57.墓地ダンジョン6階③
守が地面を転がっていた時、零士はデュラハン集団に突撃していた。デュラハンは大きな盾を持っている個体が5,大剣を構えているのが20だ。
「剣が大きすぎるぞ」
零士はデュラハンの間を駆け抜けて撫で斬りにしていくが大盾を構えたデュラハンが行く手を遮った。
「邪魔だ!」
零士が大蛇丸で斬りかかるが大盾で受けられた。
「やるじゃねえか! っと」
飛んできた【闘刃】が零士の右腕をかすった。服が切れブシャっと血が吹き出す。
『師匠!』
「ほぉ。【闘刃】を使うか。武者幽鬼だけかと思っていたが、使える魔物はもっと多そうだな」
ドローンから美奈子の悲鳴が聞こえるが、零士は血を見てニヤリとした。フンと力めば血は止まる。零士は飛んできた【闘刃】を大蛇丸で払った。
「フハハハ! いいぞいいぞ! もっとだ! ウォォォ!」
零士は雄たけびを上げてデュラハンに斬りかかった。
「おらおらおらおらぁ!!」
京子も【聖拳】で拳を輝かせながらデュラハンを殴り倒していく。【大いなる祈り】は耐えたデュラハンだが直接ぶち込まれる【聖拳】には勝てないようで、大盾で受けるも一撃で光と消えていく。
「かーめーはーめー波ー!」
両手から放たれる【聖撃】で離れたデュラハンを粉砕する。飛んでくる【闘刃】は拳で霧散させた。
殴り聖女は伊達じゃない!
25体いたデュラハンもすでに半数以下の10体になっていた。
「……いやー、圧倒的じゃないか我が軍はって言いたくなっちゃうな」
零士さんと京子ちゃんの戦いっぷりを見てるとそう思っちゃうよ。俺、やられただけで何もしてないし。
「師匠の攻撃を受けるとか、魔物も今までとはレベルが違ってきたね」
「美奈と葉子だとまだきついかな」
まだ智のバフは入ってないけど。入ればまた違うさ。
『キャァァァァァァァァ』
突如バンシーが悲鳴を上げた。
「グッ!」
「な、なにこれ、息ができない!」
突然息を吸えなくなった。これもバンシーの攻撃か。京子ちゃんも首に手を当てて苦しんでる。
「調査打ち切り! 智、行くよ!」
「了解!」
呼吸は止めとけばいい。倒すの優先!
智が合掌して、俺が金剛杖をバンシーに向ける。
「【涅槃】!」
「【シャイニングブレス】!」
6階全体が光で満たされ、【シャイニングブレス】も見えなくなる。
白い空間のどこかでジュワっと何かが蒸発する音がした。
胸が楽になり、息が吸えた。
「ふぅ」
光が晴れると、魔物は消えていた。相変わらずの夜だけど。
「効いた、よかった。よかった……」
智がめそめそしながら抱き着いてきた。よしよしする。
「【キュア】をかけようかと思ったのに魔法が使えなかったの!」
智が濡らしたタオルで俺の口の周りを拭いてくれてる。腕じゃ拭いきれなかったか。
「もしかしたら智は【サイレス】の魔法にかかったんじゃないかな」
あのバンシーは嫌な攻撃ばかりしてきたからさ。
「アイツ、めんどくせーことしてきたな」
零士さんが歩いてくるけどパーカーの右袖がなくなってる。
まさか零士さんに当てたのか?
「あ、なんか落ちてるぜ!」
京子ちゃんが叫んだ。地面に真っ黒な大剣と大盾が落ちてる。剣は俺の身長くらいありそうだ。盾は長方形で、長手は俺の身長よりは少し短いかな。
他には書が3つと小さくて白いきれいな楕円の石。鍾乳石みたいな感じだけど、握りやすい大きさと形をしてるな。
「ドロップ品だろうね」
「守。わかる?」
「収納してみようか」
名前は判明するからね。ぽぽいっと収納する。
【討ち倒す騎士の大剣】×1
【護り抜く騎士の大盾】×1
【闘刃のスキル書】×1
【ヴェノムの魔法書】×1
【サイレスの魔法書】×1
【安産のお守り】×1
読み上げた。
「【ヴェノム】って毒だよね。俺が食らったのはこれじゃないかな」
「あたしのが【サイレス】ね」
「その魔法、俺も覚えてたわ。もしかしたらバンシーにも効くかなぁ」
有効ならまっさきに黙らせたい。というか収納した方が速いか。ドロップ品もわかるし。
「守、剣と盾を出してくれ」
「はーい」
ぽいぽいっと出したら零士さんが拾い上げた。右手に大剣、左手に大盾。零士さんくらいの身長でもでかいと感じる。
京子ちゃんが盾を持ちあげてるけど背伸びしてやっと盾が浮き上がってるほどだ。京子ちゃんの身長は150センチないから盾はそれ以上ってことだね。
「かなりの重量だが、【怪力】スキルを持ってるかレベルが高ければ問題ないな。なにか効果はありそうな感触だが、戻ってから鑑定してもらうか」
『承知しました。可能でしたら帰還までに使用感などを調べていただけると助かります』
「了解した」
零士さんは「ちょっと使ってみるか」と大蛇丸をしまった。大剣を片手でブンブン振り回している。あれって両手で持つんだよね?
あっちは任せてと、俺として気になるのはこのきれいな白い石だ。
「この石が【安産のお守り】だっていってもどんな効果があるんだか」
『バンシーは産褥で亡くなった女性が元だと言われています。だからこそのドロップ品なのかもしれません』
ドローンから京香さんの声がする。
『もしかしたら、本当に安産になるようなお守りかもしれません』
「自分みたいな女性はいてほしくないって思ってるのかな」
「妊婦さん必須ね。でもその割には凶悪な攻撃してきたけど?」
「ただじゃやらんってことかな」
バンシーを倒すのは大変だぞー。
「お墓に何か文字が彫られてるわね。見たことある感じだけど、ちょっと読めない文字ね」
智が、バンシーが座ってた十字架の前でかがんでる。
「どれどれ」
確かに文字がある。
「これサンスクリット語だ。日本だと梵語っていうやつ。古代インドで使われた文字で、仏教の経典にも使われてる文字なんだ」
「あー、だから既視感があったのねー。守、読める?」
「サンスクリット語で『विस्मृतेजगीताराङ्गिनी(忘れ去られし歌姫)』と書かれてるね」
歌姫かー。
「良く読めるわね」
「勉強したんだよ」
坊主見習いなんで。
「じゃあデュラハンどもは姫を守る騎士ってか?」
零士さんが十字架をさする。
「かもしれないなぁ。なんで梵語なのかわからないけど」
「階段あったぜ!」
階段は墓石の裏にあった。




