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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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59.奈良斑鳩ダンジョン日記⑨

このお話はあくまでフィクションです。現実の寺と似ている部分があってもそれはフィクションです。

 時系列は10分ほど巻き戻る。

 京都御所近く、某大学のすぐ近くに伏見の家がある。広い敷地に二階建て。その1階のリビングのソファに寝転がった伏見がいる。ローテーブルにはウィスキーの空瓶が何本も置いてあった。顔も赤く、かなり飲んでいるようだ。

 この家は伏見の別宅だ。しいて言うなら、自宅外にある遊び部屋のひとつだ。

 テーブルの上に置いてあるスマホが震える。


「ん? 誰からだ?」


 伏見は寝っ転がったままスマホをタップする。スマホのスピーカーから声がする。


『伏見さん! あいつらの配信見ました!?』

「あぁ? あいつら?」

『獄楽寺ですよ! あいつら、ダンジョンでの映像をそのまま流しやがった!』

「あ? よくわかんねーな」

『と、ともかく、獄楽寺の配信を見てください!』

「んだよめんどくせーな」


 伏見は通話を切ると、寝っ転がったままスマホを操作し始める。獄楽寺と検索をかけてサイトにアクセスし、終わったばかりの配信のアーカイブをタップした

 最初は眺めていただけだったがダンジョンでの映像を見て顔を真っ赤にした。トレイン行為をしたハンターの顔のアップは、まさに伏見だった。

 残念なことに、伏見は智らが配信をしていることは知らなかったのだ。


「何してくれてんだこいつら!」


 伏見はローテーブルに空き瓶をたたきつけた。割れたガラス破片が飛び散る。そのひとつが伏見の頬を切ったが彼は気にする様子もなく怒りに身を任せてローテーブルを殴った。


「くそが!」


 伏見は体を起こし、スマホでハンター系の掲示板を調べた。


 ——伏見の顔がばっちりだな

 ——AIで作ったんだろ?

 ——あそこお得意のインチキだ

 ——じゃあダンジョンの入場記録を調べようぜ

 ——公平だな

 ——ギルドの防犯カメラのデータも公開すべし

 ——俺氏奈良ダンジョンにいた。待合場で獄楽寺の子らに因縁つけてたぜ、あっさり袖にされてたけどw

 ——だせぇw

 ——ださ

 ——獄楽寺(あそこ)のハンターの武器ってお揃いなのな

 ——鋳物だろどうせ

 ——槍と短剣も似たような感じだったな

 ——数打ち剣でゴーレムをザクザク斬れるんだな

 ——無理言うなw

 ——斬れねえw

 ——お前が斬ってこい

 ——ゴーレムは殴るもんだぞ

 ——いいなぁダンジョンライブ配信

 ——配信機材が高いけどな

 ——億だっけ?

 ——アメリカでも有名なハンターしか買ってないやつ

 ——獄楽寺が動くんなら【ベヒモス】も終わりだなw

 ——京都が終わるかもしれんぞ

 ——奈良は無実だ

 ——奈良はやめてくれ

 ——明日あたり作務衣が殴り込みに行くのかな

 ——野次馬に行こっと

 ——親が寺の偉い人なんだっけ伏見って

 ——親の七光のクソガキだろ

 ——女の子ストーキングする変態

 ——キモ

 ——だから素人DTなんだろ


 すっかりおもちゃにされていた。

 そしてまた着信が来た。


「今度は誰だ!ってオヤジか。なんだオヤジ」

『寺の前にダンジョンができてる! 早く何とかしてくれ!』

「は? ダンジョンだぁ?」

『総門の前の道路に急にできてる! 魔物が出てくる前に早く何とかしろ!』


 通話は切れた。


「なんだってんだ!」


 伏見はスマホを握り潰した。


 翌朝。

 智らはホテルで朝食をとっていた。よくあるビュッフェタイプで、智はパン食を選んだ。寺でも自由だがお米勢が多く、パンも食パンだけなのだ。ビュッフェではロールパンやバゲットも選べた。

 サラダ類を皿に盛ってテーブルに着く。テーブルには、山盛りご飯の京子と好きなおかずだらけの葉子がいる。まぁこれくらいはいいかと、お母さんな智だった。


「ニュースでさ、京都のお寺の目の前の道路にダンジョンができたんだって」


 智がスマホでニュースを確認する。昨晩、守がメールで教えてくれたのだ。


「わたしにも瀬奈先輩から連絡がきたわ」


 トレーを持った美奈子が席に着く。美奈子は普通にバランスの取れた和食だった。

 4人が揃ったのでいただきますだ。


『私は今京都御苑近くのヘリの中にいます。昨夜20時半ころ、〇〇寺の総門前の道路にダンジョンが出現しました。現在は警察に規制されており、あたり一帯が立ち入り禁止になっております』


 ホテルのレストランでのテレビでもニュースが流れており、中継されていた。地上は立ち入り禁止なので上空のヘリからの映像だ。10人ほどの警察官の姿が見れる。

 望遠カメラでダンジョンの階段が映し出されているが、ダンジョンに興味がない宿泊客は黙々と朝食をとっている。

 ギルド職員合わせてもハンターは10万人程度で、日本の総人口の0.1%未満だ。

 製造業は1000万人を超えているので、それと比較するとかなり少ない。なお、農業従事者でも100万人を超えているので、いかにハンターが少ないかがわかる。仕事でも絡みのない会社は多い。


『近隣には大学もあり、本日は臨時休校になるそうです。京都御所の警備も強化され、自衛隊の車両も見えます』


 京都御苑らしき場所に自衛隊の装甲車が連なっているのが映された。剣を腰に履いた迷彩服がそこかしこに立っている。銃だと威圧感を与えるからとの配慮だ。


「マジでダンジョンができてるな」

「大きさからすると、ランク1か?」

「どっかで踏破されたんだろーなー」


 獄楽寺の若鳥らはたいした感想もなく淡々と食べている。

 京都にも日本海に面する【舞鶴ダンジョン】と長岡天満宮近くの【長岡京ダンジョン】のふたつダンジョンがある。当然ギルドもあるのでハンターもいる。ランク1のダンジョンなら彼らが対応すればいいのだ。


『〇〇寺からは、仏教に対する挑戦であり決して受け入れられない、と発表がありました。京都府から【長岡京ギルド】にハンターの派遣要請が出されています』


 ダンジョンができた場所が公道なので管理が自治体になるのだ。ゆえに京都府が動かなければならない。


『総務省からはまだ何も発表されておりませんが、防衛省からは自衛隊の派遣も視野に入れているとの談話が出ています』


 いまだ管轄は総務省だが、動きが遅いので防衛省が先回りしたのだ。放置している間に被害が出たら目も当てられない。総務省の無責任さがにじみ出ている。


「ダンジョンに文句言ってもなぁ」

「自然災害と同じだし」

「いんがおーほーってやつ?」

「仏罰じゃん」

「仏さまも()ってんなー」


 市原と野田がのんきにそんなことを言い合っていた

 ランク1ダンジョンは彼らでも踏破できる程度なのだ。しかも地元ハンターに派遣要請が出ているならば問題はない。なんなら自分らが行ってもいいぞくらいの気持ちだ。


『警察からの発表があるようです』


 画面が切り替わり、どこかの路上に数人の警察官が立っている。おそらく現地だろう。


『先ほど調査しましたところ、ダンジョンは【東金ダンジョン】であることがわかりました。ダンジョンはその土地の名がつくことが多く、ですが、ここ京都には【東金】という地名はありません』


 テレビから【東金】という名前が出た瞬間、智が「ぐふっ」とむせた。

 東金という地名は、千葉以外では見かけないのだ。


「……智?」

「聞いてないけど?」


 美奈子にジト目で見られた智だが心当たりは——あった。

 昨晩、守から連絡が来たのはロビーから部屋に帰ったくらいだった。配信を見終えてすぐに部屋に戻ったので21時にはなっていなかったはず。ダンジョンが出現したのは20時半くらいだとニュースでも言っている。

 ダンジョン出現直後になぜ守が知っていたのか。

 推理する必要もない。犯人は守だ。間違いはないだろう。こんなことができるのは守しかいない。

 が、智は【東金ダンジョン】なんて知らない。寺にいくつかダンジョンはあるが【東金ダンジョン】はない。

 それもそのはずで、智らが出かけた後にご近所にできたダンジョンだからだ。

 獄楽寺一行の視線も智に集まっている。


「……でも、配信には映ってたし」


 智の疑問はそこだ。ライブ配信なので、守は間違いなく千葉にいたのだ。

 ただ、違和感はあった。動きはするがしゃべらないのだ。


「容赦ねーな」


 パンをかじっている市原がつぶやいた。どうやったかは分からないが獄楽寺が動いたと確証したのだろう。


「さすがっつーか」

「あの人たちを敵に回しちゃいけねーの、わかってねーな」


 すでに食べ終えてコーヒーを飲んでいる千葉と野田が続く。

 それはそうとして。


 やっちまったなアイツら。もう知らねーぞ。


 全員の頭に浮かんだのはこの言葉だった。

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― 新着の感想 ―
寺の敷地にダンジョンを置かなかったのは対処が遅れて寺の建物が壊れるのはイヤだったのかな。
何してんやろとは思ってたけど、そういう方法かぁ〜 踏破しなきゃ撤去できんし、管理しなきゃだし超大変だもんなぁ
御所近くの大学なら同志社大学で近所のお寺さんは相国寺ですかね、土地売らないと個人で対処するですよね。
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