第 41 話 廃城の攻略
「プレイヤーが消えたな」
高尾がログアウト休憩から戻って、自宅で従魔たちと遊んでから街に出ると鬱陶しかったプレイヤーたちの姿がほとんど消えていた。
「別のイベントが発見されたからだよ。現金だよね〜」
ナビゲーションAIのナビが言うには、最前線のプレイヤーたちが新しいイベントを発見したのだそうだ。
ネタバレになるので詳しくは聞かなかったが、クリアすると何かが強化されるので慌てて戻ったようである。
特にトップ面したい連中は差が出来ることを嫌うからだ。
「クリアしたら戻って来そう…」
「鳥頭なら忘れるかもね!」
鳥頭もいるだろうが、そこまでアホじゃないプレイヤーたちを見て思い出すだろう。
だが一時的にだろうとプレイヤーがいないのなら、高尾も攻略を進めるチャンスである。
行きたかったフォースンの廃城の攻略をすることにした。
「アンデッド系が出るからエルは留守番だな」
「フィフスンのダンジョンより怖くないのにね」
「…あそこは怖いというよりキモい所だろう」
クリアはしたいのだが、行きたくない。
高尾もまだしばらくは近づきたくないダンジョンだった。
目当ての廃城はフォースンの街の南東にあった。廃城の近くの森を東に抜けると、セカンの街から通った墓地フィールドがある。
地図上での位置関係は、けっこう近いのだ。
どちらもフォースンの英雄イベントに関係していた。
高尾は愛馬ハクで廃城まで駆けて来て、他にプレイヤーの姿がないことを確かめてヴァンパイア・プリンセスの沙姫とヒーリングバードのメロディを召喚した。
ここはこのメンバーで攻略するつもりだ。
「悪魔のいるダンジョンよりレベルが高いけど、マリオットのいるダンジョンよりは低いから大丈夫だよな」
「今のレベルなら簡単だと思うよ」
フィフスンの街に行ったので買える物も増えたのだ。装備は新調していないが、攻撃アイテムなどは仕入れている。
アンデッド系が出ると聞いて、始まりの街ファストで聖水も作って来た。
レベルがだいぶ上がっていたから、高尾ひとりでも問題なく素材回収に行けたので。
準備はしていたから、今日はすぐに来られた。鬱陶しい連中が戻って来る前にクリアしてしまいたい所である。
廃城はダンジョンではなくフィールド扱いだが、かなり広い敷地内に大きな城の廃墟がある。ダンジョン並みに攻略に時間がかかりそうだった。
壊れた城門から中に入るとゴーストホースという馬のゴーストが出て来た。
そんなに強くなかったが、エンジェリック・ラビットのエルは怯えるだろうヴィジュアルだ。
「同じ馬なのに、ハクのカッコ良さと比べるべくもない…」
「凶悪な姿で作ってるからね。迫力満点!」
次にゴーストナイトという騎士のゴーストが出て来たが、墓場に出るゴーストたちと違って凶悪なヴィジュアルだった。
「墓場のゴーストが進化すると、ああなるのか…?」
「ゴーストの進化も分岐があるんだよ。こっちはより禍々しくなったほうのゴースト系だね」
ゴースト系の従魔は物理攻撃無効で一部の冒険者たちに人気だが、ここのゴースト系は不人気らしい。納得しかない。
もちろんこっちの禍々しいほうが好き!という者もいるそうだが、少数派だ。
ここに現れるゴースト系モンスターは、どうやら城の関係者たちが元になっているらしい。
生前は英雄に仕えていた人々のようなのだ。
「何が起きたのか気になる…!」
「イベントを進めれば判明するかもしれないね」
ナビはヒントくらいしか言わないが、ネタバレされたくないので高尾は気にせずに攻略を進めた。
ゴーストソルジャーとかゴーストメイドとかゴーストバトラーとか、城で働いていたに違いない人々のゴーストを倒して進む。
禍々しいのだが一般人っぽいので、なんとなく申し訳無い気分にもなった。
ひと部屋ずつ家探しをしたが、たいしたアイテムは見つからなかった。たまに宝箱があるが、イベントには関係ない物が入っているだけだ。
強い剣が出て来た時はテンションが上がったけど。
廃城の中を進み、高尾たちは城の主の書斎だったと思われる部屋を発見した。
本棚に残った物はボロボロで読めそうにないのだが、こういう所が怪しいのだ!と張り切って家探しをした。
沙姫とメロディも手伝ってくれた。
「キュアッ」
「何か見つけたのか?」
引き出しをひとつずつ開けて見ていた高尾は、メロディの声に振り向いた。
メロディは沙姫の肩の上に停まっていて、沙姫は書斎の机の近くでしゃがみ込んでいた。
床に何かあったようだ。
「床に隠し扉とかベタだけど…開けても何もないな…?」
沙姫が床板をスライドさせて隠し扉を開けてみせた。しかし小さな空間には何も入っていなかった。
他のプレイヤーがすでに持ち去った、という話ではない。宝箱と同じく、プレイヤーごとに入手可能になっているはずだからだ。
こういう仕掛けがあるのにハズレとは考えにくいので、何かないかと探してみたが全く分からなかった。
「…難易度高くないか…?」
「気づけば簡単なのになぁ〜」
「くっ…!」
何か見落としているらしい。
英雄関連で何があったかと考え、所持アイテムを見直す。
「…あ!本か!」
「本棚にたくさんヒントが並んでたのに…」
「気づけば簡単だった…」
街で買った英雄伝説の本を出し、小さな空間に入れてみる。ぴたりとハマって、鍵の役目をしていたようで床の一部が音を立てて開いた。
今度は下に向かう階段が現れた。
ここは城の3階なので、地下ではなく隠し部屋へ続いているようだ。
「でも後世に出版された本が鍵になってるって、おかしくないか?」
「細けぇ事を気にしてるとハゲるぜ!と設定作った人が言ってた」
「なるほど…」
きっと修正不可能な段階になって気付いて、開き直ったのだろう。そんな気がする。
高尾も細かい事を言うのは止めて、ランプを取り出してから階段を降りた。
隠し部屋にはモンスターはいなかった。中ボス戦を警戒していたが、そういう場所ではなかったようだ。
「宝箱だな。イベントアイテムかな」
ワクワクしながら宝箱を開けると、入っていたのは鏡だった。
「死者を映す鏡!英雄の姿をNPCにも見えるようにするアイテムか!」
「会話は出来ないけどね」
「姿を確認できるだけでもイベントが進みそうな気がする。筆談は可能か?」
「どうかな〜」
英雄のゴーストに筆記用具が使えるとは思えないが、一応用意しようと思う。そんなに高い物ではないのだ。
あとは誰を連れて行けば良いのか分からないが、街に戻ってから考えれば良いだろう。
その後も廃城内の探索をして、他に重要そうなアイテムは手に入らなかったが、奥にいたボスを倒したので高尾は満足して攻略を終えた。
もうここに来る事はないだろう。
禍々しいゴーストだろうと、メイドさんを倒すのはちょっと心苦しかったので。




