59.奈良斑鳩ダンジョン日記⑭
このお話はあくまでフィクションです。現実の寺と似ている部分があってもそれはフィクションです。
「えっほえっほ」
麻痺して指先すらも動かせない伏見を担いでダンジョンの下層へ。走ると揺れるので【飛翔】の魔法でだけどね。【Aチーム】も飛んでついてくる。
「守さん、踏破はしないっすよね?」
「しないよー」
野田君から声がかかるので答えておく。いくらなんでも無差別に無くしはしないって。
【カチューシャ】にトレイン行為をかましてくれたハンターは特定できてて、ちょうど揃ってるので伏見と一緒にお仕置きだ。ちょうど5人なので【Aチーム】に担いでついて来てもらってる。彼らは全員【飛翔】の魔法を覚えてるしね。
意趣返しとして【カチューシャ】にとも思ったけど、彼女らのイメージを悪くしそうでやめた。【Aチーム】は俺に命令された風にすればいい。寄らば大樹は悪役も引き受けるぞ。
なお、俺の上空には配信用のドローンがいて、これも配信してる。
「もう10階だ」
「飛ぶとはえーなー」
「フロアボスが動く前にいなくなってるし」
フロアボスがいるのはわかってるので遠距離からシャイニングブレスで消えてもらった。合掌。
宝石と魔石は拾うよ?
「守さん、どこまで行くつもりなんす?」
市原君に聞かれた。
「せっかくだし、ダンジョンボスに会わせようかなって。トレインのお礼にね」
目には目を、埴輪ハオだよ。
動けない伏見に反応はないけど、聞こえてるはずなので心中やいかに。実は楽しみにしてたりして。
それならキモが座ってるから、まっとうになればいいハンターになりそうだ。
期待はしないけどさ。
「ということでやってきました19階。天然掘りの採石場って感じのところです。大きな岩がゴロゴロしてて空気もどこか砂利っぽいね」
ドローンに向かって話す。
途中はすっ飛ばしたよ。【飛翔】の魔法の制限時間もあるしさ。
「この階だとアイアンゴーレムとアイアンレオが出てくるらしいけど」
アイアンゴーレムは名前の通り鉄の人型ゴーレムで身の丈3メートルほどの巨人だ。素手で殴ったりタックルしたりと、武闘派だ。しかも一撃が重くて、よくて骨折、悪ければ即死ってくらいは凶器だ。
アイアンレオはアイアンゴーレムのライオン版。素早い動きで翻弄してくるスピード型。でも攻撃は重い。
両魔物に共通は、斬撃打撃の効果が半減すること。その代わり魔法とブレスなんかはよく効くらしい。
「5分休憩しようか」
伏見たちを地面に転がして立ちながら水分補給。伏見がすごく睨んでくるけど、無視だ。
のんきにお茶を飲んでたらアイアンレオが10体出てきた。アイアンなライオンは精巧な彫刻みたいですっごい綺麗。美術館に飾れるレベル。
「体がなまっちゃうぜ」
「ひとり2体な」
「早い者勝ちだろ?」
「よーい」
「ドン!」
俺が動こうと思ったらAチームが我先に突撃していった。
「おお、思い切り殴っても一回は耐えるのな」
館山君が自慢のこん棒でぶん殴っても1回は耐えた。でもすぐに追撃を食らって光と消えた。
「【闘刃】も威力は落ちるけど通用するな」
「【一閃】だと一撃で首を落とせるぞ」
「錬金製の大剣だと一撃だ」
「硬いっつっても槍で5回も刺せば倒せるな」
残りの4人も順当に倒してる。アイアンレオの攻撃をかわしたりいなしたりしつつ10体を片付けるのにわずか2分。強い武器の影響はあるだろうけどさ。強くなったなぁ。
「俺の出番なし。頼もしいね」
さてこのままボスエリアへレッツゴー!
やってきましたボスエリア。天然掘りの採掘場から打って変わって地下坑道の巨大空間だ。サッカーができちゃうくらいは広くて、上からは日光が差し込んでる。
「で、あれがダンジョンボスね」
ダンジョンボスはもう判明してて、ゴーレムレックスだ。
体長20メートルほどの鈍色の鋼でできた恐竜ゴーレム。姿はT-REXそのものだ。
筋肉質な足を持ち、巨体にもかかわらず俊敏で、1メートルほどの鉄の塊を連続で吐く。
そのほかにも体当たりや尻尾での攻撃もある。ゴーレムだから遅いと思いこんでると即死する。
ゴーレムのボスらしくて斬撃打撃8割減と化け物級。魔法とスキルがおすすめだね。
「まんま恐竜だ」
「でけぇ!」
「ビルかよ」
「剣が届かねえんだけど?」
「飛んで斬るか?」
「足を斬って転ばせるか?」
「キツイな」
【Aチーム】はすぐさまシミュレーションしてる。
「戦わないからね?」
ダンジョンボスを倒したらダンジョンが無くなっちゃう。そもそも無くしに来たわけじゃない。ダンジョンとうまく付き合ってるところはそのままが一番だよ。
「こいつらを転がしてー、俺たちは下がるよ」
身動き取れないままの伏見たちを地面に転がして、押収しといた武器を収納から出してそばに置く。俺たちは上に行く階段前に下がった。【鎮魂の鐘】を解除して自由の身に。
「【ベヒモス】の皆さん頑張ってね」
「こんなの、倒せるわけねーだろ!」
バッと立ち上がった伏見が武器を構えつつ吠える。他の5人もすぐに立ち上がって「ふざけんな!」「死ぬだろが!」と叫んだ。悲鳴に近いかも。
「クソ、てめえらどけよ!」
「邪魔だ!」
【ベヒモス】らが逃げようとしてるけど俺たちが階段を占拠してるからどうしようもない。
「あれ、普段は力で屈服させているんですよねぇ? これしきの魔物で悲鳴を上げてるようじゃ、うちの子たちより弱いですよ?」
【Aチーム】の5人がブンブン顔を横に振ってるけど見ないふりだ。君らなら問題なく倒せるでしょ?
わーわー騒いでるからか、ボスが動き出した。一歩足を出すごとにドスンと地面が揺れる。
『ギィィヤァァァァァァ』
ゴーレムレックスが咆哮した。
「死ぬ、死んじまう!」
「おまえらどけぇぇl!」
必死な形相な【ベヒモス】のハンターが突撃してきたけど、腕で押し返して転がした。
「ひぃぃぃぃ」
「嫌だぁぁ、死にたくねぇ!!」
誰だって死にたくはないよ。
「君らにトレイン行為をされたうちの子たちも怖かったろうなぁ……」
むかつくので圧をぶつけて差し上げた。「ひぃぃ」と尻から崩れ落ちていく【ベヒモス】のならず者たち。
「女子を狙いやがって」
「よりにもよって大宮ダンジョンで怖い目にあった【カチューシャ】とか」
「狙うならせめて男にしろや」
「俺らならトレインも歓迎だぜ」
「なん十体来ても『ごちそうさま』って言ってやるよ」
Aチームの5人も武器を手にものすごく怖い顔をしている。オーガでも回れ右するんじゃないかな。
仲間はね、強さじゃないんだ。共有できるのが仲間さ。
きっちりお礼はしないとね。
背後にはダンジョンボス。前には俺たち。
「ダンジョンボスの方が弱いからあっちをおすすめするよ」
金剛杖でダンジョンボスを指してあげる。うぬぼれではなく、あんな魔物に負ける気はしない。
「も、もうわかった! わかったから助けてくれ! 俺はいいから、せめてこいつらだけでも助けてくれ」
伏見が武器を放り投げて両手を挙げた。
お?
自分を捨てて仲間をかばう?
これもポーズで実は見捨てるパターン?
まぁ、お仕置きは済んだし、撤収だね。
「よーし、撤収しよ。あいつを引き付けるからその間に上に行っちゃって」
金剛杖をかざしながらゴーレムレックスに向かって歩く。こっちをなめてるのか、ドスンドスンと歩みも遅い。戦う気はないけどさ。
『ギュァァァァ!』
「騒がしてごめんねぇ」
【説法】で眠らせた。ドゴゴゴンと地震のごとく地面を揺らしてゴーレムレックスが横倒しになった。




