第2章1ー36
荘厳なフェルマエの玉座の御前に跪く。ルタンとアミ一行、それから後ろに並ぶは、フェルマエ兵の隊伍。
「国王陛下、国王陛下。先ほど申し上げました、一行を連れて参りました」
「よかろう。遠路はるばるご苦労じゃった。面を上げなさい」
ルタン、アミ一行は顔をおもむろに上げた。目に映るのは、きらびやかな天鵞絨の王衣と冠を被る、白髪のフェルマエ王であった。深く刻まれたその皺のひとつひとつからは、酸いも甘いも嗜んできていることが容易に伺えた。このように浩瀚な大国フェルマエを牽引する王ではあったが、アミ、カサ、ハマエから発せられている不可思議な輝きを見るや否や、理性やら権威やらの腰を抜かしたのである。先ず、その証明として、何を話せばよいのやら、脳裏には、白い花が芽生えた。
「う…え…、うっふん。どこの出身の者達じゃ」
フェルマエ王のまことしやかな霊験は、崩れながらも、とりとめのないことを話したかのように、喋ってしまった。しかしながら、出身地を聞くことは非常に、有意義なものでもあった。
アミは、畏まりながら、真心を籠めて言った。
「はい、国王陛下。わたくしはアミと申します。この者達は、右からカサ、ハマエであります。わたくしたちはワラコの国の西にある小さな村から参りました。わたくしたち村人同士ではこの村を、エナウと呼んでおります。エナウは、他の国や他の村との交流もほとんどない、貧しい村です」
国王は、たかが貧しい村人の青年にここまで、品性やらプライドやらを失うとは思っていなかった。今まで、自身の胸に誇りにしてきた諸々や様々な栄華は、無価値であったように感じてしまった。それから今までにはない、奇妙な高揚感が心身を駆け巡った。何故か、幼い頃の自分自身が手招きをしていたのである。
「エナウ…、聞いたことがない村じゃなあ。うん…。ますます不思議なものじゃ、そなたらからは、わしも確かに感じるものがある。年の功かの…。是非とも、ゆっくりと話しをしたいものじゃ。今宵、宴もある。このフェルマエでしばらく、そなたらの命の讃歌を聴かせてはくれまいか」
フェルマエ国王の生命の扉が、開きはじめているのを感じたアミは、涙の息吹きで言った。
「はい!よろこんで、国王陛下!共に、命の讃歌を!」
※続く




