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元・天才子役は一般人になりたい  作者: 宵月しらせ


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第14話 両想い

「実里ちゃんに訊く? それって、須賀くんが告白することを先に教えるってこと?」


「そうだけど」


「うわっ……」


 愛遊がドン引きした目で俺を見る。

 なにかかわいそうなモノを見るかのように……。


「なんかダメだった?」


「須賀くんが自分で気持ちを伝えようとしてるのに、先に教えちゃダメでしょ」


「それはそうなんだが……でも、もし失敗したら遠足が」


「友達の恋より遠足を優先するな!」


 ドンッ! と愛遊がテーブルを叩く。


「バーベキューがしたいんなら、私がいくらでも一緒にやってあげる。だから今回は二の次ってことにしておいて」


「……わかった」


 言われてみれば、たしかにその通りだ。

 第三者を通じて気持ちを伝えるのも、友情より肉を優先するのも、人としてあるまじき行為だ。

 そんなことを少しでも考えた俺がどうかしていた。


「じゃあ、桜井さんが断ったらどうするかを決めておこう。須賀の残念会にするか?」


「実里ちゃんも同じ班なんだから、それじゃ当てつけになるでしょ。なかったふりをすればいいと思うよ。そういう演技は得意でしょ?」


「得意……でも、それでバーベキューしても味しないと思うんだが。成功率を上げるためになにかできることないか?」


「まぁ失敗したらイヤなのは私も同じだけど………………う~ん」


 結局この日はなにもアイディアが出なかった。

 事態が急変したのは、その翌日。


「二人に相談があるんだけど、今日の放課後いいかな?」


 と、桜井さんが俺たちを誘って来た。


「いいけど」


「よかった。じゃあ、梨野くんの家ってことでいいかな? 内緒の話をするなら、そこが一番バレなさそうだから」


 そうしてその日の夕方、桜井さんがうちに来た。

 昨日、須賀がそうしていたようにイスに座り、同じ種類のお茶を出した。


「相談って?」


「えっと……それなんだけどね……ちょっと恥ずかしいんだけど」


 桜井さんは頬を少し赤らめながら前置きをして、


「須賀に告白しようと思ってるんだ」


 と言った。


「へぇ……」


「あれ、なんか変な反応。そんな意外?」


「全然そんなことないけど。それで、続きを話して」


「うん。なんか最近、あいつはあたしに気があるんじゃないかと思えてきて。そう考えたらドンドン気になってきて……そろそろ告白して来るかな、ってタイミングが何回かあったけど、なかなかなくて。だから、あたしからしちゃおうかなって」


「ほう」

 

「遠足の時がいいかなって」


「縁結びの神社があるしね」


「知ってた? そうそう、あそこご利益あるらしくて。絶好でしょ? だからそこで告白する。で、二人にはおねがいがあって、あたしらが二人きりになれるように周囲を警戒してほしいなって。ダメ?」


「いや、全然いいけど……なぁ?」


 隣に視線を向けると、さすがの愛遊も苦笑いしていた。

 どっちも同じ日、同じ場所で告白しようとしている。

 勝ち確ってことだ。後はどっちがするかだが……まぁそれは問題にはならないだろう。


 視線で愛遊に問いかける。話していいか? と――。

 愛遊は目をうっすらと細めた――許可がもらえた。


「実はさ、昨日、須賀がうちに来たんだ」


「須賀が? 一人で?」


「ああ。要件なんだけど、桜井さんと同じ。遠足の時に、桜井さんに告白するからそのヘルプをしてほしいって」


「そうなの? 告白してくれるつもりなの! そっかちゃんと両想いだったんだ」


「事前に伝えるのは反則かと思ったけど、両方から同時に告白しようとして牽制する展開になったら台無しだからね。伝えておくよ」


「ありがと……須賀が告白してくれるなら、あたしは待つよ」


「うん」


「ついでにおねがいしていいかな? あたしがここに来て、今の話をしたことは須賀には黙ってて」


「いいけど、どうして?」


「やっと勇気を出して告白するつもりになってくれたんだもん。第三者経由でもう知ってました――じゃなんか悪いでしょ?」


「……うん、たしかに。じゃあ俺たちはなにも聞かなかったことにして、当日はなにげなく場を整えるだけにするから」


「おねがいね」


 話がまとまると、桜井さんは帰って行った。

 愛遊は外まで桜井さん送り、帰って来るなりドヤ顔になった。


「余計なことを言わなくて正解だったでしょ? ただでせえ二人が告白するタイミングがバッティングしそうだったのに、そこに圭介くんまで加わってたらとんだカオスだったよ」


「……ええ、そうですね」


「うまく行く時っていうのは、周りがなにもしなくても自然にうまく行くの。ダメな時はなにをやってもダメなの。余計なことはしない。わかった?」


「……はい」


「よろしい。まぁ男の子っていうのはこういうのに鈍いから、あんまり怒らないであげるけど、まったく……」


 今回は愛遊の言っていることが全面的に正しかったので、俺はなにも言い返せず、うなだれるのだった。


★★★


 夜九時半を過ぎて、圭介くんの家を出て自分の家に帰る。

 と言っても、徒歩数秒しか離れていない。


 誰もいない部屋に入り、お風呂に入って、着替えやお肌の手入れやらをしてから寝室にしているロフトに上る。

 頭から布団に包まって、数十分ぶりに声を出す。


「ああああああっ‼」


 このマンションの防音はしっかりしている。たぶんこれくらいの声は隣には聞こえてない。

 聞こえてほしくはない。

 さっき自分が言ったことに対して、悶えている私の声を圭介くんに聞かれたくない。


「なんだあの恋愛上級者みたいな上から目線の言い方は。圭介くんが私のことをどう思ってるのかもまだわかってない素人のくせに」


 一通り自分への呪詛を終えると、気持ちはだいぶスッキリした。

 さて、切り替えが完了したところで、圭介くんが楽しみにしてるバーベキューをどうやって盛り上げるか考えよう。


 付き合い始めたばかりで、実里ちゃんにいいところを見せようと須賀くんはきっと張り切る。

 火起こしとかそういう大事な作業をやりたがるはず……それで出番がなくなると、圭介くんはガッカリするかも。

 案外子どもなところがあるかなぁ。


 圭介くんが満足できるように……食材は学校で準備するから持ってくるなってことになってるけど、おやつの持ち込みは可。マシュマロを持ち込んえで焼くのはギリセーフかな?

 他には………………zzz。

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