58.錬金術師②
テーブルに置いた魔石は赤青ドラゴンからデュラハン、ケルベロスあたりの強めな魔物のだ。
「うぉ!」
「これは!」
「むぅ!」
「「「高ランクの魔石……」」」
3人は同じように驚いてる。わかるんだね。
「例えば、片手剣を作るには、両手剣には、槍には、短剣には、クロスボウには何が必要とかわかりますか?」
「武具ならば拙者が」
今度は矢切さんが身を乗り出してくる。得意不得意があるみたいだね。
「武具を作るには元となる金属と魔石が必要なり。金属はダンジョンから得られるものでないと作成ができないという禁がありなり」
「ダンジョンからの金属……というとこれも使えますかね」
なまくらの剣とリザードマンの槍を出す。
「どちらもトン単位で在庫があって収納の肥やしになってるんですよ」
「ふぉっ!」
「なんと!」
「ぬおぉ!」
大変驚かれた。
「基本的には、この金属と魔石があれば武具は作製できるなり。しかるにそれらはただの武具なり。そこにダンジョンからのアイテムを融合させることでプラスの効果を付与することができるなり」
「アイテム……そう言えばこんなのもあるんですよ」
サーベルタイガーの牙、ブルードラゴンの鱗、レッドドラゴンの鱗、竜骨、俊足の玉を出してみる。
「「「なななななんとッ!」」」
「ふぁぁぁぁ、レアアイテムですぅぅぅぅうへへへへ」
3人揃って仰け反って、北国分さんが壊れた。いつものことだけどこれでも乙女なんよねぇ
「あ、これもあるんだ」
討ち倒す騎士の大剣と護り抜く騎士の大盾も出してみた。
「こここれは!」
「配信で見たデュラハンの大剣でござる!」
「盾もなり!」
「うふふふふふ」
北国分さんが盾にほおずりしてる。なかなか本題は入れないなぁ。
「ダンジョンで入手した武器にこれらのアイテムを融合させたら良いものが作れそうですか?」
「矢切、どうだ?」
「サーベルタイガーの牙を融合させることで魔物に対して30%のダメージ増が見込まれる。ドラゴンのうろこはそれぞれ氷と炎の属性を付与、それによる追加ダメージが加算されるなり。竜骨は鉄に粘りを持たせる効果があり、武器が壊れにくくなるなり。俊足の玉は、武器よりはアイテムむきなりが、素早く動けるようになるなり」
「すさまじいでござるな」
「デュラハンの大剣を素材としてサーベルタイガーの牙を混ぜることによって対魔物へのダメージが80%加算される化け物ができるなり! しかもデュラハンクラスの魔石がゴロゴロしているのならば錬金にも困らないなり! ぜひやりたいなりよ!!」
矢切さんが身を乗り出して俺の手を握ってきた。男に手を握られる趣味はねーです。
「実はこれがメインの依頼ではなくってですね。メインはこれなんです」
彼の手を振りほどいて魔封じのネックレスをテーブルに置く。
「むむ、これは?」
「魔封じのネックレスです。魔法耐性が付くアクセサリーです。これをたくさん作って欲しくてですね」
「たくさんなりか……手にとっても?」
「どうぞどうぞ」
矢切さんは恭しく魔封じのネックレスをとって手に乗せた。じっと見つめてため息をひとつ。
「これを作るにはダンジョン産のペリドットが必要なり。紐は何でもいいなりが、魔石もランク20以上のものがふたつ必要なりね」
「ダンジョン産のペリドット……ランク20というと、ケルベロスあたりでいけそうだ。だったら魔石の心配はないですよ」
なんならデュラハンを狩りに行けばいいんだし。
「問題はダンジョン産のペリドットだなぁ」
俺がむーと悩んでいる横で、錬金術師3人は牙や鱗を手に目を輝かせてる。
「こんなレアな物を使った錬金は、錬金術師の夢でござるな」
「素材もそうだが魔石が手に入らないしな」
「あるところにはあるなりね」
とてもやりたそうな顔してるなぁ。どれ、ちょっと試してみようかな。
「せっかくなんで、ここで作ってみます? うちとしてはクランの子達用に武器も欲しいんで」
「な、なに!」
「よ、よいのでござるか!?」
「だ、だますわけではないなりね?」
俺に向けられた視線には疑いと期待がぎっしり詰まってる感じ。知ってるぞ。こんな人はのせまくるといい仕事するんだ。京香さんとか北国分さんとか前例はある
「騙しはしないですよ。1個あたりいくらで作ってもらえますか? 100万円でできます?」
「ひゃ!」
「くま!」
「んえん!」
いやいや、区切りがおかしい。
でもまあ乗ってくれそうなので剣と槍と牙と鱗と魔石をごろごろ床に転がしていく。
「「「うわ、うわ、うわ」」」
「失敗とか気にしないんで、やってみません?」
「「「し、しかし」」」
「こんな機会は他ではないですよー」
「「「どどどどうするどうする」」」
3人があわあわしてる。
なんか北国分さんを釣り上げたときを思い出すなぁ。
はらっと【闘刃】のスキル書をテーブルに落とす。
「もしかしたらスキル書も融合できるかも?」
「「「ぜぜぜぜ前例がない!」」」
「うちならたくさんありますよ? こんな機会は他ではないですよー」
再度念押しした。
「「「やる! やらせてくれ!」」」
よし落とした!
「やる前に金だけ決めたいんですが」
「「「いくらでもいい!」」」
よくねーですよ。適正価格で受けてほしい。
でも相場なんて知らないしなぁ。
「……ポーション作成を受けるときは魔石込みで5万円だ」
「武器は、魔石込みでは我らができぬゆえ魔石抜きで受けるでござるが」
「となると希少性からして1つあたり25万ほどになるなり」
なるほど。
「じゃあキリのいい50万円にしましょう」
「「「増えとるがな! というか倍になっとるがい!!」」」
仲がいいなぁ。
「1個50万円でお願いします。欲しいのは片手剣が50本、大剣が3本、槍が2本、短剣が3本クロスボウが4つです」
予備も考えての数だ。
「金属系の武具はこれらを素材として錬金できるなりが、クロスボウは鉄で作ると重すぎるから木が必要なり」
「木なら何でもいいですか? オーガの棍棒もあるんで」
オーガの棍棒も取り出す。硬くて壊れないからいいんだよね。
「お、おぅ……これならいけるなりね」
矢切さんがオーガの棍棒に触れて調べた。
ということで、さっそく錬金をしてもらうけど、そろそろ授乳タイムなので瀬奈さんはアウトする。
素材となる武器は都度出すことにして。
「鱗はうちの子たちの希望を募るんで、まずはサーベルタイガーの牙を使った武器をお願いします」
「「「承知!」」」
3人それぞれが必要な材料を前にして両手をかざした。
「「「【錬金】!」」」
ビカっと激しく光って、材料が一塊になる。じりじりと変形していき、剣に整っていく。
集中してるからか、3人の額にはすごい汗が。この様子だと大量生産は厳しそうだ。
「「「ぬん!」」」
気合の一言で光が収まり、剣が出来上がった。
刃渡りが80センチほど、柄を合わせても1メートルくらいの剣。棒状の鍔があって、意匠らしい意匠がない無骨な剣だ。それが3本。
「「「成功だ!」」」
3人全く同時に右腕で額の汗をぬぐう。
「ほわぁぁぁ【切裂きの剣】ですぅぅ。魔物に対してのみダメージが30%増しです!」
北国分さんが剣に抱き着こうとしたので慌てて止めた。




