第05話 異能者達のロンド18 - 能力者バトル決着
第05話 異能者達のロンド18 - 能力者バトル決着
だが、小島は一度の攻撃では納得しなかったらしい。
今度は大気の糸を蜘蛛の巣状に出現させる。
それで、地面ごと包み込み、一瞬で点にまで縮小する。
細かく切り刻まれた肉片が、そこに出現……するはずだった。
チロにはなんの変化もなく、相変わらず嬉しそうに俺を見ている。
さすがに今、攻撃されていることに気づいてはいるはずなので、たぶん気にしていないだけなのだろう。
「なぜ? どうして?」
信じられないという雰囲気を醸し出しながら、小島はそんなセリフを口にする。
ちなみに、小島の技に問題があったというわけではない。
その証拠に、チロの足元に転がっていた『不死者』は、みごとなまでに細かく切り刻まれて肉片と化している。
俺は、驚いている小島が少し気の毒になって、簡単に解説を入れておくことにした。
「言っただろ。チロは超ヴァンパイアだと。ドラゴンの血を吸収したため、桁違いにパワーアップしている。本気で斃すつもりなら、地球ごと破壊する覚悟でやらないと不可能だな」
この発言に関しては、まったくといっていいほど脚色していない。
俺がチロと本気で闘ったとしても、地球への被害なしにすますことは不可能だ。
日本列島が吹き飛ぶくらいですめばいいが、おそらくそれではすむまい。
実際に三百メートルクラスの小型のドラゴンと大気圏内でやりあったときには、惑星一つが砕け散った。
さすがに、そこまでの被害を出すことはないだろうが、ただ被害が皆無ということはありえない。
「ち、ちきゅうがはかい……?」
それまでは、なんとなくかっこ良い感じに話していた小島だが、急にどこか遠くの方を見ながら話し始めた。
俺としては何を見ているかになどまったく興味はなかったので、かまわずに話を進める。
「巨大な力同士がぶつかれば、それに相応する余波が生まれる。言い方を変えれば、二つの力の総量で周囲に与える影響が決定されるということになる。もし、本気でチロと戦うつもりなら、地球の外でやってくれ。地球を破壊されたら迷惑だ」
俺はきっぱりと指摘してやった。
なにしろ、そういう闘いを実践してきた俺が言うのだから真実味が違う。
事情を知っている人間ならば、おまゆうってつぶやきそうな気もするが。
「わ、わかった……。っていうか、できないし……もう、ボクは消えることにするよ……」
なぜだか勝手に敗北感を演出して、小島の中からボクっ娘の気配が消えた。
なんだったのだろう、こいつわ……。




