40.獄楽寺の年末年始は忙しい 雪遊び子供の部
用意したもち米はすべてついて餅にした。子供たちは餅も食べ飽きて園庭を走りまわってる。
そろそろ頃合いだね。同じことを感じたであろう父さんに合図する。
「お餅も食べておなかが膨れましたかな? そろそろ雪遊びに入りますが、園庭で遊んでいるお友達は、ちょっと離れてください」
「「「はーい!」」」
園児たちが教室に戻るとほかの子供らも親の元や友達同士で固まり始める。
そのすきにお手伝いのAチームに指示して臼と杵を退かし、水につける。こうしないと餅がこびりついちゃうんだよ。
「園庭は空いたようですね。では雪を出しましょう」
父さんの声に合わせて秋田から持ち帰った綺麗な雪をドドーンと出す。
「「「「うわぁぁぁぁ!!」」」
「「「ゆきぃぃ!!」」」
「「「うぉぉぉ!」」」
子供たちが大絶叫。大人も叫んでる。さながら絶叫マシーンだぜ。
園庭は子供の腰くらいまでの真っ白な雪で覆われた。いつもと違う、雪のにおいが混ざった空気が流れ始める。
勢いあまって道路にまではみ出したのはご愛敬。スコップを持ったAチームが道路に走って雪を崩して均した。ありがとー。
「じゃー滑り台をつくるよー」
園庭の端にさらに雪を盛り上げて斜面を作り滑り台にする。滑り台を固めるために【飛翔】魔法もちの智、葉子ちゃんがスコップでぺしぺし雪を叩いて固め始める。
俺もふよふよ浮かんで滑り台の近くにいって、短いアルミ製の梯子を雪に埋めて階段にする。雪で階段を作ってもいいんだけど崩れそうだしさ。
なんで浮いてるんだって顔の大人たち。先生がたは知ってるからスルー出来るけど普通の人は驚くよね。
「はーい、いま、おねーさんたちが滑り台をつくってくれてまーす。出来上がるまで待ってられるひとー」
「「「はーい!」」」
「「まつー!」」
子供たちが飛び出そうとするので大声で止める先生。さすが、扱いが慣れてる。プラスチック製のソリ10台を雪原になった園庭に放り投げる。
「ソリはたくさんありますがー、お友達とかわりばんこでつかいましょー」
「「「「はーい!」」」」
「おやー、そろそろできたみたいだねー」
「「「「やったー!」」」」
「手袋はしましたかー?」
「「「「したー!」」」」
「長靴を履きましたかー?」
「「「「はいたー!」」」」
「元気にお友達と遊びましょー!」
「「「「わーーー!!」」」」
一斉に走り出す子供たち。カメラ片手に追いかける親。おっと、誰かのお父さんが転んで雪にダイブした。
「すべりだいいちばんのりー」
ソリを持った男の子が滑り台の上に立った。ソリに乗ってシューっと滑り降りる。ズザザザザっと園庭の端っこまで滑って止まった。
「たのしー!!」
男の子の会心の笑顔がまぶしい。
結構滑るな。あそこに雪の壁を作らないと危ないかも。ということで雪の壁を作っておく。
壁を作ったら「ゆきのかべー」って叫びながら突撃する子もいたけど。
「滑り終わったらすぐにどきましょうーねー」
先生も雪にズボズボ足を取られながら、子供たちのサポートに回ってる。
「あたれー!」
「やったなー!」
「つめたーい!」
別な場所では雪合戦が始まってた。狙うわけでなく、ともかく雪を投げてる感じがほほえましい。俺の子供時代に雪があったらあーしてたろうなーって。
「雪を固く握ったら痛いのでー、かーるく握りましょー!」
先生からフォローが入る。氷になるまで握ったらケガするし。
「ゆきだるまー!」
「わたしもやるー!」
誰かが雪だるまを作り始めると、まねっこが出てくる。幼稚園あるあるだ。
雪が足りなくなりそうなのでこっそり補充した。
「よーし、穴を掘るぞ!」
「ほるぞー!」
スコップで雪を盛り始めた親子が穴をあけてかまくらをつくってる。雪にはまって動けなくなってお父さんにレスキューされる子も出た。滑り台からゴロゴロ転がっていく子もいる。お父さんお母さんも楽しそうで、笑顔が満開だ。
なんだかカオスになってしまったけど、ケガさえしなきゃいいかな。
「つかれたー」
「ねむいー」
小さな子供ゆえ、1時間も暴れれば体力が尽きて教室に戻ってくる。そして寝る。
そのためにシートは片付け済みで、お昼寝用の布団も出してある。
園庭は小学生と中学生が残ってる感じだ。雪まみれになりながらワーキャー騒いでる。さすがに体力が違う。
「はーい、そろそろ雪遊びもおしまいでーす」
「お片付けの時間ですよー」
先生が声をかけ、父さんも声を張り上げると、子供たちも雪原から戻ってくる。
「みなさん、楽しんでいただけましたかな?」
「「「たのしかったー!」」」
「「「またゆきーであそびたーい!」」」
「これで餅つきを終わりますが、お土産のお餅もあるので、持ち帰って食べてください」
「「「「はーい!」」」」
という感じで、大好評だった。
「かえりたくなーい」
「もっとあそぶー」
駄々をこねてお父さんに抱っこされて帰っていく子もいるけど、大半の子たちはまぶしいくらいの笑顔で帰っていく。いつもは怖い顔の不動明王さまだってデレるぞ。
「これだけ好評だと、来年もやらんといかんな」
父さんに言われた。
「やれるだけはやっていくけど、俺が引退する前に幼稚園の園児がいなくなりそうだね」
「そうかもしれんな」
いろいろな事情で集落から人は減っていってる。この幼稚園もいずれは不要になってしまうんだろうな。都市に行った人が戻ってこれるようになればいいんだけど、簡単ではないよな。
遠い未来を考えても仕方がない。まずは今目の前のことをやっていくとしよう。




