表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5年越しの『アルカディア』  作者: 兼乃木


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/40

第 27 話 オークション長者

 オークションが終了して、商業都市セカンのギルドで入金確認をした高尾(たかお)はしばらく固まっていた。


 予想はしていたつもりだったのだが、予想の100倍以上の額になっていたのだ。


「ゴーストって…いや、オークションってこんな金額が動く場所なのか…?」

「今回はかなり特別だと思いますよ。ドラゴン・パピーと同じくらいの値がついたそうですから」

「ドラゴン、高いんだな…」


 ギルドの受付嬢も「異邦人の方々、お金持ちですから」と呆れ気味だ。

 ステータスで比べたら、種族値1のゴーストは最強生物のドラゴンに遠く及ばない。


 ただ見た目が良かっただけなのだ。


「オークションは白熱したのか?」

「かなりギスギス…すごい熱気だったようです」

「面食いってどこの世界でも凄いパワーを発揮するよね!」


 ナビゲーションAIのナビが笑い転げている。

 きっと別のナビが見た情報を共有して、どんな様子だったのか知っているのだろう。


 耽美系美少年を巡る女の戦いなんて、高尾は見たくもない。


「落札したのは女だよな?聞いても良い情報か?」

「いえ、美少年に見えるボーイッシュな美少女だ!と思い込んだ方が、その…」

「怒り狂った後で知り合いに売り払ったから、高尾の所には来ないよ。たぶん」

「ソイツが無駄に値段を釣り上げたのか?」

「そうとも言う」


 1番金を持っている廃人が乱入して荒らしたのかもしれない。

 女たちもドラゴン並みに高騰するとは思わなかっただろう。


「…オークション前に買い取ろうとしていた連中、10万払うわ!とか言ってたけど、ぼったくりも良いところだったな」

「100万からのスタートだったのに…」

「相場をまだ知らないと思ってたんだろうな…」


 高尾にとっては10万も大金に思えていたが、欲しいアイテムを全て買うにも足らないくらいだった。

 スキルとか高いから。


 だから10万はさすがに安いだろうと思っていたのだが、予想以上に酷いぼったくりだったらしい。


 ブラックリストがあったら迷わず全員ぶち込んでいる所だ。


「それよりスキル買おう。今なら全部買える!」

「いらないスキルも全部大人買い?」

「…いや、必要なものだけだな」


 騎士系メインで育てる予定なので、高価な上級魔法などは買っても持ち腐れるだけだ。

 知力(INT)が低いとMPの消費が多いくせに威力は出ないので。


 今すぐ買わないといけない訳でもないので、前から欲しかったスキルだけ購入した。

 ギルド内で手軽に買えて便利だった。






 セカンにある店で目をつけていた従魔用のアクセサリーも勢い良く購入して来た。


 エンジェリック・ラビットのエルには小さな黄金の王冠を、ヴァンパイア・プリンセスの沙姫(さき)には花モチーフの髪飾りを選んだ。


 エルは気に入った様子で見ていたから心配はしていなかったが、沙姫に贈った物は高尾の好みで選んだのだ。

 気に入らなかったらどうしようと思ってしまったが、嬉しそうに受け取ってくれたのでホッとした。


 沙姫の黒髪に白と水色の花が良く似合っている。


「ピンクより青系がいいなと思ったんだ」

「エルがピンクだからじゃないの?」

「…なるほど」


 沙姫がエルを抱いていると、同系色より青系が映える気がして来た。

 エンジェリック・ラビットは桜色っぽい薄紅色なのだ。


 一緒にいることが多いのだし、映えるのだから良しとした。


 始まりの街ファストの宿屋の一室でのんびりと過ごしながら、高尾は沙姫の服はどうしようかと悩む。

 どこでどう注文したら高尾の望む物が手に入るのか、いまいち分からないのだ。


 女物の服とか、恋人いない歴=年齢の高尾には敷居が高すぎた。


 相談できるフレンドもいないし。


「ヴァンパイア・プリンセスだとバレて騒がれたくないし、プレイヤーの店は却下だな」

「酷かったよね、見た目の良い従魔を手に入れようと群がるプレイヤーたち」

「男だって言ってるのに、美少女だと決めつけて落札した奴が難癖をつけに来そう…」

「ぴゅい…」


 それは来るね、と言うようにエルも頷いていた。

 騙しやがったんだから代わりに寄越せとか喚きそう。


 しかも沙姫は可愛いだけではなく、ものすごく強いのだ。狙われない訳がない。


 オークションを経て高尾の危機感も高まった。このゲームのプレイヤーたち、かなり民度が低いのだ。


 着ぐるみ集団だけが例外ではなく、あんなのがゴロゴロしているのだろう。


「…やはり理想郷(アルカディア)ではなく、終末世界(ディストピア)なのでは?プレイヤーが」

「ゲームじゃなくて、プレイヤーの話なんだねぇ」


 初心者支援を掲げているプレイヤーの店はマトモというか、感じの良い店員たちだった。

 売り物も新人プレイヤー向けの性能と価格で、あそこで装備を新調しようかなと思っているところだ。


 だから全てのプレイヤーが酷いとは思っていないのだが、酷い連中ばかり見てしまったのである。


 クラウディアのファンたちは問答無用で殺しに来たし、美少年狙いの女たちはぼったくろうとして来たし。

 廃人たちも(他に入手方法が不明なだけだが)レア物を二束三文で巻き上げようとしていたらしいし。オークションで大金を出せるくらい所持金があるくせに。


「…服の前にくつろげる我が家を手に入れるか」

「ぴゅいっ!」

「あと兎は何羽まで飼っても許されるだろう…!」

「餌をどれだけ用意できるかにかかってるね!」

「それもそうだな」


 高尾に作れる量などたかが知れている。

 大量に買える訳でもない。


 オークションで手に入れた資金は有限なのだ。


「家を買うなら家具も欲しいよね〜」

「…そうだった!」


 家の値段は確認してあるが、家具は未チェックだった。安い買い物ではないだろう。


 でも1羽…いや、1羽で留守番させるのは可哀想だから2羽だ!と最低ラインを決めたのだった。






 大通りに近い1等地はさすがに高すぎたが、ファストの街の南門へのアクセスがそれなりに良い場所に空き家があった。


 転移ゲートのある中央の教会には遠いので、そんなに人気のある立地ではないらしい。


 しかし南門の外で兎たちを愛でながら薬草採取をする機会が多いだろう高尾には、かなり理想的な場所だった。


 おかげで思ったより少し広い家が手に入った。


「ログアウト用の俺のベッドと、エルたちがゴロゴロできるカーペットは必須だな。沙姫にもベッドが必要か」

「兎たちの寝床も用意してあげたら?」

「従魔屋で売ってたな」


 自分用にはベッドさえあれば充分だが、従魔たちが快適に過ごせる家具はいくつあっても良い。


「クッキーを作れる設備も必要だね」

「…使いきれないほどの大金だと思ったのに、すぐに底をつきそう」


 欲しい物が無限に湧いて来る気がして来た。

 だが調理器具は揃えておきたい物だ。


「サードンに行ったらキュアバードで金策するか…説得(テイム)しやすいと良いな」

「テイムしやすかったら自分でテイムしてると思うんだ、ボク」

「なるほど…?だがリザードマンやゴーストは言うほど難しくなかったな…」


 そして品薄だから金策になってくれたものだ。

 出現率が低い美少年ゴーストは除外して考えている。


「買うのはNPCたちだから…いや、プレイヤーたちも欲しがってなかったか?」

「キュアバードの生息してる森には、フォレストタイガーもいるからね。奴のせいで難易度が1段上がったと有名だよ」

「従魔屋が言ってたな」


 能力的にはオオカミと同系統のモンスターだが、虎好きには人気があるそうだ。

 高尾も見た目が格好いいのでキライではない。


 でも前衛物理で防御力が低めのスピード型は間に合っているのだ。

 防御力が高いタンクが欲しいくらいに。


「…オオカミと同じで話がなかなか通じない気がする。イノシシほどじゃないと思いたいけど」

「ぴゅいー…」


 エルもオオカミは話が通じなかったと同意している。

 説得しながら抑え込むのに骨が折れたものだ。


「…鳥はテイムしたことないからな。どうだろう」

「好戦的な種族ではないよ、キュアバード」

「逃げるほうなんだろう」


 イノシシみたいに猪突猛進なのは困るが、人間を見ると逃げるタイプも厄介そうだ。


 とはいえ先の心配より家具の購入だ。

 従魔屋で揃えてから、ギルドで良い家具屋を教えてもらえないかなと思うのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ