24.交換条件
「考えもしなかった…」
最初から囮の依頼を出す前提でここへ来た。それはそうだ。だって元魔王が冒険者になってて、しかも協力してくれるなんて誰が想像出来る?
「冒険者は何も全員が単独じゃない。強ければ俺みたいに単独で活動してる冒険者もいるが、基本はパーティを組んでる。その方が迷宮でも役割分担しやすいからな。…けど、今回はそれが目的じゃない」
そうだ。彼は元魔王。並みの冒険者に比べればダントツに強い。わざわざパーティを組む必要性なんて全くない。
その彼が、あえて自分から自称勇者とのパーティ結成を提案した。その目的。
「…何がほしいの」
魔王の座か。それとも姫(私)の命か。ゴクリと慎重に聞くと、彼はまるで少年のように笑った。
「俺専用の迷宮を造ってくれ」
「………………………迷宮?」
ポカンとする私に、彼は思い出話をするように語り出す。
「あんな楽しい迷宮、今まで存在しなかった。俺の想像をはるかに上回る強敵。倒しても倒しても次から次へと向かい来る魔物。魔族には勝ったが、魔王には勝てなかった。やはり強いな、お前は」
「待ってよ、マオと闘ったの?」
「あれは“マオ”というのか。お前そっくりだったが、偽物だったんだな。魔力の質も似ていて完全に騙された」
色々ツッコミたいところは山ほどあるが、それよりも。
「…迷宮を造って、貴方はどうするの」
「そりゃあ、自称勇者を強制的に迷宮へご招待するのさ」
「……自称勇者は迷宮の依頼は踏み倒すってさっき…」
そうだ。ついさっき彼はその口で言っていた。迷宮や討伐系での依頼は踏み倒される可能性が高いと。
「これは依頼じゃない」
「…???」
「俺専用の迷宮を造ってもらう代わりにお前に付き纏う自称勇者を俺が引きつける。つまりは交換条件だ。依頼は踏み倒せるが、魔族に目を付けられた人間はそう簡単には逃げられない。…それが元魔王なら尚更な」
意味が分からない。そう思ってクロードに目配せをすると。
「…アルバトロスは、元魔王として、魔族として。特別に魔王様と手を組みたいと。専用迷宮を造っていただければ、自称勇者を完全に引き受けると、そう仰っているのです」
まさかそんなこと言ってもらえると思ってなかったので、つい素が出る。
「………いい、の?」
「おう!とびっきり難しくしてくれ!」
のちに聞いた話、元魔王、改めアルバトロスは、冒険者に転職したものの種族はただの人間として登録してあるらしく、挑戦出来る迷宮にも限りがあるらしい。
より難易度の高い迷宮へは勇者スキルを持つ者しか挑戦権がなく、そろそろ迷宮巡りも行き詰まってきていたそうだ。この挑戦権はマオが設定したわけではなく、人間側、つまりは組合側が勝手に設けた策。
だから自分専用の迷宮を欲しがったんだね。
ちなみに、マオと闘ったのはずっと前。初期の迷宮が現れた頃である。マオに敗れたことでその楽しさに目覚め、以降迷宮巡りが日課(趣味)と化したそうな。
アルバトロスは語る。
「人間てめんどくさいよな。どれだけレベルが高かろうと強かろうと、結局は勇者スキルが重要視される。最後に魔王に致命傷を与えるのが勇者スキルだからなんだとさ。その魔王に致命傷を負わせのは当時たった6歳のお姫様だったっつーのに」




