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会計士、転生したら万能の仙人だったけどコンプライアンスだけは譲れません  作者: もりそんば
第二十章 期末試験と幸子さんと利修のコンプライアンス
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期末試験と幸子さんと利修のコンプライアンス(7)



2031年3月。期末進級試験にて大量の赤点をとってしまった杏那さん。



これにより杏那さんは利修仙人のパートナーの欠格事由に該当し、パートナー降板の危機に瀕していた。杏那さんに最後のワンチャンスを与えるべく「伴侶入れ替え決定戦」をやるべきではないかと提案したところ、意外とすんなり許諾され、入れ替え候補者である幸子さんと、杏那さんの姉妹入れ替え決定戦の開催が決定された。



しかし、入れ替え決定戦について、何の種目で二人に競ってもらうか瑞姫さんと協議していたところ、瑞姫さんからは、水着審査だの、水着でのポージング、水着での歌唱テストなど、昭和のおやじのセクハラ要素満載な審査項目ばかりを打ち出してきた。



コンプライアンス的にも不適切である。



それでも水着審査に果敢に臨んだ杏那さんに拍手を送りたい。無論僕のLSの罪は承知のうえである。



運命の水着審査について判決が下される。



瑞姫さんは、引き分けの札をあげた。



リコちゃんは幸子さんの札をあげた。そして僕は当然杏那さんの札をあげた。最近の幸子さんとの接点増加で、先ほど審査員席から見た幸子さんの美しいヒップラインがもたらすあらぬ妄想に拍車がかかってジョージが反応しかけるのを抑えるのに苦労したが、ぐっと下腹に力を入れてジョージの暴走を精神的にも抑えつつ、応援すべき杏那さん札を掲げる。



結果、第二競技についても引き分けとなった。何なんだ、引き分け札ってのは。審査員を奇数にした意味がまったく無くなるのではないか。



しかし厳しい戦いである。審査員の胆力を激しく試される死合である。



「第三競技はその恰好のまま、指定の歌を歌って頂きます。」



リコちゃんの司会で第三競技が始まる。



その両者抜群の上半身および下半身のボリュームを揺らしながらの歌唱大会ときたら、非日常感をいやがおうにも増幅させる。これはどこの昭和のバブルの企業大宴会なのであろうか。本日、確実にLS案件を山のように積み重ねている自分の業の深さに感じ入る。



「瑞姫さん、楽曲は、ラバウル小唄が指定曲、でよろしかったですか?」



「うむ。もしくは田端義夫の曲がいい。」



「・・・あの、瑞姫先生。わたしどっちも知りません。」杏那さんがおずおずという。



「瑞姫ちゃん、ごめん。わたしも知らないや。」幸子さんも同調する。



「なんだと、最近の人はラバウル小唄も知らんのか。」



「瑞姫さん、ラバウル小唄の初版は1940年ですよ。今は2031年。ほぼ100年前の歌ですから、幸子さん、杏那さん、そしておそらくお兄さまも知らないのは無理もない事ではないでしょうか?」



「でもわたし、ラバウル小唄と田端義夫の曲しか知らないし。それしか歌えないし。審査のしようがないな。じゃぁ、しょうがないから第三回戦は二人とも引き分けってことにしよう。あ、美空ひばりはどうかな?昭和の歌姫のうたならみんな知ってるだろう!?」



「「「ごめんなさい、それも知らないです。」」」



水着歌唱大会が無くなったことは、有罪確実のLS案件を回避できたという点では天祐であったが、それ以上に失ったものが多いような気がするのはなぜだろうか。せめて瑞姫さんが、Yoas〇biくらい知っていれば・・・!



自分でも、それが無理な注文だということは分かっている。



「第三回戦は、運営側の不備があり失礼いたしました。歌唱対決は中止といたします。第四回戦は、計算力対決です。この場に1カ月分の傘すぎの帳簿を持ってまいりました。


これから締める2031年2月分の帳簿ですので、試験がてら作業しちゃおう、というのが第四回戦の内容です。スピードと正確性の勝負です。なお、計算機のほか、PCの使用も許可されます。」



計算力に関する競技は、お互いが喫茶店関係者ということもあり、また競技内容は決算作業でも基本中の基本作業である帳簿集計である。



衣装はそのまま着替え指示がなかったため、両者なんとなく水着のままである。水着のまま、書類に向かう二人のその様子に、不謹慎にも僕はひそかに興奮していることは内緒である。



これは熾烈なスピード計算勝負になるかもしれないと僕は予想した。シャープやカシオの計算機の熟達者ともなれば、PCの入力速度、計算速度を超えて、手打ちの電卓のほうが正確かつ迅速な計算結果を出せるとも聞く。



幸子さんや、杏那さんがそれほどの熟達者ではないとしても、秒単位でのスピード競技になることは間違いない。そう思っていた時期が僕にもありました。



「それでは第4回戦、競技を開始します。双方作業開始してください!」



リコちゃんの合図で競技開始。しかし、どうした訳か、協議開始の案内後、二人ともちっとも作業が進んでいない。幸子さんも杏那さんも、電卓を所在なくポチポチしながら、たまに水着の紐をもじもじ直しているばかりである。それはそれで眼福ではある。



「あの、幸子さん、杏那さん?何か問題や資料におかしなところや、不足でもありましたか?」



僕は、思わず運営側のミスかと思って声をかけたが、どうも様子がおかしい。



「あのね、わたし帳簿とかわからないの。年に1回税理士さんにきてやってもらうだけだから、全部わからないの。伝票を捨てずに月別の封筒にいれて取っておくのがわたしの仕事範囲なんだよね。だからそこから先はわたしの仕事領域じゃないんだ。」



幸子さんがいい笑顔で、経営者にあるまじきことを言い出した。



「え?本当に全部わからないんですか?」



「交際費とかの科目はちょっとだけわかるけど、それだけしかわからない。確定申告とか、消費税とかもう絶対無理な感じ。」



「よくそれで何年も経営やってきましたね。どうやって税金払ってきたんですか・・・ちゃんと税金払ってるんでしょうね?ところで杏那さんは?」



「ん~と、こういう帳簿とかお金系はお姉ちゃんしかやったことないからわたしはもう最初からギブアップ。」



以前、杏那さんに将来の夢の話を聞いたとき、お姉ちゃんと一緒に喫茶店経営やっていきたいとか言ってなかったっけ?一番重要なところをパスして、一緒に経営をしたいと言っている場合ではない。



「これは、もう時間の無駄ですね。次の勝負に行きましょう。次の競技も何となく嫌な予感しかしませんが。」



リコちゃんがため息とともに言った。



「第五勝負は、予算作成力の勝負です。2031年度分の事業計画書をまもなく銀行に提出する必要があると幸子さんから伺っています。なので、それをそのまま、課題にしました。事業計画書をより正確にスピーディに作成した方が勝利という勝負です!」



この銀行に提出するための一年分の予算計画書を作成する課題である。これは経営者である幸子さんは確実に、毎年やっている業務であり、幸子さんが圧倒的有利かと思われた。



さすがに高校1年生である杏那さんには、予算計画書を作成した経験はないだろう。



「それでは勝負スタートです。この競技は、引き続きPCの使用が認められます。」



しかし幸子さんは勝負開始の案内があっても、一向に手を動かさない。PCに向かって深いため息をついているばかりである。先ほどと同じく水着のひもをもじもじしているしぐさが僕には気になってしょうがない。見ている場合ではないのだが、正直ドキドキする。



幸子さんはたまにマウスを動かしたりしているが、作業をしている風ではない。真っ白なエクセル上で、いくつかの四角い表のようなものを作っているが、実質的に作業が進んでいるようには到底思えない。



「あの、幸子さん?普通の予算事業計画書の作成ですよ?去年作ったのと同じようにやればいいんですよ。あんまり個人的にアドバイスするのは協議上の不公平になってしまいますので、これ以上は言えないんですが。」



「・・・その記憶がないのよ。こんな書類を作成した記憶がないの。」



「え?そんな馬鹿なことってありますか?だって銀行からも融資をうけてますよね?毎年提出するものですよ?・・・もしかして、何年も前の計画書を日付だけ変えて提出しているとかそういうパターンですか。」



「あ、資料の日付を変えて提出して、と銀行員さんに言われた記憶はあるわ。ちょっとイケメンの銀行員さんだったから憶えがあるわ。優しい~って思った記憶しかないわ。」



これは全くダメなやつだ。銀行員さんの苦悩が目に浮かぶ。そして、幸子さんがこの様子であれば、杏那さんがこれを超えることはない。



「え~と、さっきもいったとおり、お金のことはわたしタッチしてないから、最初からギブアップです。」



計算力、企画力は二人ともが壊滅。カフェ傘すぎの将来がひたすら不安になる結果であった。というか今まで何年も良く経営して来たなと感心すら憶えるレベルである。



仙人伴侶入れ替え戦5番勝負の結果、女子力という名のデザート対決は互角、プロポーションも互角、歌唱力は勝負なし。計算力と計画力は二人ともが壊滅的で結果、互角。



「う~む、ここまで拮抗するとは思わなかったな。あと何か審査項目は残ってたかな?」



「いえ!瑞姫さん、予定されていた審査項目は、以上です。」



お笑い力と、セクシー力については既に瑞姫さんは忘れている様子である。審査員としては、このまま闇に葬るべきである。それが世界平和につながるはずだ。



続く


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