とある世界調査員の回想4(世界調査員たちは殺されることで増えていった)
そうこうするうちに、世界調査員たちは肉体としては何度も殺されてしまった。そう、殺されてしまったのだ。
だが心配いらない。 肉体は殺されてしまったが、というか、肉体など殺されなくとも、必ず死を迎えるではないか、何も問題はない。
というのは、世界調査員たちは意識体であって、肉体ではないからだ。
肉体みたいなものとの自己同一化など、とっくに世界調査員たちは卒業していたからだ。
世界調査員たちは、殺されることで、因果応報の法則を使い、相手の意識体を殺して、相手の肉体を全部乗っ取り、その何十倍、何百倍、何千倍もの同じ意志を持つ魂を大量生産した。
植物の種が種としてうまく死ぬと、変身し、その何倍、何十倍、何百倍、何千倍にも増えるような感じだ。
まあ、肉体の外観が違う分身体がこうして大量生産されていった。
でも記憶が違うだろう?と思うかもしれないが、そんなもの、今時、書物やネットに大事なことを記録しておけば、後からいくらでも思い出すことができる。
新世界のデータバンクシステムを使えば、それよりもはるかに記憶を完璧に再現できるのだ。問題ない。
大事な情報は、取捨選択して、分身後のあらゆる肉体に伝えることができるのだ。
新世界の情報システムを使わなくとも、分身体が二体以上あれば、相互にそのテレパシーネットワークで大事な記憶や情報を転送しあうこともできる。
つまり、元の意識体の記憶など、いくらでも再生できるわけだ。
その記憶の中で最も重要な記憶は「意志の内容」であり、「どんな意志を持つか」ということになる。
「あらゆる魂が自分で体験を選んで楽しめる世界の実現」を意志するという記憶だけあれば、最悪、記憶の全ての再生に失敗しても、自分でその「意志」によって必要なことを自力で理解し学ぶことになる。
ただ、それを早く理解するために、記憶再生情報システムや師匠が有益だというだけの話だ。
一番大事なのは、「意志の内容」なのだ。
こうして世界調査員たちは、時間の経過とともに、自分たちの意志の分身体を大量生産していった。
ほどなく世界は、そうした調査員たちの分身体たちで満ち満ちるようになり、世界は変わっていった。




