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096-母の異変-5P
そんなタラレバを考えたって意味はない。
それに、僕も同罪。ヘレナに呼び出されても行かなければ、もう少し早く気づけたかもしれないのに……。
そんな慚愧の念に駆られながらも医者の元へ行き、簡潔に事情を説明すると医者は少し黙り込んだあと、重い溜め息を漏らしたあと、僕をじっと見つめ「もしかすると手遅れかもしれない」そう言い、往診バックを持ち僕の家まで来てくれた。
「はぁ、はぁ……。老体にはかなりの距離だわい……」
医者はそう言いながら、息を軽く整え家の中へ入るなり母さんの診察をする。
「君のお母さんは最近、変わったこととかはなかったかい?」
医者は母さんの診察の手を止め、深刻そうな表情で僕に聞く。
その表情は僕の不安を増幅させるには持ってこいで、なんとも言えないドギマギとした感情が波のように押し寄せる。
「いえ……特になかったかと……」
その態度に僕は心臓を跳ね上げながら言葉を詰まらせた。
「昨日の夜は元気だったかい?」
「はい……」




