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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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55.成田君のピンチ①

 食堂で流していたハンターTVに成田君らしき男子が映っている。20代前半の男性に対してインタビューしている場面だが、後ろに成田君がいる。

 眼鏡の、ちょっと頼りなさげな男の子。うちに何度も来てるし、間違いない。


木下(きおろし)もいるじゃん」

天王台(てんのうだい)我孫子(あびこ)もいる」

「湖北もいるぞ」


 4人とも成田君のパーティメンバーだ。彼らも来てたから当然知ってる。


『踏破チャレンジへ向けて、ばっちりですか?』

『もちろん! 先週加入したニューカマーもいるし、余裕だぜ! なぁ成田!』


 インタビューを受けている男性が成田君を呼んだ。


()()()は踏破に向けて鍛えてきましたから!』


 成田君が眼鏡をくいっと上げて自信たっぷりに答えた。


「ん? 成田(あいつ)、『俺』って言った?」

「成田は『俺』なんて言わねーぞ?」

「わたしも初めて聞いたよ」


 一宮君、館山君、足立ちゃんが異を唱える。

 確かに、成田君は『僕』だ。それに、学級委員長を決めるにあたって誰もいないから立候補したってくらい、基本は目立たない行動をしてたはず。ハン祭りの闘技会だって立候補がいないから出たって聞いたぞ。

 まさに学級委員長だった。


『先日出現した取手ダンジョンに挑む【コブラ】の皆さんでした。頑張ってください!』

『いえーい!』

『まかせて!』


 紹介のあった【コブラ】と思われる10人ほどの若い男性が気勢を上げた。

 頭に市原君の言葉が浮かぶ。


 ――実は成田から連絡があってさ。あいつもクランに誘われたらしいんだけどそのクランのハンターの雰囲気が怖くて断ったんだと――


「成田まさか」

「成田が? ありえねぇ」


 一宮君と館山君が動揺してる。


「瞳孔の開きがおかしい感じでしたね。あれは四国のクラン【ガシャ髑髏】のリーダーと同じように思えました」


 京香さんが眉間にしわを寄せている。

 デッセン&リーファーカンパニー。

 その名が浮かぶ。


「止めないと!」


 一宮君が叫んだ。【ガシャ髑髏】の映像がフラッシュバックする。


「どうする。俺らも行くか?」

「先に踏破するか?」

「行くならわたしらも行くよ」

「放っておけないって」


 一宮君と館山君が顔を寄せ合ってる。そこに足立ちゃんと渋谷ちゃんも加わった。


「やめとけ。おそらくアイツらと揉めて戦闘になるぞ」

「「「「ッ!」」」」


 零士くんに止められて4人は息を飲んだ。


「アイツらが先でもお前らが先でも因縁つけてくるだろう。お前ら、元クラスメイトと戦えるか?」


 4人が口を開こうとして、ぎゅっと閉じた。


「じゃあわたしが」

「美奈子はやめとけ。オーバーキルすぎる」


 別な意味で止められてた。


「成田と戦いたくは、ねえな」

「それはキツイなぁ」

「守さん、どうしよう」


 館山君が縋るような目で見てきた。


「【コブラ】ですが、ちょっと調べただけでも、ギルドでの評価が低いのがわかりました」


 京香さんがノートPCをチラ見しながら説明を始めた。


「【コブラ】。パーティーの構成員は5名。茨城県を拠点とするクラン【ヴァイパー】を構成するパーティのひとつです。成田ら5人を加えて10人なんでしょう。待合場での素行不良、ギルド職員に対する暴言、暴力。評価は最低です」

「割とドン引きなんだけど」


 唐津なみのチンピラだ。


「レベルは精々10程度。実力的に踏破は無理ですね」

「そのクラン【ヴァイパー】ってのが悪い奴の集まりっぽいね」

「守君の言う通り、迷惑行為も辞さないクズですね。他には【パイソン】【マムシ】というパーティが所属していますが、おおむねクズの集まりです」

「んー、成田君がそんなところに入るわけがない」


 彼はまじめだし正義感もある。毅然と断ってるはずだ。


「気になることがあるから、成田君と話をしたいけど」

「守君。彼があぁなってしまっている原因を説明した方がいいかもしれません」

「まだ可能性でしかないけど」

「ほぼ確定だとは思います。葉介さんに調べてもらっていますが、南北アメリカでスキルを多く持ったハンターが出現しているようです。彼ら彼女らはダンジョン踏破を繰り返しており、あの会社が活動を支援をしていることがわかりました」


 それってビンゴじゃん。


「京香さん、何か知ってるんですか!?」

「何かあるんです?」

「今から説明するので静粛に願います」


 京香さんがPCとテレビをつないで画面を共有した。そこにはデッセン&リーファーカンパニーから送られてきてたアイテムのリストが映されてる。


「なんですかこれ?」

「アイテムの魔法書にスキル書?」

「あ、わたしのスキル書がある」


 驚きの声が上がる。


「去年、アメリカの企業から寺への売り込みがありまして、そのリストです」

「これ売ってるんですか!?」

「マジで!?」

「これを全部覚えたら、すごくね?」

「たしかに!」


 そう思うよね。


「お前らが覚えたスキルはいくつで、それを使いこなせてるかを考えてみろ」


 興奮に冷や水を浴びせるような零士くんの声が響く。


「確かに、スキルの数があれば戦う手段も増えるだろうが、元から覚えてるスキルさえ使いこなせないやつが、多くなったスキルを使いこなせるのか?」


 続く零士くんの声にしゅんとなっていく。


「レベル15までは割とコモンスキルを覚える傾向にあるが、レベル20からは次元が変わる。レアスキルを覚えるからな。使いこなせたスキルはほぼ無意識で使うようになる。そうなると、使いこなせないコモンスキルは邪魔になる。美奈子、レベル20で何を覚えた?」

「わたしは【剛毅】でした。常に冷静になり、恐怖や煽り耐性を持ち、常時1.5倍の力を出せるスキルです。1日1回ですけど持続時間は4時間です」


 美奈子ちゃんはいつの間にかレベル20に到達してたんだよね。零士くんがダンジョンを連れまわしてるけどそれにくらいついていってるからね。努力のたまものだ。


「つか、四街道がレベル20って初耳だぜ」

「すげえな。新記録じゃねえのか?」

「とっくにレベル25を超えてる人がいるから違うわよ」


 美奈子ちゃん、俺を見ないで智を見ようね。


「守さんは参考にしちゃいけない人だから」

「佐倉もな」


 智もかよ。


「落ち着け。とまぁ、美奈子が得たスキルは破格だ。冷静な状態で能力の1.5倍を出せる。正直コモンスキルはいま覚えてるので十分だ。多いスキルはレベルが10に満たないハンターなら有益だろうが、選択肢が増えて迷う時間ができればお前らの足かせになりかねん」

「師匠、そのあたりはまたの機会で。まずは彼らをどうやって止めるかです」


 ヒートアップしそうなので止めとこう。


「【コブラ】のアタックは明日朝のようですね」

「じゃあそれに合わせて行こうか。成田君たちに何をしたのかわからないけど、お仕置きは必要だね」


 お尻ペンペンの刑だ。

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