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源光(みなもとひかり)物語  作者: 西村 圭
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十二、須磨

このままここにいてもいいことはない、とつくづく思うようになりました。


紫のことは気がかりでしたが、仕方がないことです。


花散里の人も藤壺の人も、私のことを案じてくれましたが、やはり彼らにもどうすることもできませんでした。


須磨の地でほとぼりをさますことにしました。


出ていく前に、葵の家に立ち寄り、葵との子の夕霧を預けました。義姉も見送ってくれました。


紫も随時落ち込んでいました。どうしてもついていきたい、というのを、なんとか思いとどまらせました。久しぶりに異父妹もやってきたので、しばらく話し込みました。


花散里の人にも別れをつげました。この人をこんなにも悲しませてしまったのは自分なのだとつくづく感じました。


直接会うことは叶いませんでしたが、朧月夜の人にも、別れを告げました。あの人も、私の気持ちをわかってくれたのではないかと思います。


藤壺の人にも挨拶に伺いました。お互いに感情があふれて、言葉になりませんでした。


藤壺の人との子にも別れを告げました。夕霧より年長なせいか、会えなくなることを理解してくれていました。また会おうと告げました。


出発の日、紫は泣きながら私を見送ってくれました。


私の行き先は、昔、ある人が、やはり隠れ住んでいたことがあったのだそうです。さみしいところでした。


とくにすることもなく、会えなくなった人々、紫や、夕霧の祖父母や藤壺の人や朧月夜の人らと細々と連絡を取りながら過ごしていました。


六条の人とも、改めて連絡を取りました。今更ながら彼を苦しめたことをすまなく思いました。


花散里の人なども時たま様子を知らせてくれました。生活していく上で足りないところがあれば手当てするよう伝えました。


朧月夜の人は、異父姉の朱雀と結婚しました。私といろいろあって、彼も肩身の狭い思いもあったでしょうが、異父姉は受け止めてくれたのでしょうか。私も思いを残して辛くはありますが、身勝手ながら、彼の幸せを願うばかりです。


惟光ら私についてきてくれた者たちにも、辛い思いをさせているのではないかと、気がかりでした。


静かな生活の中にも付き合いはあり、地元の名士が訪ねてきました。なかには以前から面識のあった人もいて、懐かしくなりました。


私のことを思ってくれる人は多かったようですが、朱雀の父などは面白くなかったようで、段々に連絡を取りづらくなり、私はますます人恋しさを募らせました。そんな中、私は絵を描いたりして過ごしていました。


寂しい生活の中で、明石に住む人との縁談を薦められるようになりました。どうも熱心なのは母君のほうで、ご本人はあまり乗り気ではないという話でした。


あるとき、義姉が訪ねてきてくれました。朱雀の父の思惑など気にかけない、大胆なところのある人です。夕霧の話など聞かせてくれ、嬉しいとともに会いたい気持ちが募りました。とはいえ、長居もできず、お互いにまた会おうと言って、雨風の強いなか、あわただしく帰っていきました。


義姉の帰ったあと、雨風が一層強くなり、我が身のままならなさがますます惨めに思えてなりませんでした。

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