第19話 オレの誓い
数時間前。
お台場で自由行動している時。『それ』は起こった。
徒歩圏内で、たこ焼き、タコス、ハンバーグなど、片手で食べれるものがたくさん売られており、オレ・翔月らはずっと浮かれていた。
おまけに、この人の多さ。まるで、シティーボーイの仲間入りしたかのような、オトナな気分になっていた。
「うますぎる! 東京の食べ物は何でもうまい!!」
片手にハンバーガー、もう片方にタコスを持ちながら、オレは班の皆に話しかける。
男子3人と女の子3人の6人班。皆、オレの食べ歩きについてきてくれたけど、だんだん限界が来たみたいだった。
隣にいた女の子がオレの様子を見て、ため息をつく。
「かづきぃ。ちょっと食べ過ぎじゃない? うちら、そんな食べれないよぉ。 」
「ほんとにそれ。食べるならスイーツがいい。あ! クレープ屋発見!」
彼女らの言葉に、オレは首を傾げた。
やっぱり、性別によって食の好みが大きく違うなと思う。オレら男子は、腹に溜まる炭水化物がいいけど、女の子たちは、スイーツなどの甘いものを食べたいようだった。
「うちら、あっちの店行ってくるから、かづき達はそこら辺で食べてて。」
「えー? 行っちゃうのー? わかった!」
そして、男子と女の子とで男女別行動になった。
男3人で、食を楽しんでいた時――
「オレらで写真撮ろうぜー!!」
そう自分で声をかけて、制服のポケットから携帯を取り出そうとした。
だが――
「あれ!?」
ない。
あるはずの場所に、携帯が入っていなかった。
冷や汗をかく。
「どしたー? 翔月。」
「……え? いやいや、なんでもーー……」
班員の言葉にも、まともに返せない。
ヘラヘラ笑いながら、バックの中も確認する。
ない。
おかしい。確かに、いつも制服のポケットに携帯を入れておいた。バックに入れたら、写真を取るときにいちいち取り出すのが面倒だと思って、ズボンに入れたはず。
ある場所全部探したが、どこにも入っていなかった。
「………がちか……。」
オレはその場で、持っていたたこ焼きを地面に落とした。力が抜けたのだ。
「お、おい…! だから、どうしたんだよ?」
彼らに言おうとも思ったが、心配かけるわけにもいかなかった。
何も言わず、その場で元いた場所へ全速力で戻る。
遠くから、彼らの声が聞こえたが、振り返ることなく、走り続けた。
人が多い場所では、うまく避けることさえ難しい。オレが都会慣れしてないからだろうか。
密度が高すぎて、地面に落ちているであろう携帯も探すのも一苦労だ。足ばっかり多くて、目がおかしくなりそうだった。
どこだ……!! どこに落とした…!!
どうして、こんな大事なときに…!!
走る音ともに、ひなこちゃんの顔が脳裏に浮かぶ。
初めて会った日のこと。オレが彼女に貝殻をプレゼントしたときのこと。
『ありがとう! これ見て、翔月くんのこと、思い出すよ。』
お互いの生活が始まって、何気ない会話をした日のこと。
『今日も暑いね〜。早起きで眠たいけど、一緒に頑張ろうね。』
そして、今日。2度目の再会の日。
『私も、翔月くんに会えるのすごく、すごく楽しみにしてる!!』
だめだ。絶対に駄目だ。
絶対見つけないといけない。
何がなんでも見つけて、彼女に会いに行くんだ。
オレと、人魚姫との約束なんだ―――。
約束の時間、約束の場所に、絶対間に合わせる。
彼女を、1分たりとも待たせたくない。
オレは、ただひたすらに走り続けた。立ち止まっては時間の無駄だと思ったから、走りながら辺りを見渡して、携帯らしきものが落ちていないか、行った場所、1つ1つ確認するように、走り去った。
※ ※ ※
「おお、波原。どうした、ずっと走り続けて。他のメンバーは?」
携帯をなくしてから、どれくらい経っただろう。フジテレビ付近まで走ると、担任教師が目を丸くして、オレを見つめた。
いきなり立ち止まったので、その反動でいつもより息切れが激しくなっていく。この季節なのに、ひどい汗。自分でも額から大量の汗が流れていくのが分かった。
「センセー……オレ、どうしよう…どうしたらいいんだ………センセー!!!」
「オレ…大事な約束が…!!!」
「 …1回落ち着きなさい。 なにがあった?」
オレは、携帯をなくしたこと、東京タワー観光までは制服のポケットにあったことなど、すべて話した。
先生は、すぐさま110番通報し、警察署へ行くことになった。
書類を書いたり、その他の手続きをするため、オレの修学旅行は一時停止をしざるおえなくなった。
時計をみると、時刻は17時30分。当然、ひなこちゃんはもう来ている時間だ。だが、携帯がないため、どこにいるのか、どこの場所で待っているのかも分からない。もしかして、怒って帰っちゃったかもしれない。
署で待っているとき、ずっと胸が苦しかった。
オレの、せいなんだ。
修学旅行だからってずっと浮かれて、それで、警戒心も自然とほぐれてしまった。
地元でなくしものをするより、ずっと見つからないのも、治安が悪いのも何一つわからなかった。
警察の人は、『直近の落とし物の情報は届いていない。盗難の可能性が高い』と言われた。
一瞬で、心にぽっかり穴が空いた気分になって。
もう、ひなこちゃんと連絡が取れなくなってしまうんじゃ……。
約束したのに…絶対に会いに行くって。誓ったのに……
結局、会えないまま、夜まで署まで過ごすことになってしまった。




