モヒカン野郎
「ヒャッハ~~~!!!」
僕は、とある異世界でモヒカン刈りの男を確認した。
手斧を振り上げていかにもゲームに出てくる悪役みたいだ。
僕は思った・・・
あ、これって、悪い奴発見!!!ってパターンだなってね。
僕は意識体状態なんで、近寄って良くそのモヒカン野郎を観察してみた。
どこからどうみても、ゲームに出てくる悪役だ。
間違いない!と僕は、断罪ボタンをポチっと押そうとしたが、いかんいかん、人は見た目で判断してはいけないという厳しい調査員訓練の教訓を思い出した。
世界には、想定外のことがいっぱいあるのだ。思い込みで人を判断してはいけないんだった。
特に異世界なんかには、そういうのがいっぱいあるんだった。
ということで、僕は、そのモヒカン野郎の心を調べ始めた。
ついでに、その過去の記憶なども調べてみた。
すると・・・驚くべきことがわかった。
なんと、そのモヒカン野郎は、その世界を誰もが満足できる世界に変えようとしていたのだ。
な・・・なんと・・・・
僕は、驚いてしまった。
そのモヒカン野郎が手にしていた斧は、なんと核爆弾が何万発も小型化されて内蔵されていたのだ。
へ~、異世界には、そうした技術もあったりするのか・・・と感心してしまった。
そして、さらに驚いたことに、その核爆弾斧を使ってそのモヒカン野郎が考えていたことは、
「ヒャッハ~!!! オイラはもうこんな惨酷なひどい世界はうんざりだ。お前らさっさと誰もが満足できる世界を実現しろや! でないとこの斧でお前らみんな消し去ってしまうぜ。ヒャッハ~!!!」
というような感じだったのだ。
世界を調べてみたところ、確かに、この異世界では、日常茶飯事に惨酷な拷問的な酷いことが、発生し続けていた。
そのモヒカン野郎は、その残酷劇をやめさせるために、その核爆弾斧を振りかざしていたわけだ。
人は見かけで判断してはならない・・・という教えを思い出してよかったと僕は思った。
あぶないところだった。
一歩間違えたら、新世界の管理システムの幼女に、こっぴどく怒られるところだった。
僕は、胸をなでおろし、さて、モヒカン野郎をどう扱えばいいだろうと考えた。
モヒカン野郎の言い分は、こうだ。
「この残酷な世界を、誰もが満足できる世界に変えてほしい。でないと自分もろともこも世界を消し去ります」
そして、僕は思った。あれ?これって、僕たち新世界が他の世界にやっていることと同じことじゃない?って。
まあ、新世界の場合は、一瞬で世界ごと消滅させる「ワールドエンド」という技術を使って、一切の苦痛が発生する間もなく、ゲームのコンセントを抜く感じで一瞬で世界を消し去れるわけだけど、モヒカン野郎の場合、それが何万発の核兵器内蔵の斧であるという違うがあるだけではないのか?
う~~~~ん。僕は、しばらく考えてみたが、本質的な部分で、そのモヒカン野郎の主張が間違っているとは思えなかった。
いかにも悪役だという姿をしているけど、いかにも悪役っぽい口調ではあるんだけど、意志している内容は、間違っていないような気がする。
ってか、これを間違いだと判定してしまったら、新世界がしていることも間違いになってしまう。
不条理に苦しめられている魂たちが心から満足できるように、そうでない世界を消し続けているのだから・・・
問題は、このモヒカン野郎の持っている力が、中途半端な核兵器レベルである点と、その世界を消した後に魂たちを救出するための「望む体験自由自在の新世界」が準備されていないという点だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっとこのモヒカン野郎については、判断に自信がないな・・・だって、モヒカンだし・・・・
僕はちょっと不安だったので、念のために、試しに、モヒカン野郎の情報を、新世界管理システムにテレパシーで送信してみた。
このままあの核兵器斧を振り下ろさせてもいいんだろうか・・・
返事はいつもながら、瞬時に返ってきた。
新世界システムは時空を超越しているので、タイムラグがないのだ。
「救助については、サポートしてあげるから、やらせてあげなさい」の一言だった。
モヒカン野郎の評価欄には、「類まれなる勇気と良識ある魂」と記入されていた。
新世界システムは、やっぱり、見た目で判断しないんだ・・・・
僕は、こっそりとモヒカン野郎の斧に、「ワールドエンド」の起爆ボタンを格納した。
これで、中途半端に核爆発後の世界で生き残って苦しむ人たちが確実に0になる。
さて、これで下準備ができた。
モヒカン野郎がその斧を振り下ろせば、この異世界は完全消滅し、同時に、この意識世界のあらゆる魂は、新世界に転送される。
後は、各々にお望みの体験を自由自在に楽しんでもらえばいいだけだ。
モヒカン野郎は、飾りだらけのデカいバイクにまたがってその異世界の支配者たちの集まっている中央管理施設に向かって突き進む。
僕は静観している。
すると、上空に複数のドローンが出現し、そこから破壊光線のようなものが、モヒカン野郎に向けて放たれた。
この異世界の支配者たちは、話し合いにも応じるつもりがないらしい。
自分たちは安全な場所にいながら、たったひとりの男に対してドローンで攻撃するとは、卑怯な奴らだ。
ドローンの破壊光線は、四方八方からモヒカン野郎をつらぬいた。
同時に、モヒカン野郎の手斧が振り下ろされる・・・
核兵器が起爆すると同時に、「ワールドエンド」が発動する。
ゲーム内で終末兵器を使ったと同時に、そのゲームのコンセントが引っこ抜かれたような状態になる。
さらに、タイムラグなく、ゲームプレイヤーたち全員が、新世界という全く違うゲームに転送される。
今まで古風なインベーダーゲームをしていたのに、気が付いたら、お望みのあらゆるゲームを自由に選べるゲームセンターいた・・・みたいな感じになるわけだ。
だから、不満は、一時的には出ても、最終的にはみんな心から満足するようになっている。
そういう点、新世界は、なかなかよくできている。
究極の進化成長を果たした新世界であると自負するだけのことはある。
「まってくれ!まってくれ!」と支配者たちが、叫んでいる。
だが、何のために待つ必要があるのか・・・
彼らにしても、新世界でお望みの体験が最終的には自由自在にできるようになるのだ。であれば、待ってやるべきではないだろう。
まあ、今までしてきた残酷な支配行為をしっかり反省して償いをすれば、いいだけだ。
因果輪廻ちゃんや、因果応報君たちが、先生としてちゃんと用意してある。
それに、今すぐ反省すれば、そんな手間をかけさせることもないのだ。
まあ、反省するチャンスを新世界が与えなかったということは、どう考えても、この異世界の支配者たちは、そのチャンスを与えても自発的に反省し、改めないと判断したんだろうけどね。
その可能性があると判断されれば、事前通告などで、自発的な反省と悔い改めと償いのチャンスが与えられるのが普通だ。
ひょっとして、新世界管理システムが、モヒカン野郎を気に入ってしまったのだろうか・・・あたしの同志同胞だわ・・・なんて・・・
今頃、モヒカン野郎とイチャイチャしているのかもしれないな・・・
まあ、あまり深くは追求しないでおこう・・・後でめんどうなことになるかもしれないから・・・くわばらくわばら
新世界でみんな心から満足できるようになるんだから、ま、いっかと僕は思った。
さて、次のお仕事に向わねば・・・一件落着~。




