第 46 話 静かになった王都で
天然キラキラ男がクラウディアに会いに行って従魔の進化について尋ねたら、高尾が見つけた店とは別の専門店を紹介して貰えたらしい。
そんなつもりのなかった高尾が一番驚いたと思う。
翌日、自宅でナビゲーションAIのナビから話を聞いている所だ。
「ただしNPCから店を紹介して貰える条件は厳しいよ。紹介してくれるのは一定以上の地位や身分のある人物で、君の推しのリエッタは店を知らないNPCに含まれます」
「貴族なら知っている店か?」
「貴族でも知らないNPCもいるよ。具体的な情報は教えられないけどね!」
よほどの高級店という設定なのだろう。
ダンジョンの奥にあった店の非合法さが際立つので、あそこを利用していて大丈夫か?と聞いてしまった。
ナビが「デメリットはないよ」と保証したので大丈夫だろう。たぶん。
「それから好感度とか実績とか、そういう評価の高さがかなり必要だよ。アーサーみたいに異邦人の中でもかなり有名で、好意的に評価されていて、ついでにほのかな恋心以上の好感度がないとね!」
「だいたい不可能だな…」
「まぁね〜」
もちろん高尾以外のプレイヤーたちにも公開された情報なので、多くの者が「ふざけんな!」と怒り狂ったらしい。
好かれていない自覚があったという話ではなく、アーサー並みのプレイヤーなんて少数だからだ。
「でも数あるルートのひとつでしかないんだよ。君の発見したルートもそうだけど、たくさんあるのに見つかっていないだけなんだ」
「なんか勘違いして発見者探しを止めたみたいだから、俺はどうでも良いけどな」
高尾にとってはうるさい連中が最前線に戻るのなら、それでいい。
攻略の邪魔をされるので、早く消えて欲しいだけである。
アーサーだけしか店に入れなかったらしいが、仲間の分も買えることが判明したのでクラン〈円卓騎士団〉は一番に去った。
ライバルを自認している他のクランの連中は、ますます躍起になっているという話だ。
でもまず、仲が良いつもりだったNPCに尋ねるために駆け回っているようだ。
「そうだね。聞かれないから言ってないけど、アーサーの発見したルートと同じだと勘違いしてるね」
ナビゲーションAIの出すヒントは、プレイヤー側から質問されて答えるものだ。聞かれもしないのに情報を提供するのは、自力で進めたいプレイヤーにしてみれば悪質なネタバレなので。
だからナビも意地悪で黙っているのではない。気づかないプレイヤーたちを陰でニマニマ笑って眺めていないとは言っていないが。
「そうだ。エンジェリック・ラビットは増えそうか?」
「アーサーが進化アイテムが売ってたよって仲間には伝えたけど、あのクラン、着ぐるみ集団にまとわり付かれるだけだから黙ってる方向性になってたね。アーサーに買い物ばかりさせる訳にはいかないって」
そして〈円卓騎士団〉は硬派な攻略クランなので、ペットはあまり飼っていないようである。皆無ではないので、アーサーと親しい何人かくらいがこっそり楽しむだけになるのだろう。
自慢して酷い目に遭うより、自宅でこっそり愛でるだけで良いのは高尾も分かる。
仲間うちだけで愛でることだろう。
…酷い目に遭った高尾はちょっと理不尽さを覚えるのだが。同じ目に遭え、とまでは思わないけど。
「その話は終わったという事にして、リエッタさんに国宝の剣のレプリカを見せに行くか。それからレベル上げだ!」
王都に居座っても良い気がして来たが、隣国には進めてしまいたいのだ。
もうしばらくはレベル上げ強化期間だった。
国宝の剣のレプリカはリエッタさんより他の図書館の職員が食いついて大喜びしたので、何か間違った気分になった。
リエッタさんからも「珍しいものを拝見させていただきありがとうございます」と笑顔を貰えたから良いのだが。
ついでに街を歩いていたら、騎士団の巡回に参加していたクラウディアに「貴方、ア、ア、アーサーに何を吹き込みましたの!?」と怒られた。
尋ねたらどうか、としか言ってないはずなのに。
「鈍感男だから、何も気づいてなさそうなのに…」
「それはそれで口惜しい乙女心だよ〜」
進展しそうにないが、アーサーがクラウディアの存在を思い出したのだから良いのではないだろうか。
他の国にも似たような女性NPCたちがゴロゴロしていそう、とか言ってはいけない。
「ところでリエッタさん狙いの他のプレイヤーは見かけないな」
「あのタイプでさらに眼鏡っ子!とかドジっ子!とか人見知りの陰キャ!という新たな出会いがあって、そっちに流れたからね」
「そういう属性か…」
高尾は眼鏡もドジっ子も陰キャも興味がないので、リエッタさん以上のキャラなんていないなと思う。
ライバルがいないなら静かで良い。
化粧の濃い美人司書狙いのプレイヤーは確認したが、互いに「そっち狙いか…」という視線を交わしただけである。
好みは理解できないが、無言で不可侵条約が結ばれた気がしたものだ。
「そろそろフクロウはテイム出来るかな。まだ難しいか…」
「ウィル・オー・ウィスプがおすすめかな〜」
「エルはそれも怖がるのかな…」
ウィル・オー・ウィスプは王都の西、ファントムバタフライが生息している森の奥にある湖に夜の間だけ出現するモンスターだ。
ノンアクティブでテイムしやすく、珍しくはないが人気がある。
アンデッド系ではあるが、無害な光の玉でしかないからだ。人魂だけど。
カラバリが多く、イルミネーションみたいで綺麗と店頭に出している生産職もいるらしい。それで怖がる客は特にいないそうだ。
アンデッドが苦手なエンジェリック・ラビットのエルがどんな反応をするのか、まだ確かめていない。
大丈夫だとは思うが、プレイヤーとは違うので『アンデッド系』は全て嫌う設定かもしれない。
「納品クエストがあるし、行ってみるか。フクロウ屋敷のフクロウ納品クエストも気になるんだよな…無限にフクロウを集めてるのか…」
「ウサギなら無限に集める人が何を言ってるの…?」
「うむ…」
可能なら高尾も無限に可愛いウサギを集めたい。不可能だからやらないだけである。
そしてフクロウ屋敷のクエストは、報酬が良いので人気があるそうだ。
フクロウ屋敷の主人は隠居した元公爵だか侯爵で、貴族社会で顔の効く大物らしいのだ。
そんな人物の好感度が上がって、一見さんお断りの王都の一部の店に入れるようになる紹介状を貰えるのである。
もちろん従魔の進化アイテムを扱う店は含まれていない。
レアアイテムを扱う高級店ばかりだが、手に入れて損のない紹介状だ。
「そうか。フクロウ好きならフクロウ屋敷の主人の好感度が爆上がりだな!?」
「同士なら仕方がないよね〜」
高尾はフクロウよりウサギが好きなので、どこかにウサギ好きの同士がいないかなと思う。
だがフクロウ好きなら、フクロウ屋敷で従魔の進化アイテムを扱う店を紹介して貰えそうだと思ったのだ。
「このくらいなら、気づくプレイヤーもいるだろうなぁ」
「そうだね。フクロウ好き本人が気づく可能性はともかく。フクロウ好きの利になるだけだから、教えようと思うかはともかく」
「なるほど…」
他人の利になるだけなら黙っている者もいるだろう。そもそも独占して先行者ヅラしたい連中が騒いでいたのだ。
高尾は着ぐるみ集団への恨みがあるから一生黙秘するつもりだし。
「下手に周知されたら、買って来て!とまとわりつかれるしな、今の状況じゃ…」
「着ぐるみ集団の悪夢再びだね!」
フクロウ好きなプレイヤーに迷惑なので、黙っているほうが親切な気がして来たものだ。




