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源光(みなもとひかり)物語  作者: 西村 圭
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十九、薄雲

冬になり、明石の人は一層心細く感じているようです。二条にある私の家に移るよう言いましたが、悩んでいるようです。息子の教育のためにも、紫にも養育に関わって欲しいという私の考えが、より一層明石の人の悩みを深くしているようです。明石の人の父君も、私の考えに同意して、明石の人を説得してくれました。子供の年頃のお祝いなどもあり、明石の人の気持ちが固まるのを待ちながら、私は準備を進めていました。


寒さが少しやわらぎ、雪の溶け始める頃、明石の人より先に、息子を二条の家に迎え入れました。別れの際、明石の人はあまりにつらそうで、私としても心が痛みました。

二条の家につくと、息子は母恋しさに泣いていましたが、紫などが慰め、落ち着いてくれました。


明石の人は、子供のためとはいえ、息子と別れたつらさを嘆いていたようで、私は会いに行きました。紫も、小言を言うことなく、見送ってくれました。


年が明けて、私も忙しく過ごしていました。既に迎え入れた花散里の人は、心穏やかに過ごしているようです。私も時たま、話相手になってもらったりしています。


私が明石の人のところへ向かおうとすると、紫が見送ってくれました。紫も、明石の人に対して穏やかでない気持ちはあるでしょうが、明石の人から託された子供のこともあり、複雑な様子です。


私は、明石の人と音楽を楽しみ、心穏やかな時間を過ごしました。


亡き夫の葵の母君が亡くなり、寂しい気持ちを抱えながら、心をこめて弔いました。


藤壺の人も病が重くなってしまいました。

実は私と藤壺の子である冷泉は、早くに公には母とされている人を亡くしているので、より一層心細く感じるのでしょう、不安な様子です。

藤壺の人も、こんなに早くに自らの命が尽きようとることを冷泉にすまなく思う気持ちはありながら、どうすることもできません。また、冷泉に私が母であることを告げずに逝くことを、心残りに感じているのでしょう。


私はといえば、藤壺の人への気持ちは、変わることがありません。ただ、私達の子である冷泉を守りたいというのが、私と藤壺の人の一番の願いだいうことも、理解しているつもりなのです。


やがて、藤壺の人も亡くなりました。多くの人が悲しみました。空に浮かぶ薄雲も、喪服の色のようです。


後から思えば、この頃のことだったのでしょう。葬儀を通じて、ある人から冷泉は私と藤壺の人のことを耳にしてしまったようです。大きなショックを受けたのでしょう。冷泉の様子が気がかりだと聞いた私は、藤壺の人を亡くしたせいだと考えていました。


悲しいことは続くもので、亡くなった母の妹で、朝顔の人の母でもある式部の叔母も亡くなりました。


この頃の冷泉は、それまでとどこか様子が違いました。


心乱れた冷泉は、私をさらに格上の役職であった葵の母の後任にしようと考えたようです。しかし、私は、私にあまり重要な仕事を委ねなかった亡き母の思惑を改めて思い出し、冷泉をたしなめました。葵の母君の後継は、私より葵の姉の方がふさわしいでしょう。


やがて私は、冷泉の様子から、私と藤壺の人のことに気づいたのではないかと考えはじめていました。


しばらくして、冷泉のもとで梅の咲く庭のある家で暮らしている、亡き六条の人の息子が、私の家を訪れました。お互いの気持ちがすれ違ってしまった六条の人のことを思うと、この梅壺の人の前でも、落ち着かなくなってしまいます。しかし、私のこうした態度に、梅壺の人は困惑しているようでした。気分をかえようと春と秋とどちらが好みですか、などと尋ね、亡き父を思いだすので秋が好きだと聞き、私も秋の季節に亡くなった六条の人を思いました。

紫もやってきて、春の方が好ましいなどと、とりとめなく話を続けました。


その後も、私は時折、明石の人を訪ねて過ごしていました。

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