57.墓地ダンジョン6階⑤
飛んでくる【闘刃】は対処してるけど。周囲を警戒するだけの簡単なお仕事だ。
「あたしもかな。【涅槃】も打てるようになったわよ」
智も警戒しつつも暇そうだ。
デュラハンはこっちに構えないくらい攻められてる。やっぱり敵に魔法がないと楽なんだな。
『さすがは師匠です』
『初めて使う剣なのに使いこなしてるし』
『目指す山は険しくて高いな』
『京子もすげーな』
『4人で行ってるのにあれ50体を相手に暇そうにしてるとか意味わかんない』
『まぁ俺らは凡人だ。比較するのはおこがましいぜ』
『それな』
ドローンからの声にも緊張感がない。
『ヒヒヒィィィィン!』
のんきな空気を壊すように、馬が嘶いた。
指揮個体の馬が後ろ脚で立ち上がってる、馬上のデュラハンから漆黒の煙が漏れてくる。
「んぎゃっ」
その煙に触れた京子ちゃんが吹き飛ばされてゴロゴロ転がる。零士さんは飛び退って距離をとった。
『ォォォォォォ』
煙からデュラハンが立ち上がる。最初よりは少ないけど、30体のデュラハンが復活した。
「あいつを倒さないとこれの繰り返しだろうな」
零士さんが京子ちゃんの近くに飛んで、さっと拾い上げて戻ってきた。
「あいててて」
京子ちゃんが腰をさすってる。こっそり【ヒール】をかけておく。
「お、痛いのが消えたぜ! サンキュー兄貴!」
「なんで俺ってわかった?」
「兄貴の手が光ってたぜ!」
「光ってた……?」
手を見るけど、俺の手だな。
「普通に考えれば絶望的な状況なんだろうがなぁ」
零士さんがデュラハンの大剣と大盾を放って大蛇丸に切り替えた。
「守、あいつを収納できそうか?」
「まーた無茶ぶりを。やりますけど?」
「よし、一気に畳み込むぞ」
「よっしゃー!」
ということになった。戦じゃー!
「いっくよー! 【幸歌】【戦歌】【癒歌】!」
智のバフで4人の体が白く、赤く、緑に光る。全身に力が漲ってくる。
「ほぅ、俺にもかかるのか」
「うぉぉぉぉぉ、胸がグツグツだぜー!」
零士さんが感心して、京子ちゃんがアドレナリン爆発で悪い顔になってる。
バフだよね? 大丈夫だよね?
「京子、突っ込んで暴れろ」
「まかせろー! 【聖臨】!」
零士さんの指示で京子ちゃんが三度目のすごいサイヤ人になった。
「悪即ボコす!」
京子ちゃんが一直線に突撃。零士さんは京子ちゃんの後を追う。
「俺も行くわ」
「気を付けて!」
【師走】全開で駆ける。
京子ちゃんの後ろにいた零士さんが跳躍した。
「【大闘刃】!」
特大の【闘刃】が大楯のデュラハン複数に襲い掛かり、爆散させる。
「かーめーはーめー波ぁぁ!」
その空間に京子ちゃんが【聖撃】を叩き込んだ。光の道が通る。
『MAP兵器か』
『それな』
ドローンからそんな呆れ声を聞きながら、俺は金剛杖を突きだしてその切り開かれた空間につっこっむ。
襲ってくるデュラハンは無視して馬を目指す。
馬上のデュラハンが俺めがけて剣を振るうと【闘刃】が飛んでくる。最小限の動きで避けたつもりが左肩に当たった。血で視界が赤くなる。次いでは腹にもあたった。焼けるように痛いけど——。
「バンシーの毒よりはましだ!」
金剛杖を馬に突き刺した。金属に弾かれる感触に反抗して押し込んで収納!
よっしゃ!
【収納:デュラハンロード×1】
「【涅槃】!」
そのタイミングで智の【涅槃】が炸裂。残っていたデュラハンはすべて光に飲まれて消えた。
「いててて【ヒール】」
ふぅ、痛みが減った。ちらっと内臓が見えてた気もしたけど、見なかったことにしよう。
【自己治癒】スキルの影響もあって【ヒール】1発で治ったぜ。
「守、あいつは何だった?」
「デュラハンロードって出ましたね」
「デュラハンロードか。知らんな。デュラハン自体も珍しいからな」
「さっそく経験値にしちゃいましょう」
【デュラハンロードの魔石×1】
【魔封じのネックレス×1】
「魔封じのネックレスってのが出ました」
収納から取り出してみる。シャインマスカットのような透明感のある小さな黄緑色の宝石が1つついたのネックレスだ。紐はすべすべで、何かの植物をよじったようなものでできてる。
地味な印象だけど、じっと見つめたくなる魅力がある。
「へー、きれいねー」
「ちっちぇーなー」
智と京子ちゃんが見に来た。京子ちゃんは口ではこー言ってるけど女の子だもんね、気になるよね。
『黄緑色の宝石で魔封じとくればペリドットでしょうか。石言葉は幸せ、和合、平和。古代では魔除けとして重宝された宝石です』
『はぁはぁ、しゅごいぃぃ、初めて見りゅぅぅぅぅ』
『北国分さんステイです。守君が帰ってきたら鑑定しましょう』
『はぁぁぁぃぃぃ』
あっちも大変だ。
「同じのが落ちてたぞ」
零士さんが持ってきた。他に落ちてるな。
ドロップ品を探して今日の合計だ。
【討ち倒す騎士の大剣】×5
【護り抜く騎士の大盾】×4
【闘刃のスキル書】×5
【ヴェノムの魔法書】×2
【サイレスの魔法書】×2
【安産のお守り】×2
【魔封じのネックレス×2】
【デュラハンロードの魔石×1】
【デュラハンの魔石×100】
【バンシーの魔石×2】
【グールの魔石他いっぱい】
大剣に大楯に魔封じのネックレスは初めてだ。安産のお守りも気になる。どんな効果があるんだろう。
「どうする守。まだここにいるか?」
「戻りましょう。なんだかんだで昼過ぎてますし」
「お腹すいたぞー」
「そうねー」
『かえってらっしゃーい』
瀬奈さんが呼んでる。帰らねば。
「美奈子用にデュラハンを連れて帰りたいが」
そこの溺愛師匠やめてください。さすがに地上に魔物はダメです。




