表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5年越しの『アルカディア』  作者: 兼乃木


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/45

第 31 話 英雄イベントを探そう

 フォースンの英雄エイドリクスは、悪魔の軍勢からフォースンの街を守った人物だそうだ。


 高尾(たかお)は買った本を流し読みしただけだが、重要そうな部分はそのくらいだろう。


 始まりの街ファストに買った自宅で軽く読書していた高尾は、次の予定を考えながら言った。


「城に隠し財産があるとか、隠しクエストがあるとか、そういう奴だな」

「攻略情報は教えられないよ。掲示板にも載ってないよ」

「…未発見イベントなんてある訳ないから、思わせぶりなだけ、だと…!?」

「未発見イベントはたくさんあるよ!代表的なところで、従魔の進化に関するクエスト」

「…たくさんか」

「あ、ボクとしたことが!」


 ナビゲーションAIのナビがわざとらしく言って笑っている。


 プレイヤーが百万人以上いるハズなのに、5年も続いているMMOゲームで未発見イベントがたくさんあるなんて、難しくし過ぎたのではなかろうか。


 最強生物ドラゴンの入手イベントが難しいのは理解できるのだが。


「とりあえず行ってみるか。あと墓場のゴーストのイベントも進むか探してみよう」

「廃城もアンデッド系のモンスターばっかりだよ」

「ぴゅい!?」

「…エルは留守番で」


 エンジェリック・ラビットのエルはアンデッドが苦手なので、「なんでそんな所に行くのさ!」と怯えを隠そうとしながら怒っている。


 逆にヴァンパイア・プリンセスの沙姫(さき)は期待に目を輝かせていた。


 従魔に個性があるのは良いのだが、怖がって戦わない従魔なんて怒るプレイヤーもいるだろう。

 高尾は可愛いからいいか、と流しているけど。


「推奨レベルとか聞いて、タイニーモンキーの生息する森にも行きたいな」

「その森の奥にみんなが大好きなゴブリンの集落があるよ!3パーティ以上で挑む集団戦が楽しめます」

「3パーティどころか、フレンドの1人もいない人間はどうしたら良いんだ?」

「レベルを上げまくれば、1人で蹂躙できるよ!無双ゲー!」


 虚しいだけなので高尾はやらないだろう。

 そんなレベルになっていたら報酬も不用品だろうし。


 しかし沙姫が期待に目を輝かせて、高尾の袖をつんつんと引っ張る。やってみたいらしい。


「…そうか、沙姫ならそんなにレベルを上げなくても無双できるのか」

「うわ、できそう…」


 ナビも沙姫を見て認めた。


 3パーティも必要のない戦いという名の蹂躙が始まる。


 でももう少しレベル上げをしてからにしよう、と説得したのだった。






 フォースンの街の散策をしながら、高尾はNPCたちに英雄の話を聞いて、店を覗いて買い物をして歩いていた。


 街の住民にとって英雄は誇りのようで、誰もが機嫌良く話してくれたものだ。

 たまに本には載っていないエピソードが出て来るが、ご先祖様から伝わっている話だそうだ。


 真偽は不明。


「掲示板には英雄イベントの情報はあるのか?」

「ないよ」

「…何故だ」

「セカンに滞在中に墓場でゴーストに遭遇するイベントは有名だけど、先にサードンに行くからね。フォースンに来る頃には忘れてる人が多かったんだよ、君のように!」


 確かに高尾は忘れていたので、否定できない。

 覚えていたプレイヤーもいてイベントを探したはずだが、特に掲示板では話題にならなかった。


「フォースンに到達してすぐに、ダンジョンが見つかったんだよね。最深部に悪魔系のモンスターがいて、人型でリザードマンより強い!って盛り上がってたからねぇ」

「その話に埋もれて話題にならなかったのか…」

「セカンの従魔屋で失敗しても、強い従魔って聞くと目の色を変えるんだよね」


 強い装備や仲間と聞けば欲しがるものだろう。ゲームというのはそういうものである。


 だからどんどんとインフレして行って、長く続いているほど最前線の性能は序盤と桁違いになるのだ。


「でも悪魔って、英雄の話にも出て来たよな」

「そうだね」

「何か繋がりがあるのか聞いてみるか」


 かつて少数派のプレイヤーたちも気付いて探したはずだが、他者に教えずに終わらせたのだろう。

 掲示板に書き込まないタイプもいる。


 高尾など見もしない派だ。

 ナビゲーションAIに聞けば事足りるし。


 だが先の分からないイベント探しは、ネタの割れているゲームより何倍もワクワクした。


 本当に未発見のイベントがたくさんあるのなら、そういうものを探すプレイは楽しそうだった。






 悪魔が出て来るダンジョンは街の中に入口があった。

 最初は立入禁止だが、ギルドで尋ねて簡単なクエストをこなすと許可がもらえるそうだ。


 なのでまずはクエストを受けた。


「英雄が倒した悪魔の軍勢って、そのダンジョンから出て来たのか?」

「現在はダンジョンになっていますが、当時は魔界と繋がるゲートが開いてしまったと言われていますね」


 クエストを受けるついでに受付嬢に尋ねたら、そう教えてくれた。

 英雄が悪魔を倒し、ゲートを塞いで、なんやかんやあって封印した場所がダンジョン化したらしい。


 なんやかんやって何だと聞いたら、受付嬢は渋い顔で「魔術士の方たちが専門用語で長々と語られていらっしゃいまして…」と答えた。


 それは迂闊に聞かないほうが良い話だ。高尾もそう悟った。


「どうしても知りたい場合は魔術協会でお尋ね下さい」

「いや、概要が分かれば充分だから」

「精神修行にぴったりの苦行なのに!」


 きっと聞いた内容が右から左に抜けて行くだけなのに、拘束時間が長くてツラいのだろう。ナビが笑っている。

 なんたる時間の無駄か。


「じゃあアレだ。魔界なんてあるんだな」

「世界中にゲートが確認されていますね。封印して守っているそうですよ」


 それはメインストーリーに関わって来そうなネタである。知らんけど。


「許可をもらったらすぐにダンジョンに行っても大丈夫な難易度か?他でレベル上げして来たほうが良いのか」

「階層ごとに難易度が上がるので、最初の階は大丈夫だと思います」

「レベル上げにも適した場所だよ」


 それなら様子を見ながら攻略して行けば良さそうだ。最深部に悪魔以外に何が待っているのか楽しみである。


 ダンジョンをクリアしたら英雄イベントも進む気がして来た。


「あ、そうだ。廃城はどのタイミングで行こうか」

「ダンジョンをクリアするより難しい場所になっていますね」

「…何があったんだ、英雄の城で」


 しかもアンデッドの巣窟らしいし、なんで英雄の城の管理を怠ったのか。いや、何かしらの事件が起きたのか。


 イベントを進めるのがますます楽しみである。

 でもあんまり長くかかって面倒くさいタイプのイベントではないことを願った。


 サードンのイベントは拘束時間が長くて面倒くさいと有名だから、余計にそう思ったものだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ