新歓コンパ①
──春。賑やかな大学構内。
まさるがまだ場所に慣れない様子で歩いている。
視界の先にはるみの姿を見つけ、歩みを早める。
はるみは、自分に歩み寄るまさるにニッコリ笑いかける。
「おはよう、まさる。」
「おはよう。ねぇ、はるみは何かサークル入る?」
まさるは手に持っていた紙を見せる。
「これ、テニスサークルなんだって。テニスする子がいたら是非一緒にってもらった。」
「まさる、球技苦手なんだろ?」
「初心者多いし歓迎なんだって。みんな仲がいいんだって。はるみが入らなくても、俺、やってみようかなぁ。」
ピクっとはるみの瞼が小さく揺れる。
「今夜、新歓コンパがあるんだって。ご飯みんなで食べるから空気がわかるって。1年生は参加無料なんだって。……俺、一人でもちょっと行ってみようかなぁ。」
「……俺も行く。」
はるみはまさるからチラシを受け取る。
「一緒に行こう。……まさる、今夜そのままうちに泊まる?明日、楽だろう?」
まさるは嬉しそうに頷く。
「うん。」
日が暮れた頃。
まさるがはるみと、緊張した様子で街を歩く。
店の前に立っていた青年が、まさるに気づいて手を振る。
「来てくれたんだ。友達もいらっしゃい。ちょうどみんなも集まってきたところだよ。」
青年は愛想良く笑って、まさるたちを店内に先導する。
広い座敷には、同じ大学の若者が大勢、楽しそうに談笑している。
空いている座布団がチラホラあり、どこに座っても誰かがいるように配慮されているらしい。
「好きなところに座ってて」
先導した青年はまた、店の前に戻っていく。
まさるは手近なテーブルの空席に座り、はるみが続いて隣に座ろうとした時……。
「あ、お友達同士?よかったら交流も兼ねて、こっち側にどうぞ。」
サークルの上級生から、はるみは、まさるの正面の空席を勧められる。
「来てくれてありがとう。楽しんでいってね。」
上級生は快活にはるみに笑いかけ、会場に目を配りながら去っていった。
「あの……。ここ、座っていい?」
まさるの隣を指しながら、緊張した面持ちの女学生が、まさるに問いかける。
「うん。どうぞ。」
まさるは女学生に丁寧に頷き、はるみを嬉しそうに見る。
そのすぐ後、まさるの反対側の隣に、別の女学生が座る。
会場が着席の流れになっていた。
次々と席が埋まっていく。
はるみは、急いで移動し、まさるの真正面の席を選んで腰を下ろした。
本作は『仁王立ちヒーロー』(まさる視点)と対になる作品です
『仁王立ちヒーロー』はこちら
https://ncode.syosetu.com/n0451md/




