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28.魔王様ガチ勢



怒涛の準備が進み、迎えた社交界当日。

各国からの要人が集まった広場にて、私は王族として参加した。

ドレスはあの日仕立ててもらった衣装。なぜか着る当事者ではないクロードとユイ(とマオ)があーでもないこーでもないと口を出し、その結果仕上がったドレスである。


完成したドレスの最終調整をしたときはとうとうユイが永遠の忠誠を誓い始めた。

クロードも跪き、女主人が「あらあら本当に王女殿下は慕われておりますこと」と微笑ましげに言って私を困らせてくれたものだ。

まあそれも楽しい思い出だ。

こうやって無事に社交界デビューを迎えることが出来たのだから。


「クロード、ユイ。ないとは思うけど周囲の警戒はお願いね」

「お任せください。不届者を発見した際は速やかに対処いたします」

何人なんぴとたりともシイユ様に手は出させません」


魔族で執事のクロード。

魔王(私)とほぼ同レベルの人造人間ホムンクルス、ユイ。


……たぶん、この社交場にいる誰よりも、強い護衛である。


この社交界には他国の王族も来ている。まあありていに言えば未来の伴侶、つまりは結婚相手探し。

めっちゃどストレートに言うと、婚活パーティーも兼ねている。


…私はまだ成人はしていないが、良い相手がいれば婚約者候補、ということになる。父と母もそのつもりでこの社交界を開いている。私にそのつもりはないが、王族に生まれた者としてこれは避けられない。いくら裏で魔王をやっているとしてもだ。


「このなかに、もしかしたらシイユ様の伴侶候補がいるかもしれないのですね」

「我らの目でしっかりと見定めねばなりませんね!」

「何で二人の方がやる気なの?」


恐らく、候補がいたとしても結婚どころか婚約なんて永遠に不可能な話だと思う。だって、王女が現魔王、なのだから。


人間界における魔王のイメージは、魔界の頂点、魔界の主。

––––人間界を滅ぼす存在。


そんなのが、王女で、自分の伴侶なんて知れたら。即・人間界vs魔界の大戦争が始まる。


「私の伴侶とか、考えなくていいから」

「…シイユ様?」

「ゆくゆくはどこかの王家に嫁ぐかもしれないし、女王になるかもしれない。そうなったら魔王なんてやってられないよ?引退しなきゃいけなくなるかもね」

「全力で社交界を阻止しますね」

「極端か。社交界は成功させなきゃいけないの。阻止しなきゃいけないのは婚約の方」

「では社交界を進行させつつ伴侶候補がいれば全力で潰しますね」

「だから極端か。潰すな。阻止だけしろ」

「かしこまりました」


まずは公爵達への挨拶回りだ。


「エヴァーレンス公爵様。シュターレット公爵様」

「おお、シイユ王女殿下!」

「お久しゅうございます、王女殿下」

「お二人とも、ご息災でしょうか。先日は私の茶会にご協力いただき、ありがとうございました」

「いえいえ、我らも王女殿下に協力させていただき光栄でした」

「娘も大変喜んでおりました。正義感の強い子で、………例の噂についても、かなり怒っておりまして」

「それはそれは…」


おっとりしているご令嬢達ではあるが、善悪の区別はついている。

この公爵家を選んで正解だったようだ。


「その件で、また何かありましたらお願いするかと思います。…そのときは」

「もちろん、ご協力させていただきましょうとも」

「我らが王女殿下のご命令とあらば」


公爵家との挨拶の後は貴族達だ。

このときがある意味一番面倒。なぜなら。


「王女殿下。ご機嫌麗しゅう」

「王女殿下」


貴族達は、子息を王家の仲間入りにさせようと必死になる。自称勇者の婚約話が真っ赤な嘘だと判明したので、拍車がかかるのだ。


「こちら、我が嫡男にございますれば」

「頭も良く」

「とても優秀な子で」


私よりも確実に歳下の子息を紹介されても正直困る。しかも息子は息子で母親にべったり。将来絶対母親が王家に口出してくる。


そして、後ろで静かに値踏みしている二人の思念伝達テレパシーが私に流れてくる。


『この程度で本当に魔王様の伴侶候補にしようと?』

『ふざけておられますね』

『魔力はなくとも、せめて魔王様に相応しい御仁でなければ』

『そうそう』


二人は私の保護者か。




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