57.墓地ダンジョン6階④
「兄貴ー、先に行こーぜー! ねーねー!」
京子ちゃんが俺の袖をつかんでワワンっと吠える。
「うーん、ちょっとこいつらとの戦い方をつかんだ方がいいかも。まともにダメージを受けたのは久しぶりだし」
「そーね、【涅槃】だったら一発なのかとか試したいし」
「【闘刃】を交えてくるデュラハンの剣技も侮れんぞ。盾で大蛇丸を防いだしな」
「えーー、先がいーよー」
『京子! 無理しないで無事に帰ってくるんだよ!』
「うー、わかったよかーちゃん」
京子ちゃんが説得されて全会一致で6階の調査となった。
「でもまぁ、階段を降りて先を見るくらいはしようかね」
「それくらいはいいだろ」
ということで、階段を降りることに。階段は螺旋階段で先が見えない意地悪仕様だ。
降りきると、眼前に広がるのはギラついてる灼熱の太陽と砂煙が立ち込める茶色い砂漠とだいぶ先に見える巨大なピラミッドだった。砂まじりの熱風で咽そうだ。
『砂漠じゃん』
『そりゃ墓地かもしれないけど!』
『あそこまで行くの!?』
『髪が砂だらけになりそうですね』
ドローンからいくつもの声がする。ギャラリーが多いな。
「うーんだめだね。準備が足りないよ」
さすがに砂漠は想定外だよ。半日で帰るとか無理。
「守、戻ろうよ。砂漠なんて無理だって」
「オレ、砂漠なんて初めて見たぜ! でも、これはダメだな!」
「守、早く戻った方がいいな。あそこの砂が盛り上がってるぞ」
零士さんが指さす砂漠の一部がモモモと盛り上がってる。ぱっと見でも直径10メートルはありそうだ。
魔物だとしたらやばい大きさだ。
盛り上がった砂からズザッと巨大な頭蓋骨が飛び出した。爬虫類っぽくて鋭い牙が生えてる。それに長い首が続く。ドラゴンかな。
うん、ダメだアレは。
「よし逃げろ!」
「やばすぎ!」
「逃げるぜ!」
階段をダッシュで戻った。
「ありゃやべーな。がははは!」
零士さんが愉快そうに笑う。
「笑ってる場合じゃってやっぱりか!」
6階に戻れば、墓の上に座るバンシーがいた。周囲には跪くデュラハンも。すぐそばなのでバンシーは投げ網で即収納した。危険すぎるよこいつ。
「【涅槃】!」
智の速攻で墓地が光に包まれ、何かが蒸発した音が聞こえた。
光が晴れた後にデュラハンの姿はなかった。
「【涅槃】なら倒せるのねってか【涅槃】じゃないとダメとか。まだ6階なのに」
智ががっくりしてる。全何階かもわかってないしね。今後、これよりもやばい魔物が出てくるとなると、まず【涅槃】でダメージを与えて戦闘に入るってパターンになるかもしれない。
きっついなこれ。聖女抜きじゃムリゲーだぞ。
「お、また剣と盾が落ちてっぞ!」
京子ちゃんがとててと走って拾い上げた。万歳してないと剣も盾も地面についちゃう。
あれって重いはずだよね。
「書もいくつか落ちてるな」
零士さんが拾う。
「石も変わらずだね」
バンシーを経験値にしたらやっぱり安産のお守りが出てきた。
他には——
【ヴェノムの魔法書】×1
【サイレスの魔法書】×1
——だった。
零士さんが拾った書も収納してみれば【闘刃】のスキル書だった。
「25体で【闘刃】のスキル書1個か。渋いな」
「出るだけすごいんでは?」
「まぁそうなんだがな」
突如、階段付近の空間が歪む。魔物出現の兆候だ。しかもかなりの範囲で空間が揺れている。
「離れるぞ!」
零士さんの指示で距離をとる。何が出てくるか不明なら囲まれるのはまずい。
歪みが黒く彩られ具現化する。
「盛大なお出迎えだな」
現れたのは、多数の首なしの鎧【デュラハン】だった。
「ざっと50体ってところか?」
大盾を構えたデュラハン20体が前列に並び、その背後に大剣持ち30体が列をなす。一番後ろには、馬に乗ったデュラハンもいた。
指揮個体に統率された陣形。
『指揮個体と思われます。デュラハンのランクを30から40に引き上げます。合計ランク2000と指揮個体です!』
ドローンから京香さんの叫び声が。
「合計2000オーバーだって。すげー」
「なにのんきなこと言ってんのよ守! まだ【涅槃】は使えないのよ!」
「んぎゃ!」
智にわき腹をパンチされた。手加減なしだったイタイ。
クールタイムか。さすがに短時間で連発するようなスキルじゃないってことだね。
というかだね。そんなのを前提の魔物とかひどいんじゃないですか?
「いろいろ試したいな。魔法を打てるか?」
零士さんから提案が。勝ちを疑ってない。バンシーがいないから負けることはないと思うけど。
「おっけー」
「いくぜ!」
「「【サンダー】!」」
智と京子ちゃんが同時に【サンダー】をぶっ放す。2条の稲妻がデュラハンの大盾に吸い込まれた。
バチンと静電気の親分な音がして【サンダー】が消えた。
「じゃあ俺が」
在庫の【ファイヤーボール】を20発ほど撃ち込む。やはり大盾に吸い込まれて爆発した。
「ダメージはないっぽいねぇ」
「あの盾は魔法を減ずるか無効化するっぽいな。俺も使ってみようか」
零士さんが大剣と大盾を持った。デュラハンは魔法を使わないかもだけど。
「おっと来たな」
お返しとばかりに大量の【闘刃】が飛んできた。投げ網を広げて全部収納する。俺たち狙いだから待ってれば収納できちゃうのよね。
「お返しー」
即放出で、大量の【闘刃】が飛んでいく。複数の大盾に吸い込まれるけど、一発ごとに盾にひび割れが入って、最後には盾が砕けた。
「魔法よりは打撃か。俺の一撃を耐えるくらいだから【闘刃】でも複数が必要と。じゃあテメーらの武器ならどうだ?」
零士さんが地面を蹴って突貫する。迎撃の【闘刃】が飛んでくるけど零士さんはすべて避けた。
大楯の意味よ……
「で、こっちに飛んでくるよね! わかってた!」
また投げ網で捕まえたさ。
「【一閃】!」
零士さんが振るう大剣は残っている大楯に落とされた。ギャリリリと硬い金属を切裂く音が響き、大楯は真っ二つになった。
「矛盾は鉾の勝ちみてえだな」
零士さんはその勢いで盾を持っていたデュラハンの腹を切って上下に泣き別れにした。
「こいつらにはこいつらの武器がいいかもしれんな」
零士さんはそのまま食い込んでデュラハンを滅多斬りにしていく。
もちろん黙ってやられるデュラハンじゃないけど、敵は零士さんだけじゃないからね。
「うりゃりゃりゃりゃ!」
またもすごいサイヤ人めいて輝く京子ちゃんが突進してた。しかも馬に乗ってるデュラハンをめがけてるからか阻止しようとする大剣デュラハンが群がってるけど相性が悪すぎる。拳一発で光に消えてる。
50体いたはずのデュラハンはすでに両手で数えられる数だ。
「もしかしてまた俺の出番なし?」




