第2章1ー17
ある人をふと想ったり、思い出したりするだけでも、それは祈りとなり、天に捧げられて、天がその祈りの何倍ものパワーを与え、その人を加護する。人は恋をすると、その人のことを四六時中想うが、それこそ、その人を四六時中加護していることにもなる。恋のなかでも、片想いもあるが、片想いをするということは、もしかしたならば、陰徳を積みはじめている尊い姿なのかも知れない。であるからして、誠心誠意、心底からの全身全霊による祈り、生命エネルギーを注いだ祈りというものは、この世界をどれだけ助けて、どれだけ祝福していることか。
「このワラコの街も良い方向に、変わりつつあります。街を治めている王の心掛けや生活態度が変わってきたからです。それだけトップに立つ存在は、影響力を持っております。また、影響力の持っている者がトップに立つものです。この世界で最も影響力があり、世界の奥の奥で統べている一者とは、この世界の作者であり、わたしたちの親である、神です。その神の子供達である、わたしたちは、何を求められているのかと、いいますと、互いに大事に仕合うことです。また、この地上をその愛によって、イキイキとした、楽しいパラダイスにしていくことです」
ワラコの食事処である『セミール』の店内は、相変わらず、シルバーの擦れる音や人々のたわいもない、あの愛しい刹那の螺旋が、そこにはあった。その刹那の螺旋というものを、永遠のものとしてしまうアーティスト達は、なんと甘美なる生を、謳歌していることか。
ルタンは、必死になって、アミから発せられる全てを、吸収し、血肉にしようとした。
「この世界に、正義があるとすれば、それは一体なんでしょうか?人々は、自分の胸のなかにある正義によって、時には、血を流し、家族を失ってでも、戦います。極度に美化された決まり文句を言いながら…。それを時々、わたしは、悲しく想い、また、愚かに見えてしまうのです」
「この世界にある本当の正義とは、愛です。愛とは、必ず命を助け、必ず成り立たせ、必ず育むものです。また、全てを活かし、繋げて、躍動させる、最大最高のパワーでもあります。愛のなかで、生きていれば、日々の生活が青天の霹靂となり、楽しく彩られていきます。些細なことでさえも、愛の魔法で、極上のよろこび、となるからです。愛を胸の中心にして、何事も行い、先ずは、自分の出来る範囲から取り組んでいって下さい。心掛けとしては、23時間59分59秒ではありません。24時間、愛の中心を生ききって下さい。愛を持って種を蒔けば、その種から生えていったものは、やがて、鳥達や虫達も住める、大きな木になります。わたしたちは、美味しい実になり、種になっていくのです。この世界の現状では、まだ、正義が、今言ったような愛には、到達しておりません。この世界に住む、多くの人々の心のなかで、まだ、愛が熟成されていないからです。思春期のような愛の人々が多いのです。愛が育っていけば、やがて戦争が無くなります。愛が愛に到達するまでは、戦争が無くなりませんし、苦しみや悲しみは続きます。神は愛そのものであり、愛は神です。愛こそが王座に座り、統治しなければなりません。その為に、このワラコに、わたしは、やってきました」
ルタンの内心や内奥は、小刻みに震えて喜んだ。それが次第に、瞭然と瞳にも露れ、内臓さえ明るく、肌艶も良くなり、副交感神経も優位になってきたので、第六感や幽玄な第七感が、その生一本な顏を出しはじめた。
※続く




