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宮廷監察局の魔女令嬢~宮廷に渦巻く嘘を、私が暴きます~  作者: ポムの狼
第一章「母が遺した謎」

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第6話 魔女に捨てられた公爵

「ニーナ……なぜ来た」


 公爵の執務室。

 この時間は、公爵は執務室で昼食をとると聞いたので、侍女長に頼みこんで昼食を運ぶ係を交代させてもらったのだ。


 昼食の乗ったカートを押して、部屋に入ってきた私を見た公爵は眉を顰めた。

 私が気にせず、応接テーブルの上に二人分の昼食を並べる。


「公爵様、一緒に昼食を食べていただけますか?」


 公爵は、何も言わずに立ち上がって、私が座るソファの向かいに腰掛けた。

 私はすぐに本題を切り出した。


「単刀直入に聞きますが、あなたは、私のお父さんなのですか?」


 しばらくの沈黙が流れる。

 

「分からないんだ。ヤナは私にも何も教えてくれなかったから」


 そう言った公爵の顔には、深い悲しみが滲んでいる気がした。


「公爵様と母の関係を聞いても構いませんか?」


「ヤナとは同じ職場で働いていた。恋人になって……私は結婚まで考えていた」


 驚いた。母は、そんな話、一切したことがなかった。


「だけどある日、ヤナが急にいなくなったんだ」


「いなくなった?」


「私の知らないうちに、上司に退職届を出していた。私は、ヤナに捨てられたんだよ」


 公爵は、自嘲するように笑った。


「理由は?」


「……分かってたら、こんなに悩んでなかったかもな」


 出会ってから、ずっと冷たい人だと思っていた。

 だけど今、私の目の前にいる人は、傷ついて臆病になっている人に見えた。


「……もう一度、質問に答えよう」


 公爵は恐る恐る顔を上げて、私を見た。

 彼の瞳は、揺れていた。


「お前が私の子かは、分からない。だが、ヤナが大切に育てた君を私も大切にしたいとは思っている」


 公爵の言葉は、予想外のものだった。


「仕事のことも考えてはいる。どこか申し分ない職がないか検討中だ」


 あ、覚えててくれたんだ。


「他に欲しいものや、して欲しいことはあるか?」


 私が今一番したいこと……


 ふと浮かんだのは、母の笑顔だ。

 私は、母の人生が本当に幸せなものだったのか、気になりはじめていた。


「母のことがもっと知りたい……」


 それとあなたのことも。


「一緒に調べませんか? 母が本当は、何を考えていたのか」


 公爵は、眉を上げてから、私の問いに頷いた。

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