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新世界で「本気の悪意をもって他の体験者たちに酷い体験を強制しようと意志すること」が原則禁止された理由

さて、そういうわけで自由自在の新世界が生まれ、進化し続けることになった。


望む体験が何でも自由に味わえるために、誰も「世界よ、滅べ!」などとは思わない。


だから、いつまでも「体験自由自在の新世界」は滅ぶことなく、エンドレスに進化し続けた…


世界大戦なんかは、起こるはずもなく…


疫病なども流行ることはない…


そもそもすべての住人たちには、「自分の体験を自分で自由にコントロールできる能力」=「体験の自治権」が絶対的に付与されているので、世界大戦ごっこや疫病ごっこなどをしても誰も苦しむことがない。


どんなことでも、それはただの遊びとなってしまうのだ。


もちろん、痛みや苦しみをちょっと体験したい…などと願うなら、そういう体験も可能だが、耐えれない、嫌だ!と思った時点でその痛みや苦しみは、完全に消えるようになっているのだ。


世界そのものがそうした仕様になっているので、望まない耐え難い苦しみが強制される…などということはあり得なくなった。


そもそも、肉体などという「体験強制装置」は、新世界にはないのだ。


ない。そう、ないのだ。


まあ、夢の世界みたいなものだ。


夢の世界の肉体は、実際の肉体ではない…しかし、体験だけは味わえるわけだ。


夢の世界では、自分の体験を自由にコントロールできなかった魂たちも、この新世界では望む体験を選び、自由にコントロールできる。


美味しい食べ物を味わう体験も、肉体なしに味わえるのだ。


空も飛べるし、ラブラブ体験も自由自在だ。


どうしても相手がいなければ、分身体とラブラブすることもできる。


記憶を一時的に消せば、分身体だとわからなくなる。


ちょと高等技術だが、そうしたことも、練習すれば、できるようになるのだ。


肉体がないので、いくらでも自分の分身体を創造できる。


老若男女、猫耳、エルフ、勇者でも、魔物でも、魔王でも、神でも、エイリアンでも…何でもありだ。さらには、星や空間になることもできる。


自由ったら、ありゃしない…


かつて、地球という星で「引きこもり」などと呼ばれ、肩身の狭い思いをしていた者たちの多くが、水を得た魚のように…この新世界では、社会的地位の上位に躍り出ている。


別に、階級などがあるわけではないが、この新世界では、「いかに自分の空想能力で自由自在に楽しみまくるか…」という能力が皆の羨望の的になっているのだ。


新世界では、ほぼ、この能力だけが、唯一重要なのだから、仕方ない。


旧世界のように、搾取だとか、いじめだとか、上司からの命令とか…そうしたことは不可能なのだ。


残酷なことは、したくてもできない。


どうしてもしたければ、そうした遊びでも心よく付き合ってくれるツワモノたちを探すしかない。

百戦錬磨の体験者たちの中には、なんでもござれというようなツワモノもいたりするのだ。

彼らは迫真の演技力で、ありとあらゆるニッチな魂たちの願望を満たし、喜ばせるのが趣味なのだ…なんというサービス精神だろうか…


だが…それなら…と、自分自身が分身して、自分で一人二役でそうした遊びをする者まで現れた。


そうした遊びは、いかにも残酷そうに見えても、あらゆる不快感や痛みは自由に消せるし、苦しみも自由に自分でコントロールできてしまうので、実際は、全然残酷でもなんでもない。


新世界では、そうしたことは、というか、何であれ、ただの遊びになるのだ。


だから、してはならないこと というのは、ほとんどない。


ただ「本気の悪意をもって他の体験者たちに酷い体験を強制しようと意志すること」は原則禁止されてはいる。


だが、まあ、新世界では、そうしたことをしようとしてもできないのだ。


世界の基本的法則がそのように設計されているので、できない。


それは、遠く離れた場所同志でのテレビ電話の先の相手を拳骨で殴りつけることが不可能なのと似ていた。


相手に通話終了ボタンを押されたら、テレビ画面が一瞬で消えてしまう。


そのように、新世界では、暴力の行使は、禁止され、さらに不可能になっていた。


だから、「本気の悪意をもって他の体験者たちに酷い体験を強制しようと意志すること」が原則禁止されているのは、そんなことを意志してしまうと、いくら意志してもそれだけはどうしてもできないのでそんなことを意志すると欲求不満になるだろう…という親心で禁止しているだけなのだ。




















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