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第2章 1ー35
ルタンとアミ一行は、疾風が萌えいづる部屋をあとにしてから、噴水を眺められる回廊を歩き、王の間に向かっていた。流れている風は、万人の肌につたい、また、フェルマエ城の霞や塵にもつたった。わたしたちの身すぎ世すぎというものは、かすかな風や人々の声に綾なして、いよいよと染め做していく。
カサは前を歩くルタンの背を見つめた。カサから見えるルタンの背には、薔薇の太陽が咲いているようにも見えたが、どこか、悲しげであった。その悲しみというものは、おそらく、多くの人々の悲しみを抱いているからであろうと、カサは感じた。その背に一刻も早く寄り添いたいという逸る気持ちもあるが、それ以上に意外なほど強い願いというものは、今は、ただ、その背をしっかりとこの目に、肝に、焼き付けたかったのであった。
その時、鳥達の囀ずりは、鈴のように鳴り響き、ほのかに辺りを浄瑠璃に染めながら、日の光をいっそうに深めた。
※続く




