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【完結】キミと手を繋ぎたい。オリーブの香る島で。  作者: 咲山けんたろー
第4章 最終章。私が選んだのは――
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第26話 私のボーイフレンド


 最後の試験も無事に終了し、長かった受験生は幕を閉じた。




 窓を見上げると、寒かった毎日から一変、近くの木々は桜の蕾を付けているようだった。




 そして、今日。その大本命の大学の合格発表である。


 発表時間は、午後12時から。アクセス集中防止のため、早めにパソコンを立ち上げた。




 発表は、私1人で見たいはずなのに、なぜか私の両サイドには、家族全員がパソコンとにらめっこをしている。




 受験番号とパスワードを入力し、その瞬間をみんなで待つ。




 私は、生唾をゴクンと開いた。家族からの圧もまた、苦しい。





「ほら!! もう12時になったよ!!!」




 母親が、私の肩をポンと叩く。その勢いが強すぎて、今にも壊れそうな心臓がまた強く跳ねた。




 私は、静かにうなずき、恐る恐るカーソルを合わせる。




 どうか、受かっていますように―――。





 カチッっと、クリックをする音。




 その一瞬だけで、私のこれからの未来が見えるような気がした。





 目をゆっくり開ける。




 家族全員何も喋らず、部屋中凍りつく。







 見えたのは、『合格』の文字だった。






「う゛わ゛ぁぁぁぁぁあ!!! 合格!!! 受かったよぉ〜〜」





 その場で近所に聞こえるくらい、大声をあげる。




 家族も震えながら一緒に歓声をあげる。特に母親は、涙を流していた。




 体験したこともないエネルギーが、全身からものすごい勢いで流れてきたような感覚。





 ずっと行きたかった大本命。明生大学・文学部に合格。最後に報われたという形で、私の桜は綺麗に咲き誇った。







 ※ ※ ※



 数週間後。入学手続きもある程度済ませたので、私は存分に春休みを楽しんだ。




 澄空(そら)に会った。彼女は国立大を受験したから、最近受験が終わったらしい。どうやら共通テスト利用で慶法大学の合格は貰っているそう。さすがは学級委員。頭が良い。




 私の合格のことを話したら、『占い通りね……』といって、静かに喜んでくれた。





…え!? 占いってそんなことまでわかっちゃうの!?










 そして、今日。




 携帯の電源をつけると、3月24日を示している。そう。今日は、小豆島へ旅行する日だ。




 流石に、数日間いないと、家族に不思議がられるので、事前に撮った澄空とのツーショット写真を見せて、彼女と卒業旅行へ行くという嘘をついた。今まで私に友達がいなかったから、家族全員肯定的だった。




 もちろん、本当に澄空とも卒業旅行に行く約束もしている。でも、彼女の合否次第できっと予定も変わるだろうから、詳細はまだ白紙のままだ。





 初めて、陽樹(はるき)くんと翔月(かづき)くんに会ったときは、少ししかいられなかったから、今度はたくさん観光しようと、ホテルも予約済みだ。


 行きたい場所は、数え切れないほどいっぱいある。まずは、香川県名物・讃岐うどんも食べることは大前提。あとは、醤油ソフトクリームも食べてみたいな。それから、オリーブ公園と寒霞渓にも行きたい。





 高松港から土庄行きのフェリーに揺られると、携帯をスクロールする手が止まる。










 うん。ここは、今日、絶対に行きたい。










 土庄町にある、エンジェルロード。










 実はここに行くのが、今日1番の楽しみだ。小豆島の公式サイトで、潮見表を何度も確認しては、胸が高鳴る。






『干潮時に海の中から現れる砂の道。大切な人と手をつないで渡ると、願いが叶うと言われているロマンティックな場所です。』




 香川県の公式サイト・『うどんの県 旅ネット』にかいてある文章をじっと眺める。





 大切な人。





 人によって、『大切』の種類は違うと思う。家族や友達の澄空、その他今までお世話になった人全員が大切な人だ。





 でも、私が今、手をつなぎたい人は―――。





 ふいに、『彼』の顔を思い出しては、顔が真っ赤になる。




 1人で悶々と座ってるだけじゃ、なんだかもったいないので、売店コーナーや外の景色を眺めることにした。




 今日は人が多い。小さい子からお年寄りまで、フェリーを利用する人は様々だった。春休みに入ったのだろうか。




 初めて来た時よりも、船内は賑やかに感じた。





※ ※ ※



 階段を登る際に、売店コーナーを見つけたので、景色は後で見ようと思った。




「いらっしゃいませぇ。」




 お店のおじさんが、ニコニコ笑いながら私の方をみてくる。人当たりよさそう人だった。




 売っているのは、軽食、瀬戸内産のお菓子など、気軽に食べる物がたくさん売っていた。




 どれもお手軽な値段。せっかくだから、瀬戸内レモンのポテトチップスでも食べよう。




 私は商品を会計に持っていく。売店のおじさんが、商品コードを読み取っているのを待っていると、見知った物が目に入った。






 思わず、声に出して読んでしまう。





「あっ、おりーぶしまちゃん……」





 レジ周りの商品は、しまちゃん関連でいっぱいだ。キーホルダー、ぬいぐるみ、シール、靴下、ボールペン……ありとあらゆるものが売られていた。




「おや? 知っているのですか? このキャラクターのこと。」




 おじさんの手が止まった。『食いついたか!』とでもいうように、目をキラキラと輝かせている。




 私はそれとは反対に、少し引き気味になる。




「 ……まあ。 可愛くて好きです。」




「へぇ〜〜珍しい。知ってる人なんて、地元の人くらいなのに。小豆島も有名になったもんだ。」




 おじさんは、大きく笑いながら話を続ける。




「じゃあ、お嬢さんに質問。おりーぶしまちゃんの隣にいるのキャラの名前は?」





「え…?え、えーーっと……」




 おりーぶしまちゃんのぬいぐるみの隣には、ピンク色のかわいらしいキャラクターだった。しまちゃんの女の子版だろうか。




『おりーぶしま子』という単語が浮かんだが、違ったら恥ずかしいので、アイディアが浮かばないふりをし、首をかしげる。




 私の様子に、またもおじさんは笑った。




「あっははは! さすがに難しいかぁ。」




「この子はね、『ミモザのりくちゃん』って言ってね、おりーぶしまちゃんのガールフレンドなんだよぉ。」





 これは、営業トークなのだろうか。そのテンションの高さに、私は魂の抜けた返事をする。





「ピンクで可愛いでしょぉ。春、小豆島に咲いてる『ミモザの花』がモチーフでねぇ。」




「今…うーーんちょーーっと早いかな。あともう少しで、至る所に見れるはずだよぉ。せっかくだから買っていきなぁ。」




 バレないように、ちらっと値札を見る。ぬいぐるみは2000円近くした。さすがに、まだバイトを始めていないため、その上にある600円のキーホルダーを買うことにした。




 ボーイフレンドとガールフレンドという関係なら、2つセットで買うしかない。




「まいどぉ。」




 私はペコリとお辞儀をする。




 結局購入したのは、瀬戸内レモン味のポテトチップスとおりーぶしまちゃん、ミモザのりくちゃんのキーホルダー2つ。





 私はレジ袋から、2つのキーホルダーを手に取る。




 2人は、恋人同士、か。




 私がこのストラップを持ってて、一体何になるんだろう。




 もし、恋人がいたら、しまちゃんとりくちゃんをお互い持ってるなんて、ロマンチックなことができるけど。





 ついつい、2つ買っちゃった…。






『彼』が受けとってくれるなんて、何も保証はないのに。




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