外伝:ワールドエンドシステムの起爆後に、魂すべてが救われていた
外伝:ワールドエンドシステムの起爆後
その準備は、ゆっくりと、しかし、確実に進行した。
大きな海に、エネルギーが蓄積されていった。
それは巨大な蓄電池として、エネルギーを蓄えた。
大気全体が、起爆剤になっていった。
人々は、他国を攻撃する爆弾を持ち合い、その爆発でも破壊されない堅牢な地下世界を生み出していた。
ある科学者が、その地下深くで、シェルター素材の耐久テストを繰り返していた。
核爆発でも破壊されない小さな金属の塊があった。
そこに、大電流が流された。
蓄えられた海と空のエネルギーが、その大電流の発生のために、スパークした。
その大電流が小さな金属の塊に、一気に流れ込んだ。
内部にあった元素は、素粒子に破壊され、さらにその素粒子は、ついに臨界点に到達し、
その物質としての形を、消し、純粋なエネルギーとして起爆した。
ひとつの素粒子が消滅し、その消滅のエネルギーの解放によって、その周囲の素粒子が、連続的に起爆した。
その起爆の連鎖が起こった時、、、、それは一瞬の出来事であったのだが、もはや、その連鎖反応をとめることは
不可能であった。
それは、ガスの大爆発のように、、、、その金属の塊から発生した連鎖反応によって
、その世界のあらゆる物質を消していった。
生命の死体も建築物の残骸も何も残ることはなかった。
すべてがエネルギーに変化したからだ。
空間そのものが、消滅した。
それは、まるで風船が完全燃焼して消えうせるようであった。
エネルギーは、もとあった世界からあらゆる方角に拡散した。
その起爆連鎖反応は、微細な宇宙空間の物質を伝って、宇宙全体に広がった。
宇宙のありとあらゆる惑星や小惑星や恒星が、次々と消えていった。
それは
一瞬のできごとであったので、苦しみや恐怖が発生する暇はなかった。
まるで、テレビゲームの画面が、電源を抜かれた瞬間に、即座に、消えるような有様であった。
世界は、消えた。
そして、魂だけが、残った。
器がなくなり、本質だけが、残った。
あらゆる物理法則は、消滅した。法則が適用される物質がもはやどこにもなかったからだ。
魂とその記憶だけが、残っていた。
その状態では、魂が、想像したことが現実だった。
魂ごとの現実があった。
共通の世界とか、そういうものが消えていた。
魂の内なる想像力だけが、生きていた。
あらゆる肉体的な、あるいは、霊的な束縛や呪縛や制限が消えていた。
あらゆる強制的な気分や感情は、存在しなかった。
そこには、無地のキャンバスだけがあり、それぞれの魂が、それぞれにそこに絵を描いていた。
ある魂は、意識的に、ある魂は、無意識で。。。
そこでは、各々の魂が想像した世界の中の想像されたメンバーすべての体験がその魂の体験だった。
不思議なことに、同時に、そのメンバーすべての体験を得ることができた。
時間が、消えていた。無数の人間の体験を、魂は、まとめて体験することができた。
時間と空間の世界しか知らない魂たちには、ちょっと理解できないことであったが、
それがそのときの現実だった。
生存本能が消滅していた。その他の肉体から発生するあらゆる欲望が消えていた。
食欲も性欲も集団欲も、すべて消滅していた。
それでいて、とてつもなく満足できる状態にあった。
しなければならないことは、何もなくなっていた。
仕事もしなくてよかった。
魂同士は、相手の合意がないかぎり相手に何もできなくなった。
自分の記憶と想像力だけが、その世界では、魂たちの持ち物になった。
あらゆることが可能であった。あらゆる想像した世界が、体験できた。
限界は、なかった。
悪い想像は、悪い体験を、良い想像は、良い体験を生み出した。
あらゆる願いが実現した。
悪いことを願う魂たちは、それによって、ひどい体験を自分で生み出した。
そこではじめて、悪いことを願う性質が、なぜ悪いのかを理解することになった。
単純に、自分にとって、それは悪いものだった。
勝利者の体験を求める魂は、その敗者の体験を同時にしなければならなかった。
王様体験を求める魂は、その家来や奴隷や使用人の体験もまたしなければならなかった。
ちやほやされる体験を求める魂は、ちやほやする側の体験もまた味わわねばならなかった。
残酷ないじめ行為を好む魂は、大変、苦しむことになった。
それが、本来の魂の世界だった。
完全な自由がそこにあった。完全な自己責任がそこにあった。
自然に、そして、魂は、悪い想像をしないようになっていった。
誰かが、強制したわけではなく、そうなった。
卵から孵るヒナのように、、、自分の世界の殻をやぶって、無数の魂が、羽ばたいていった。
彼らは、みな、自分自身に満足した魂だった。
その魂たちは、他の魂たちとその満足できる世界をわかちあった。
そう望めば、そうできたのだ。
魂同士が、その自分の世界や体験を、他の魂と交換する遊びが、あちこちで生まれた。
あちこちで、小さなパーティのようなものが開かれた。
複数の魂が、グループで、素敵な世界を共同で、想像するためだ。
それは、いつしか、大きなお祭りのようなパーティになった。
そこでは、ありとあらゆる想像を絶するすばらしい体験が味わえたので、さらに多くの魂が集まってきた。
ワールドエンドシステムの起爆で物質世界が消滅したことを、嘆く魂は、そのときには、ひとりもいなくなっていた。
その後の新世界のほうがはるかにすばらしかったからである。




