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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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59.奈良斑鳩ダンジョン日記①

このお話はあくまでフィクションです。現実の寺と似ている部分があってもそれはフィクションです。

 新幹線を京都で降りた智らは快速に乗り換えて奈良駅へ向かう。こちらは曇りで済んでいた。


「電車ばっかりで飽きてきたわね」

「アーシはそんなことねーゾ!」

「オレもだぜ!」

「あんたちはずっと寝てたからでしょうが!」


 葉子と京子の金髪コンビは東京駅を出るまでには寝ていた。昨晩はふたりで盛り上がってあまり寝てなかったようだ。小学生か!と言いたくなる智だが葉子と京子は気の合う友達なので口には出さない。


「快速でも45分かかるのね」


 美奈子が時間を確認する。奈良駅到着が13時あたりだ。


「「ハラヘッタ!」」


 ゴールデンワンコなふたりが合唱する。ちょうどお昼時ではある。


「駅で買ったお弁当食べようか」

「ヤッター!」

「よっしゃー!」


 4人が弁当を出す。智と美奈子は京都名物の鯖寿司。小食な葉子がサンドイッチで同じく小食な京子がのり弁だ。

 何を食べるかは自由である。

 食事で充電されたはずだが葉子と京子は寝てしまった。そろそろ奈良駅に着くので爆睡中の葉子と京子を起こす。


「そろそろ降りるよ」

「むー、ダンジョンー?」

「また乗り換えるよ」

「「エー」」


 宿泊は奈良駅だがダンジョンがあるのは法隆寺近くで、電車で3駅ある。不満が出るのももっともだ。

 ぶーたれるふたりをなだめつつ、ようやく法隆寺駅に着く。葉子と京子はこの時点で疲れ果てていた。


「遠いゾ」

「遠いな」


 ふたりはそろって口をとがらせる。


「ここからバスでちょっとだから」

「あ、もしかして、あのバスじゃない? 成田もいるし」


 美奈子が指す先にあるバス停には【リーダーズ】の5人がいた。


「はー、やっとついだぜ」

「遠いなー」

「俺思ったんだけど、奈良駅から飛んだ方が早くね?」

「捕まるだろ」

「それな」


 後ろからは【Aチーム】の声も聞こえる。集合時間が同じなのだから同じ電車になるのだ。

 バスに揺られ、降りて徒歩10分。


「やっとついたー」

「北海道の方が楽だったわ」


 さすがの智も美奈子も疲れていた。ダンジョンの中なら体が動いているし緊張もあるので時間の経過を忘れることさえあったが、座りっぱなしの数時間はお白州(しらす)で重しを抱えているが如くこたえる。


「ツイター!」

「ついたぜ!」


 いままでぶーたれていたふたりは逆に元気になっていた。揃って腕を突き上げている。


「遅いぞー」

「早く着きすぎちゃって、待ちくたびれた」


 【ポニー】と【カチューシャ】は1本早い電車で来ていたようだ。これで全5パーティ23名が揃った。


 奈良斑鳩ギルドは木造の大きな平屋だ。

 周囲の寺社仏閣に配慮した外観で、茶色を基調として非常に地味に作られており、どことなく森のビジターセンターの印象だ。

 周囲には宝石の加工場だろう小さなアトリエが並んでいる。それぞれ得意な宝石があるようで「エメラルド系」「サファイヤオンリー」「ダイヤ以外で」などと看板に書かれている。

 入り口の自動ドアをくぐれば、待合場だろう天井が高い大空間があって、正面に受付カウンター、右手にフードコート、左手はギルドの事務所エリアになっている。ゲートは大空間の中央にある。

 ハンターも多いが、若いハンターが目立つ。宝石ダンジョンで実入りも期待できるからだろう。


「あいつら獄楽寺の!」

「マジで来たのかよ」

「ここも踏破されちゃうのか?」


 智らは大人数で来たので注目を浴びた。視線を浴びようがやることは決まっている。


「こんにちはー」


 代表で智がカウンターに行く。一番顔が売れているのが理由だ。次点で美奈子と葉子と、千葉だ。


「あら、ほんとに来たのね」


 ギルドの受付にいる三十路ほどの女性が驚いた顔で出迎えた。受付嬢にしてはややお姉さんすぎるが、年上の色気は智には備わっていないものだ。


「千葉の獄楽寺から来ました。1週間ほどお邪魔します」


 マジックバッグから賄賂用のポーション50個詰め合わせを取り出してカウンターに乗せた。箱には獄楽寺マークのシールが張られている。まごうことなく正規品である。


「あらあら丁寧にどうも」


 ちらりと中身を確認した中年女性はコロッと笑顔に変わる。金額にして750万円もさることながらどこのギルドでも品薄なのだ。


「うちら多人数なので、気を付けることとかありますか?」


 智の質問に、お姉さまは一同を見渡す。


「ほんとに強いのね……噂なんて妬みがほとんどなのねぇ」


 お姉さんは「ふうぅぅ」と長い息を吐く。

 どうやら鑑定持ちのようで、みなのレベルを見たのだろう。


「若いハンターは10階より先には行かないから、できれば10階以降でお願いしたいかな。深ければ深いほど宝石は大きくなるし」

「10階以降ってどれくらいの強さのゴーレムですか?」

「そーねー。15階まではストーンベアゴーレムが多くって、ランク10~15ってところかな? 15階以降だとアイアンゴーレムが出てきてランクも20に上がっちゃうね。あなた達なら大丈夫でしょうけど」

「10階にはやっぱりフロアボスはいます?」

「いるわよ。ストーンベアゴーレムとウッドウルフゴーレムが1体ずつね。あそこに資料があるから見てってちょうだいね」

「なるほど、ありがとうございます!」


 智が礼をしてみんなの元に戻る。


「聞こえてたでしょ?」

「おっけーおっけー」

「10階のボスを倒さないとかー」

「倒すよりもそこに行く方が面倒ね」

「早くダンジョンに行こーぜー」

「わかったから、京子は跳ねない」

「アーシは行くゼ!」

「葉子も走らない!」


 智が先走りする京子と葉子の金髪コンビを捕まえて小脇に抱える。暴走子犬たち(ワンココンビ)を拘束できるのはレベル的にも美奈子と智くらいなのだ。


「智ー」

「トモー」

「そんな顔したって放さないわよ」

「「エー」」

「着替えなさい」

「「ハーイ」」


 子はいないがすでにお母さんな智である。

 ギルドならどこでもある更衣室で着替えと武装をする。ジーンズの葉子とロングスカートの京子以外はミニスカートなのだ。ダンジョンで戦えばちらちら見えてしまう。

 着替えを済ませた23人が待合場に集合する。揃いの衣装だったりばらばらだったりと、自由だ。ただし、武器はお揃いの意匠となっているので、統一された集団には見えていた。棍棒もいるがご愛敬だ。

 智は、放っておくとダンジョンに突撃してしまいそうなワンコふたりを小脇に抱えたままだ。


「成田、いつものよろしく」

「僕が…………やるしかなさそうですね」


 手がふさがっている智の様子を見て納得した成田が肩を落とした。


「……僭越ながら。様子見だけど増長しない」

「「「「増長しない」」」」

「無事に帰る」

「「「「無事に帰る」」」」

「行くぞ」

「「「「おー!」」」」


 武器を手にわいわいしながら一行がゲートを通って階段を降りていく。「ほんとにアレをやるんだな」という視線を浴びながら。

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