頬が赤くなっている。私も、なんだか恥ずかしくなって、照れ隠しに笑った。





 ※ ※ ※



「お待たせしました〜!!」




 カウンター席で少し待っていると、翔月くんが料理を運んできてくれた。




 出てきたのは、緑の細麺と油がのっためんつゆ。私は、これが何かよくわかる。彼らに会って、小豆島のことを少し勉強したからだ。




 おそらくこのつゆは、ここでとれたオリーブオイルだろう。さっぱりしていて、春になったばかりなのに、もう夏のことを思い出してしまう。





「オレが作ったオリーブそうめんだよ!! ささっ! 食べて食べて!!」





「ありがとう! じゃあ、お腹もすいたし、食べちゃおっかな! いただきまーす!!」




 私は手を合わせ、すぐさま麺を箸で挟む。口に入れた瞬間、ちゅるっと吸い込まれる。




「わぁ! 美味しい!」



「でっしょ〜? だって、オレが作ったんだもん。当然だよね。」







「で……ひなこちゃん。」




「ん?」




 彼が私の隣に座り、チラッと顔を覗き込む。お冷の氷が、カラン、となる。




 広々とした店内に、2人しかいないなんて、なんだか変な気分。




 近距離で、翔月くんと目が合う。子犬のように、目をキラキラと輝かせていた。






「受験、どうだった?」




「……どっちだと思う?」




 私が返した言葉に、彼はずっと口をモゴモゴさせていた。多分、私が落ちていたことを考えて、言い出しにくいのだろう。




 その様子に、思わずクスッと笑い、今日1番の笑みを浮かべた。




「 受かりました〜!! 第一志望!!」




「ええ!? 本当!? 」




 私は激しく頷く。彼の表情が、みるみる明るくなっている様子が分かった。




「やったぁあ!! さすがだね!!! 合格、おめでとう!!」




「うん! ありがとう!!」




 翔月くんとその場でハイタッチ。パチン、という音が店中に鳴り響いた。






 ※ ※ ※



 テーブルの上には、私が食べ終わったオリーブそうめんのお皿とつゆが置いてある。





 それから、私たちは色々なことを話した。




 この数ヶ月間、翔月くんは、学業にお店に頑張っているらしい。勉強が苦手だった翔月くんが、今じゃ自分から毎日やるようになったみたい。私が知らない間に、どんどん成長している。





「じゃあ、春から大学生か…。ひなこちゃんは、オレより先に大人になっちゃうね。寂しいなぁ。」




「まあ、私のほうが年上だからね〜。」




 私の言葉に、翔月くんは、『それはそうだけどさ〜』といいながら、ヘラヘラ笑っていた。




 なんだか、この感覚久しぶりだな。彼は私と違って、すごく明るいし、周りを楽しませる力があると思う。だから、自然と笑顔になれちゃうんだよね。




 初めて会った日は、陽樹くんもいたよね。あの時は、まさか2人でボトルメールのやりとりをしていたなんて驚いちゃったな。




 私は、周りを見渡しながら、静かに口を開く。






「………ねえ、今日陽樹くんは?」




「あーー………。 兄ちゃんは……。」





 翔月くんはそういいかけて、気まずそうな顔つきになる。






「何かあった?」




「ううん! 別に!」






 嘘。彼は表情が顔に出やすい。だって、顔に『何かありました』って書いてあるんだから。目を合わせると、わざとらしく目をそらすから、お察しだった。






「…兄ちゃんは、今日お店に来ないんだ。多分、どこか出かけてるんじゃないかな。」


「陽樹くんがお店にいないなんて、珍しいね。」


「今日は定休日だからっていうのもあるけど。オレも、ひなこちゃんがくるから、顔出せって言ったんだけど……」





「そっ…か……。」






 静まった空気の中、私たちは会話を探す。


 彼は、陽樹くんに私が来ると話していた。だけど、陽樹くんはそれを知っていて、店に来なかった。きっと、わざとだ。







 私が来るから―――。







 生唾をゴクン、と飲み込む。私は、覚悟を決めた。





「ねえ、翔月くん。」




「ん?なに?」





 キョトンと見つめる翔月くん。その顔が、その姿がずっと大好きだった。






「告白の返事、今、したい。」




「聞いてくれる?」







「もちろん! 何でも聞くよ。……あ。」









「……『ごめん』以外ならね。」










 私は、静かに深呼吸した。




 もう、何も迷わない。迷いたくないから。




 答えは、もう決まっている。






 翔月くんに、私、今伝えるね。






 大好きだからこそ、ちゃんと、伝えるべきなんだって。






「私ね、翔月くんのこと―――」

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