58.錬金術師③
「すごいなぁ」
できたばかりの剣を持ち上げてみる。思ったより軽い。レベルが上がって俺の力が増したからなのか、この剣が軽いのか。どっちだろ。
「武器は使う人の特性に合わせて調整するものなり」
矢切さんがそんなことを言う。
「調整ですか?」
「武器はその重心で使い方が変わるなり。戦い方で重心が決まるといってもよいなり」
「つまり、使う人が決まったら微調整が必要だと」
「その通りなり。その作業を含めて25万円なりね」
「なるほど50万円ですね」
となると、クランのみなに聞かないとダメだな。
槍と短剣と大剣とクロスボウもサンプルを作ってもらおう。
「うちの子たちにアンケートを取るんで、まずはサンプルとして1個ずつ作ってもらっていいですか?」
「うむ、お安い御用なり」
「……人の金でやる錬金は楽しいでござるな」
「これだからタダ錬金はやめられない」
焼肉か何かと勘違いしてるな?
なんだかんだで錬金が好きなんだね。
それからサンプルを作ってもらったけど、終わった段階で3人がへとへとになってしまった。
槍、大剣、細身の剣、短剣にクロスボウ×2で計9個だ。
「錬金は体力と集中力が必要でな」
「一度にこれだけの大きな錬金をするのはなかなかないでござる」
「やり切った感が心地よいなり」
「「「たのしかったぁぁぁぁ!」」」
3人が床に寝転んだ。
「うひゃぁぁぁぁ、力の槍に真っぷたつの大剣ですぅぅぅ。こっちは金剛弓にイーグルダガーですぅぅ、いひひひひひ」
細身の剣に行きつく前に北国分さんが失神してしまった。スカート履いてるからあられもない姿ばかりだなこの人も。
後で京香さんに見てもらおう。
全部で9個作ってもらったので450万円だ。
「こんな感じでよいので、重心位置とかの希望を聞いてまた連絡します」
「「「承知した」」」
ということになった。お代はニコニコ現金で払ったよ。
今後は口座振り込みにはしたけど。
で、改めて京香さんに鑑定してもらったところ――
片手剣は【切裂きの剣】で魔物に対してダメージが30%増になる。
大剣は【真っぷたつの大剣】で元々のデュラハンの大剣の効果も引き継いで魔物に対して80%増という化け物になってしまった。おおよそ倍じゃん。
槍は【力の槍】で効果は【切裂きの剣】と同じ。
短剣は【イーグルダガー】でこちらも【切裂きの剣】と同等。
弓は【金剛弓】でこれは少し効果が落ちて魔物に対してダメージが25%増になる効果だった。
数値だけ見ると「これだけ?」って思っちゃうけど、同じ攻撃を3回すると「あら、4回分になって1回分お得なのね」となるんだ。
一撃で倒せちゃう魔物に対してはお得感はないけど、2回3回と攻撃しないと倒せない魔物には超有効だと思う。
――って力説されちゃった。言われてみればそうだよなー。すごいじゃん。
実はこれにドラゴンの鱗で属性も載せられるらしく、そうすると必要な魔石は増えるけどダメージも増えるんだとか。
錬金術ってすごすぎない?
北国分さんのお兄さんはお得意様になってもらうしかないじゃん。
その晩の食後のひとときに零士くんに京香さんとクランの子に集まってもらった。なんだなんだとワイワイする中、昼間に錬金で作ってもらった武器類を出す。
「武器だ」
「クロスボウもある」
「槍もある」
「短剣もあるぜ」
「新品っぽいね」
みんな距離をもって見てるけど興味津々だ。
「守、これは昼間のやつらが作ったものか?」
「サンプルとして作ってもらいました」
「なるほど。手入れしてるとはいえ、お前たちの武器もだいぶくたびれてきたしな」
零士くんはOkな雰囲気だ。
「今日の昼間に錬金術師に来てもらって武器のサンプルを作ってもらったんだ。これだと重心とかが決まっちゃってて使いにくい人も出るから、各自で試して要望を挙げてほしいのと、師匠にアドバイスをお願いしたく」
「よかろう」
零士くんが腕を組んだ。
「えっと、質問ですが、その武器は僕らが使う前提でしょうか?」
みなを代表して成田君が声を上げた。
「話をするのでちょっと聞いてほしい。そもそもは魔封じのネックレスが作れないかなーってことで錬金術師を探したら。たまたま北国分さんのお兄さんが錬金術師だったんだ」
「錬金術師!」
「聞いたことはあるけど」
「で、アイテムだけでなく武器も錬金で作れると聞いたからサンプルを作ってもらった」
「「「「おおお!」」」」
みなが湧き上がる。アガルよね。
「で、魔封じのネックレスについては、ダンジョン産のペリドットっていう宝石がないとダメなんだって」
「はい」
京香さんがすっと手を挙げる。
「ペリドットが入手可能なダンジョンはいくつかありますが、そこへ取りに行くということでしょうか?」
「そうなんだけど、墓地ダンジョンを放り投げて俺が取りに行くわけにもいかなくてね」
「確かに。守君に行かれては私が寂しいです」
そういいつつ京香さんがノートPCをカタカタしてる。
「行きやすさと現地交通を考えると、奈良の法隆寺近くにある奈良斑鳩ダンジョンが良いかと思われます。そこはゴーレムダンジョンで確定で宝石をドロップします」
「奈良の斑鳩!?」
行きたい。本音はすごく行きたい。法隆寺法隆寺法隆寺法隆寺!!
奈良にはお寺がいっぱいで俺的桃源郷だ。
「俺が行きたい……誰か毎日の墓地ダンジョン掃除お願い」
「守、諦めろ」
「えぇぇぇぇ」
零士くんが冷たい。
くそ-、ダンジョンめぇぇ!
「京香、奈良ダンジョンのランクはいくつだ?」
「ランクは2ですね」
「そうか。じゃあお前ら全員で行ってこい。守が行けないならお前らが行けばいい」
零士くんの一言でみんなの顔が変わり、浮かれ始めたのがわかる。
「遠征だ!」
「奈良だって」
「中学の修学旅行で行ったとこだ」
「うちらは京都だった」
「いーなー、わたしらは広島だったよー」
「うちは長崎だった」
「これはギルドからクランへの正式な依頼とします。かかる費用はすべてクランが負担します」
ざわついてしまって京香さんの言葉は耳に入ってないようだ。
「行くなら武器を揃えてからだね」
「ゴーレムを倒していくと武器の摩耗も早いでしょうし、錬金で作製した武器を持っていくのは理にかなっていますね」
まあそうよね。
「その期間はダンジョン利用を控えめにして少人数でも管理が行き届くようにしましょう。としても1週間が限界かと」
寺はともかく、ダンジョンで鍛えたい人らがいるからさ。
「なら期間は1週間だ。取れるだけ取ってこい」
「「「「はいっ!!」」」」
「行く前に、明日からこのサンプルの武器で戦闘をして重心を決めるぞ」
「「「「はいっ!」」」」
「うぉぉぉ、新しい武器だぜぇぇ!!」
「俺は棍棒のままでいいかな」
「デュラハンの大剣を買ったけどこっちも使ってみてぇ……」
「両方持てばいいだろ。マジックバッグに入るし」
「それがあったな! 予備と思えばいいし!」
ぽんぽんと決まっていった。
結局、京子ちゃん含めて総勢23名の大所帯での遠征となった。




