第 23 話 商業都市を目指そう
高尾がテイムして来たリザードマンたちは、販売されるとすぐに売られて行ったそうだ。
従魔協会が信用できる相手にのみ声をかけただけで、宣伝はされなかった。
以前からリザードマンを欲しがっていた従魔士系の冒険者NPCに売られたらしい。プレイヤーじゃないんだな…と思ったが、フレンドのいない高尾にとってはどちらでも良い話だ。
リザードマンたちは薬草クッキーのおやつを貰いながら、従魔士のもとで活躍することだろう。
リザードマンの代金でそれなりの資金が出来た高尾は、初心者支援を掲げるプレイヤーのクランの店に来ていた。
客としてなら多少関わっても迷惑はかけないはずだ。
でも騒がれたくないのでエルと沙姫は連れていない。今日は服ではなく武器と防具を買いに来たのだ。
「5周年記念の装備より性能が高いと、けっこうな値段になるんだな…」
「装備は初心者には嬉しい性能だったでしょ!最初の街では買い替えなくて良いくらいの性能なんだよ」
ナビゲーションAIのナビがドヤッている通り、5周年記念で貰った装備はまだ使えそうである。
最前線に追いつくには全く足りないが。
高尾の装備はしばらく考えなくて良いとして、沙姫の装備である。
値段と相談しながら、高尾の物より少し性能の良いものを一式揃えることにした。
プレイヤーメイドなのでボーナスが乗っているとかで、NPCの店の物より高性能だ。
「よし、リザードマンのボスに勝てたらセカンに行くぞ」
「リザードマンのボスのほうが強い設定だよ」
「…なんかそんな話になってた気がするから、先にリザードマンのボスだ!」
ついでにリザードマンたちをテイムして来たい。沙姫の服を買うお金が残らなかったから。
それから買いたいスキルがまだあるので、金はいくらあっても余らなかった。
リザードマンのボスは強かった。
沙姫がいなかったら勝てなかっただろう。
でも装備を新調した沙姫のほうが強かったので、楽勝だったと言える。
リザードマンのボスより弱いというオオカミのボスに苦戦する余地などなかったので、高尾たちはあっさりと次の街に到着した。
東西南北に伸びる街道の中心にある商業都市セカンは、王都に次ぐ大都市だ。
始まりの街の倍近い規模の都会だった。
「ここは店も多いし、人も多いな」
「田舎と比べちゃ駄目だよ〜。サードンやフォースンもファストより都会だよ」
始まりの街が1番の田舎らしい。
隣に商業都市があるとはいえ、北に秘境が広がるだけの場所だ。他に小さい村がいくつかあるくらいである。
港街や東の国境に近い街とは比べものにならないのだろう。
そんな大都市なのでエンジェリック・ラビットとヴァンパイア・プリンセスは騒ぎになりそうなので、今は送還している。
ナビゲーションAIのナビを連れているだけだ。
「まず教会で転移ゲートに登録して、ギルドに行けば良いんだよな」
「忘れるとボス戦からやり直しになるね」
「ボス戦より歩く時間のほうが長いけどな」
転移ゲートを使えばファストには無料で移動できる。ファストにしかない薬草クッキーを買いに何度も戻ることになるだろう。
薬草採取もしたいし。
ボス戦のおかげで従魔士はコンプリート出来たので、今は見習い騎士の高尾は騎士団にも行きたかった。
騎士ルートをようやく進められそうだ。
「大きい街だけど、服はプレイヤーメイドの所が良いだろうか…」
「どこで作ってもヴァンパイア・プリンセスだってバレそう」
「でも沙姫に合わせて作ってもらいたい…」
既製品でも似合うだろうが、どうせなら一点物にしたい。無駄なこだわりである。
しかも高尾はデザインに口を出すほど詳しくないし。
現実なら考えないが、ゲームの中だとこだわりたくなるのは何故なのか。
やはり手軽に稼げるからだろうか。
せっかく静かなのに騒がれたくはないが、そのせいで我慢させられるのも違う気がする。
5年も我慢させられたのに、という思いが根底にあるのだろう。
「プレイヤーよりNPCのほうがマシだな!従魔協会でも何も問題にならなかったし」
「田舎だからね。都会は怖いよ」
「…じゃあファストの店で…でもな」
「田舎だからね」
始まりの街の店は素朴な店ばかりなのだ。
大都市の通行人たちを見るだけで違いを感じるくらいには。
なんか良い店ないかな、と探し回りたい気分だった。
教会とギルドで用事を済ませた高尾は、ギルドで教えてもらった店を見て歩いていた。
おしゃれな女の子の服を扱う店も見たいが、従魔屋も気になる。大きい古本屋があるというので『タルスティン・サーガ』も探したい。
ファストでは売っていないアイテムも多いので、隣近所の店もつい覗いてしまった。
だがまずは従魔屋にやって来た。
「従魔屋は三軒あるんだな。やたら高い従魔ばっかりの店しかないのかと思った…」
「あちらはとにかく強い従魔、とにかく上流階級でも人気のあるレアで美しい従魔というコンセプトの店ですからな」
「ここは可愛い従魔の店か」
「駆け出し冒険者や庶民向けですかねぇ」
ドラゴンに次ぐような強い従魔しか扱っていない店も、レアで美しい従魔しか扱っていない店も、値段が理解できないレベルの高級店だったのだ。
かつての廃人たち、アレを買ったのか?挙げ句に言うことを聞かなくて使えなかったのか?と聞きたくなったものだ。
三軒目はウサギや仔犬に仔猫などの、手軽なお値段で可愛い従魔たちを売る店だった。
高尾はここ以外の従魔屋には当分用がない。
下手をしたら一生用がない。
「薬草クッキーも売ってるんだな」
「従魔たちが喜ぶ餌ですからね。ファストから取り寄せてますよ」
ファストの薬草を使っているということだろう。それは信頼できそうだ。
「この辺りではゴースト系の従魔が高く売れると聞いたが、他に金策に向いた従魔は生息してるのか?」
「スケルトンも地味に需要が多いですよ。死霊術士が求めていますから」
死霊術士が何次職だったか忘れたが、従魔士系のジョブだったはずだ。いや魔術士系とのハイブリッドみたいなジョブだろうか。
確か本人も闇魔法を使っていたはずだ。
スケルトンに死霊を憑依させて強化したり、とにかくおぞましいイメージのジョブである。
でも悪役好きには人気の系統だ。
「ああ、でもクリーパーは買い取りしてませんからね!従魔協会に持ち込んで下さい」
「俺もクリーパーには近付きたくない…」
「持ち込まれた従魔協会の職員も大変そうだね」
クリーパーは下水道に棲むヘドロの化身である。臭くて汚くて、ご近所からの苦情が殺到すること間違いなしだ。
客も寄り付かなくなるだろう。
「南東の森に生息する毒キノコも止めて下さいね。あれも扱いが難しいんですよ」
毒キノコは素材ではなくモンスターだ。毒対策をして行かないと危険な森だそうだ。
代わりに毒の素材がたくさん採取できるので、調合師系が買い取ってくれるらしい。
毒キノコ(モンスター)も毒が専門の調合師系なら飼っているという。
でもあんまりそういう人はいないので、納品クエストもないのにテイムして来てはいけないタイプだった。
「1番需要があるのはフクロウですねぇ。フクロウ屋敷が買い占めてしまうので…」
「フクロウ屋敷?」
「王都の郊外に屋敷を構える貴族の方が、大のフクロウ好きでして。店に入荷したと知ると全てお買上げになられるのですよ」
店としてはお得意様ではあるが、他のフクロウを求める客に文句を言われるのでちょっと迷惑でもあるらしい。
なのでフクロウを店で買うのは不可能のようだ。
高尾もウサギたちを大人買いして買い占めてみたいものである。
「あ、サードンに行けるのなら、キュアバードが人気ですよ。入荷するとすぐに売れてしまって困るくらいです」
「俺も仲間に欲しいけど、自分でテイムするしかなさそうだな」
サードンに行けるようになるのに何日かかるだろうか。だいたい沙姫の力が通用するかどうかになっているが、頼りきりは情けないのでレベル上げを頑張ろうと思う。
レベルを上げるたびに格差が広がるとか、気付かない振りをしておいた。
種族値9は強すぎたのだった。




