表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】キミと手を繋ぎたい。オリーブの香る島で。  作者: 咲山けんたろー
第4章 最終章。私が選んだのは――
PR
25/32

第25話 私の未来


 2月。1年の中で1番寒い月が、今年もやってきた。


 空気も乾燥しており、室内も暖房をつけていないと、肌が痛くてどうにかなりそうだ。




 今日は、入試本番。1月の共通テストでは、英語のリーディングが難化したため、全体的にいい点数が取れなかった。そのため、共通テスト利用は使わずに、2次試験のみで合格を勝ち取るという作戦に変更した。






 玄関で靴を履いていると、母親が心配そうに声をかける。




「雛子ぉ。最後、頑張るのよ。」




 そして、今日。本命の大学の受験日だ。これまで、私が受けた大学は、中堅下位大学〜準上位大学まで、幅広く受けた。浪人はしたくなかったので、必ず受かるような滑り止め大学も受験したのである。




 有難いことに、中堅下位大学には合格を貰っている。だが、まだ、準上位大学には、1個も合格を貰っていない。泣いている暇はないので、『不合格』を今度は『合格』に変えてみせるつもりで、今日まで死ぬ気で勉強をしてきた。




 私は母親と目を合わせ、笑顔で背を向けた。




「ありがとう。お母さん。私、やりきってくるね。」




「まって……雛子。」




 行くのを止められ、目を丸くする。




「今日は寒いから……これを持っていきなさい。」




 母親が取り出したのは、先ほど開封したばかりのカイロだった。1つではなく、3つほどあった。




 受け取ると、それは既に温かくて。家族のぬくもりのようなものを感じた。




「わぁ…ありがとう。」




「終わったら連絡するのよ。」





 私は、また笑顔で頷く。そして、玄関の扉を空けた。




 私は家族の前では、泣かないし、弱音を吐かない人間だから、きっと、心配をされているのだと思う。





 でも、本当は、今にも泣きそうだった。





 ※ ※ ※



 受験会場まで、電車で40分ほど。




 最後まで復習は欠かせない。直前に確認した問題が出ることなんて、ざらだからだ。




 電車に揺られながら、ボロボロに破れた単語帳を眺める。




 この単語帳とも、今日で終わりか。




 そう思うと、なんだか感慨深いものがある。たくさんのカラフルな付箋や、間違えた場所の印。あれだけ覚えるのも苦労したのに、今では、スラスラ単語の意味もわかるようになっている。





 携帯のバイブ音がなり、私はバッグから取り出した。




 もちろん、翔月(かづき)くんから。






『ひなこちゃん!! 受験頑張ってね!!! 小豆島で待ってるよ!!』





 相変わらず、元気な文体。彼はいつでも明るくて無邪気だから、それだけで緊張がほぐれる。





 終われば、また、彼らに会える――。





 その事実を思い出して、今日の受験を絶対に成功させようと誓った。




 そして、トーク履歴をスクロールする。




 私は、また陽樹(はるき)くんとのトーク画面をタップする。




 私が送った、修学旅行でのお礼から、ずっと返事が来ていない。もちろん既読もついていないし、音沙汰もなかった。どうして、返事が来ないのかも、ずっと分からずじまいだ。




 翔月くんにも、陽樹くんのことを聞いておいたけど、本当に伝わっているのかも怪しい。






 もしかして、なにかあったのかな。でも、なにかあったら、翔月くんがきっと教えてくれるはずだし。





 嫌いになっちゃったのかな。






 考えるのも今は時間の無駄だと思って、単語帳を取り出す。




 取り出して、もう1度バッグの中を覗き込んだ。





『小豆島キャラクター おりーぶしまちゃん』と書かれた、タオル。




 このキャラクターが、癖になる可愛さがあって、持ってきちゃった。お守りみたいで、つい。




 気になって、おりーぶしまちゃんのことを少し調べた。




『小豆島を明るく、元気にする王子』なんだって。




 きっと、彼からの連絡が来なくても、今日も、地元・小豆島で、お店を頑張っている。




 なんだか、これを見ると、陽樹くんが側にいて、応援してくれている気がするんだ。




 私のメッセージに既読すらつけない人なのに、こうやって考えちゃうの、自分でも変だと思う。




 でも、頭から離れなかった。





 あの日。彼らの修学旅行の日。私にくれたこのタオル。





『ねえ、洗って返すよ―――。』




『いいから。黙ってもらっとけ。』





 この会話の流れが、ずっと、ずっと頭から離れずにいた。あれからメッセージでも話せていないから、近況も分からないし、彼がなにを思っているのかも、全然わからない。







 陽樹くん、今、何してるのかな――。






 私はね、ずっと会いたいよ。会いたくて、たまらないよ。




 こんな気持ちになっているの、私だけなのかな。









 ※ ※ ※



 降りる駅がアナウンスされ、私は電車を後にする。





 いよいよ、私の大学受験、最終日です――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ