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不可侵領域  作者: 時宮のシロ


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6/7

新歓コンパ②

 まさるの隣に座った女の子が、はにかんでいる。

 まさるが料理を取り分けて、苦手なものがないか聞いている。

 女の子はニンジンだと言い、まさるは取り分けトングで千切りのニンジンを全部自分の皿に入れている。

 どうぞと差し出すまさるに、女の子はお礼を言って微笑む。

 照れたように笑顔を返すまさる。

 ──正面でそれを見ているはるみ。


 まさるの反対側の隣に座った女の子が、まさるに話しかけ出す。

 まさるはその子にも料理を取り分けようとする。

 女の子は隣の皿を指さして、まさるに何か小声で言う。

 嬉しそうに笑うまさる。

 隣の皿から料理を取り分け、半分に割り、自分の皿に片方を乗せて女の子に差し出す。

 女の子の嬉しそうな上目遣い。

 照れたように笑顔を返すまさる──と、それを目で追うはるみ。


 近くの席から上級生の青年がまさるに呼びかける。

 ハキハキと答えるまさるに、隣の座席から好意的な笑いが起こる。

 両隣の女の子が一緒に笑っている。

 ニコニコするまさる。

 ──前屈みに座るはるみ。


 はるみの周囲も賑やかになっていた。

「はるみ君ってテニスやってたんでしょ?」

「同じ学部の子から聞いたんだけど、はるみ君のお父様って……。」

「え?そうなの?すごい、はるみ君のお家って……。」

「はるみ君の好きなものってなに?」

「俺、この前お父さんの会社の……。」

「ねえねえ、はるみ君ってどこに住んでるの?」

「彼女いるの?」

「今度一緒に……。」

 はるみはにこやかにソツなく、短く返事を返しながら、ほとんど食べていない料理を小さく口に運んでいる。


 まさるの隣で、半分こしてもらった女の子がまさるにスマートフォンを見せている。

 まさるは素直に覗き込んでいる。

 緊張していた隣の女の子が、思い切ったように話に混ざる。

 隣の座席から、まさるをサークルに誘う声が続く。

 照れたように笑ったまさるが、口を開きかける……。


 はるみは、ぬるくなった汁椀を傾ける。


「熱っ──!」


 はるみが小さくハッキリと声をあげる。

 息をのむ周囲。


「はるみ!大丈夫⁈」


 正面のまさるが、慌てて立ち上がった。

 はるみは汁椀をテーブルに戻し、おしぼりでシャツを拭く。

 周囲から心配の声があがる。


「大丈夫です、すいません。でも、あー……。ちょっと派手に汚しちゃったんで、俺お先に失礼します。」


 はるみはサッと立ち上がって、荷物を持つ。

 まさるも荷物を持って、はるみを追いかける。


「大丈夫だよ、まさる。俺先に帰ってるから、楽しんできて。──終わったら、泊まりに来て。」


「何言ってるんだよ、俺も帰る。すみません、お邪魔しました!俺も帰ります。」


 上級生たちから、見送りの声がかかる。


「お大事にねー。」

「ぜひ入会してね、待ってるよー。」


「ご馳走様でした。」

「お先に失礼します。」


 まさるとはるみは連れ立って、座敷を出る。


「席を汚さなくて良かった。」


 靴を履いて言うはるみに、まさるもスニーカーを履いて、怒ったように手を引っ張る。


「そんなこと言ってる場合じゃないだろ、来いよ。」


 まさるはそばを歩いた店員さんに声をかけ、ビニール袋に氷をもらう。

 自分のハンカチに包んで、はるみに手渡す。


「これ、かかったところに当てていて。急いで帰ろう。」


 まさるははるみの手を引いて、足早に店を出ていく。

本作は『仁王立ちヒーロー』(まさる視点)と対になる作品です

『仁王立ちヒーロー』はこちら

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