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「国を空洞化させ、何千人もの人間を共犯者に仕立て上げる」スキーム

 白石川のもう一つの顔である。

 彼は「地方創生コンサルティング」の代表として、地方都市の経済を立て直した救世主の座にいた。

 彼のオフィスは高層ビルの最上階にあり、眼下には彼が構築した「循環の経路」が、都市という巨大な生物の血管のように静かに脈打っている。

 かつて総合協信という名の狭い雑居ビルで、数円の誤差に狂喜していた男の近くで、彼がいかにして「のし上がり」そして「落ちぶれて」いったか。それを間近で見ていた白石川は、今では数百億単位の公金が「正当な事務手続き」を経て白石川の管理する口座へ流れている。その光景を、窓の外の夜景と共に眺め、思い出している。

 白石川の今の命題は、「俺の後継者を育てる」ことだ。そして、この事業以外のスキームを構築し、「救済から漏れた」人々が、自分たちの仕事で、さらなる「救済から漏れた人々」を救い出すことによって、みずからの魂をしずめられるようにすることだ。

 白石川は自問する。

「何がしたいか? 勿論、俺はジンさんの『遺志』を継ぎたい。俺たちはかつて、巨大な組織の『穴』を埋めるための潤滑油に過ぎなかった。俺が作ったのは、誰も傷つかず、誰も責任を取らなくて済む、完璧な装置だ。誰もが自分の利益のためにボタンを押し、その結果として金が俺の元へ集まる。この循環自体に、もはや善も悪もない」

 白石川の声には、冷酷なまでの無関心が宿っている。彼にとって、国という巨大な躯体は、ただの「自動的に金を循環させる装置」に成り下がっていた。

 白石川は、自分の作った装置のどこかに、どこかの天才なら見抜ける「致命的なほころび」を残している。それは、彼自身の無意識が求めた、「この終わりのない循環を破壊してくれる誰か」への招待状だった。

「誰でもいい。お前ならこの循環のどこに『停止ボタン』があるか分かるか?」

 白石川は独り言のように呟き、デスクの上に置かれた分厚い補助金申請書の山を見つめる。彼が自分で作り上げた、「国を空洞化させ、何千人もの人間を共犯者に仕立て上げる」スキームを。

 彼がオフィスから眺める街には、今日も何千もの人々が働いている。彼らは皆、白石川が作った「正当な手続き」という名の迷路の中を、一生懸命に駆け抜けている。

 高層ビルの静寂の中で、白石川はただ、やがて来るであろう「崩壊」という足音を待ち続けている。その先に待つのが、おのれの破滅であろうとも。

 そしてその前に、己の命題を片付けておかねばならない。


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