25.鬼畜の所業・記憶改ざん
その後、お望みの専用迷宮を造ったら、どうやったのか本当に自称勇者とパーティを組んだらしく、早速連行していった。
そして興奮気味に思念伝達を送ってきた。
『おいお前!魔王!シイユ!!何だあれは!この俺が手も足も出ない!初見殺しが過ぎるぞ!!』
ちなみにこれは全く怒っていない。
テンションが上がりすぎてハイになった喋り方である。
『楽しめそう?』
『楽しくて死にそうだ!あんなものどうやって考え付くんだ!』
『発案はマオが私のために造った迷宮だよ。私がパワーアップさせた』
『ヤバいな!!俺もう50回以上は死んだぞ!自称勇者は1000回は死んでる!!半分以上は死んだことにも気付いてない!!』
『死ぬのが楽しくなってない???』
『次どんな風に殺されるのかが楽しみになってるな!!!』
やべー扉開いてる。その内死ぬために迷宮潜りそう。
『いくら死なない設定にしてあるからって、自称勇者は精神も人間なんだから、手加減してあげてよ?』
『…………どうしよ、廃人にさせたかも…』
『ちょっと?????』
この世界の迷宮の特徴は、冒険者の敗北=死ではないことだ。本当に死んでしまったら冒険者といえど冒険しなくなる。しかし、死んだ疑似体験はある程度残るので、死なないと分かっていても挑戦しない者の方が多い。
…まあ設定をいじれば、迷宮で本当に殺すことも出来るだろう。けどそんなことをすれば人類はあっという間に絶滅してしまう。それは本意ではない。
迷宮は、私が人間界で楽しく過ごすための手段。人間界に影響が出てはいけない。それでは本末転倒なのだ。
『まあ、最終手段。精神異常も状態異常もお前からもらった全快薬で無かったことになる』
全快薬、またの名を。
光陰魔法・記憶改ざん(リセット)。
一定期間の記憶を、丸ごとリセットする魔法。
本来はアルバトロスに「何度でも初見体験」が出来る方法として渡しておいた道具だ。一度攻略してしまっても、また初見のような体験が出来るようにと。しかしまさかのこれを彼は自称勇者に乱用し始めた。
理由として、アルバトロス自身は死に対してそこまで恐れを抱いていない。むしろ次はどんな死に方をするのか、どんな殺され方をするのかに興味がある。
もう一つは、これが本命だが。
自称勇者の精神崩壊防止。
さすがに初見殺しで5回死んだところで自称勇者が弱音を吐き始めた。「もう嫌だ」と。
けれどもアルバトロスはもちろん納得するはずもなく、何ならここで自称勇者を帰してしまったら私との約束を反故することになる。それは元魔王としてのプライドが許さない。
そこで、思いついたのが全快薬、記憶改ざん(リセット)。
鬼畜の所業である。
これにより、アルバトロスは死んだ記憶をしっかり引き継いだまま。
自称勇者は強制的に記憶をリセットされての迷宮攻略となった。あわれなり。
『んー、ここまで来ると、ちょっとだけ罪悪感が』
『別に構わんだろ。死んでないんだし』
『いやそうなんだけど!』
『それに、ストーカーされることもなくなる』
『確かに。いいぞもっとやれ』
『お前も大概だな。』
やっぱ平和が一番なんだよね。自分大事。




